漢方Q&A

漢方Q&A

ここでは漢方についてのよくあるご質問にお答えします。(2018.12.17)

目次

漢方ですべての病気が治るのか?

Question: 漢方ですべての訴えや症状が治るのか。

Answer: 治る訳がありません。

短所 漢方にも当然治療できない疾患が多数ある。

長所 今の医学が完璧でない時に、昔の知恵を使うのは悪くない。

むかしは、漢方しか知恵がありませんでした。西洋医学がない時代の医療行為です。すべての病気や訴えを漢方で治そうという気概を持って、急性期の病気や慢性期の病気を治すことを試みました。しかし、残念ながらすべての病気を治すことは無理でした。明治になり、そしてわが国にも西洋医学が本格的に輸入され、ある意味そのすばらしさに圧倒されて漢方は不遇の時代となりました。今度は、現代西洋医学が万能でないことに気がつきましょう。そんな時に漢方を使ってみるのです。

ガンを漢方で治してくれ。それは漢方だけで治すことはむしろ滑稽でしょう。西洋医学的治療をしてそして漢方を補完的に使用することは大賛成です。

糖尿病を漢方で治してくれ。これも無理でしょう。糖尿病に伴う症状が幾分軽減することがあるでしょうが、重症糖尿病であればインスリン治療が大切に決まっています。

高血圧を治してくれ。これも漢方単独では期待薄です。でも随伴症状は楽になることがあります。高血圧という現代医学が発達したから定義される病名に振り回されるのはおかしいという指摘もありますが、明らかに血圧が高いときに降圧剤で対処することは当然です。

「なんでも食べたい。でも痩せたい。漢方でお願いします。」これも無理でしょう。漢方は食事の制限や、間食の禁止、適度の運動などをして痩せない人に、女神がほほえむように報いることはありますが、「何でも食べたい、でも痩せたい」というのは論外ですね。

漢方は養生のひとつです。西洋医学的治療をしっかり受けて、適切な日常生活を送るように努力をして、そして漢方が役立つのです。

自分の経験を書き加えます。わたしは桂枝茯苓丸と大柴胡湯を何年も服用しています。体重が減り、ウエストが細くなり、花粉症が治り、イボ痔の手術も行わずに済み、肩凝りもなく、快便、快眠です。しかし、運動によって培われるバランス感覚の向上、ストレッチによる筋肉の柔軟性、有酸素運動による心肺機能の強化、筋トレによる適切な筋力などは、全く漢方薬では改善できないのです。運動を始めて漢方の限界にはっきりと気がつき、漢方は養生のひとつと本当に腑に落ちている今日この頃です。

日本漢方のバイブルは何?

Question: 日本漢方のバイブルである傷寒論はどれぐらい前のもの?

Answer: 約1800年前

短所:古くさい

長所:それほど昔の知恵にて、当然ながら、現代医学的な病名が不要

和漢のバイブルは傷寒論と言われます。狭義の傷寒論は急性疾患を、金匱要略は慢性疾患を扱っており、両方を合わせて広義の傷寒論と呼びます。しかし、これは1800年前の原本ではありません。なぜなら、1800年前には紙が普及していません。そこで、竹を割って、その裏に墨で書いたと言われています。竹簡というそうです。または木の板に漆や墨で記載しました。これを木簡といいます。

その竹簡や木簡を、紙が普及した時代に集めて、そして、きれいな紙に書き写されたものがその後流布しました。ですから、1800年前のオリジナルとは加筆修正、写し違い、紛失文などがある可能性も否定できず、「後人の追加」と後々の解説書にいわれるようなことが起こります。漢方処方に慣れ親しんできたら、是非読んでみることをお勧めします。常に処方選択の役に立つことを念頭に、そんな文章だけを選んで、そして読んでいくと読みやすいかと思っています。すべてを理解しようと思って最初から最後まで読み通すことは、古典の勉強ではないので、わたしは必要ないと思っています。処方選択の知恵をもらうために読みましょう。そして、勿誤薬室方函口訣や類聚方広義などを傷寒論よりも先に読んだ方が、入門者には易しいと思っています。

漢方薬って何?

Question: 漢方薬と民間薬の違いは何?

Answer: 民間薬は生薬が1種類。漢方薬は生薬の足し算

短所:漢方は足し算とバランスの結晶にて、多数の漢方薬を併用するとそれが壊れる可能性がある。

長所:漢方は体全体を治すようにセットアップされているので、体全体が治ることがある。

民間薬は生薬が1種類です。伝統的にこんな生薬をこんな風に摂取すると、こんな訴えに有効なことが多いという生活の知恵です。民間薬も結構有効です(大塚敬節、漢方と民間薬百科)。一方、漢方薬は生薬が通常複数です。民間薬である生薬を長い経験から足していき、そして作用を強め、副作用を減らし、まったく新しい作用を作り出していったのです。実は、生薬が1種類でも漢方に分類されているものが例外的にあります。甘草湯(甘草だけ)、将軍湯(大黄だけ)、独参湯(人参だけ)などです。エキス剤では甘草湯があります。また、ツムラのエキス剤では生薬が2種類よりなるものがもっとも構成生薬数が少なく、芍薬甘草湯(TJ-68)、大黄甘草湯(TJ-84)、桔梗湯(TJ-138)の3種が2種類の生薬から成っています。一方で、最も多いのは防風通聖散(TJ-62)の18種、荊芥連翹湯(TJ-50)や疎経活血湯(TJ-53)は17種類の生薬から成っています。

西洋剤は通常純物です。現代西洋薬学の歴史は1804年に始まったと私は思っています。その理由は、1804年はアヘンの主成分がモルヒネと判明した年だからです。その後の約200年の間に、われわれが臨床で使用している沢山の西洋医学的薬剤が開発されたことがわかります。西洋医学的薬剤のほとんどは純物です。漢方が生薬という不純物の、それも生薬の足し算であることと根本的に異なります。

昔の漢方薬の作り方は?

Question:○○湯、△△散、□□丸とはなんですか

Answer: ○○湯は煎じ薬、△△散は散剤、□□丸は蜂蜜など散剤を固めた丸剤です。

短所:煎じ薬は時間がかかる。携行に不便

長所:煎じ薬はそれぞれの生薬の増量・原料、新しい生薬を加えるなどが簡単

一番頻度が高い漢方薬の製法は、いわゆる煎じ薬です。生薬の組み合わせである漢方薬ですが、それぞれの生薬を約600mlの水に入れて、それを約300mlとなるまで煮詰めて、そして1日2回から3回服用するのです。そういう漢方薬を○○湯と名付けています。また△△散は煎じるのではなく、生薬を砕いて散状にして直接飲みます。□□丸は散状になったものを、蜂蜜を火にかけて固めた錬蜜などで丸状にしたものです。また、「料」という字を加えて、△△散料、○○丸料とは、△△散や□□丸を作る分量を煎じて飲みましょうという命令語です。それぞれの患者さんに合わせて作成可能ですから、生薬の増量や減量、また他の生薬を加えるなどが簡単にできます。便通を調えるために大黄の量を加減することなどが当然のようにできるということです。

現代のエキス剤はとは何?

Question: 漢方エキス剤とはなんでしょう。

Answer: 高級ブレンドインスタントコーヒーと説明しています。

短所:煎じ薬のように微妙なさじ加減ができない。

長所:処方が簡単、保管が簡単、携帯しやすい、品質が一定

高級ブレンドインスタントコーヒーみたいなものと説明しています。始めからブレンドの割合は決まっていますので、自分の好みに従って、酸味のある豆を増そうとか、苦味のある豆を増そうというようなことはできません。微妙なさじ加減ができないことは致し方ないですが、携行が簡単で、品質が一定で、保管が長期間できるなどの利点があります。使用期限は、大建中湯(TJ-100)のエキス剤が製造から3年間、その他のエキス剤が5年間です。結構長期間の保管が可能ですね。
ツムラの五苓散エキスは、実は五苓散料のエキス剤で、桂枝茯苓丸や八味地黄丸は桂枝茯苓丸料や八味地黄丸料のエキス剤です。ウチダ和漢薬の医薬品である八味丸は八味地黄丸料ではなく、昔ながらの八味地黄丸です。

エキス剤の粉末は何?

Question: エキス剤の粉末は何?

Answer: エキス+賦形剤(ふけいざい。固めるための添加剤)です。

多くの製薬メーカーでは賦形剤には乳糖を使用しています。

短所:乳糖不耐症では下痢をする

長所:煎じ薬よりも持ち運びが便利で、簡単に飲める

乳糖不耐症の患者さんには困ります。賦形剤に乳糖を使用していないメーカーのエキス剤を探す方法もありますが、処方数が大幅に減ります。また、乳糖不耐症のくすりであるガランターゼ散50%と一緒に飲む方法もあります。ガランターゼ散の成分はβ-ガラクトシターゼで、ラクトースをグルコースとガラクトースに分解します。乳糖の約10分の1量を同時に内服します。

漢方薬はいつも有効なの?

Question:名医の打率は何割?

Answer: 100%最初の処方があたることばかりではない。

短所:最初から有効な漢方薬に当たらないことがある

長所:次の処方があるために、当たらなければ順次使用していけばよい。

これはよくわかりません。しかし、10割でないことは、過去の症例報告などをみれば明らかです。僕は西洋医学で治らない訴えに漢方が最初にあたる打率は3〜4割と説明しています。ある処方を出して、そして効かない、ある程度効いたなどを参考に処方を変えています。名医でも処方に診断させながら、より適切な処方を探していくのです。

漢方薬は食べ物の延長?

Question: 食卓に上がるものでは何

Answer: 山薬(やまいも)、蜀椒(さんしょ)、甘草、小麦(こむぎ)、大棗(なつめ)、陳皮(温州ミカンの皮)、生姜、冬瓜、キクの花、薄荷…。

短所:現代医薬品と比べて、あまりにも異なる

長所:食物の延長にて安心、安全、養生のひとつである。

夜泣きの特効薬と言われている甘麦大棗湯は字の如く、甘草と小麦、そして大棗の3種類です。まったく食事の延長、いや食事そのものと言っても過言ではないですね。そんな組み合わせで、夜泣きの特効薬になるのですね。

漢方薬はいつ内服するの?

Question:漢方はいつ内服するのでしょうか。

Answer: 添付文章には食前または食間と書いてあります。

短所:内服を忘れやすい

長所:胃潰瘍などが出来ることはない

漢方は足し算の結晶です。西洋薬のほとんどは純物です。足し算と言うことは、あまりに多くを足しすぎると効果が減少または消失することを意味します。漢方が食物の延長で、かつ足し算の結晶とすると、食前や食間という空腹状態で内服することは利にかなっています。ですから、どの漢方薬エキス剤の添付文章をみてもすべてに食前または食間と書いてあるのです。

では、それほど空腹時の内服に拘泥すべきなのでしょうか。わたしはそうは思っていません。自分でも食後に飲むこともあります。空腹時の方がより効果的だと言うことで、食前や食間の内服を忘れたときは、食後の内服で問題ないと説明しています。

また、地黄や当帰、川芎、麻黄、石膏などは空腹時に飲むと胃に障ります。そんなときは敢えて、食後の内服を進めた方が、問題なく内服ができることもあります。臨機応変でいいのではと思っています。

漢方薬は何剤まで併用できるの?

Question: 漢方薬は何剤まで併用できる。

Answer: わかりませんが、1剤または相性のいい2剤が基本

短所:処方が増えると、漢方が効かなくなる可能性が高くなる

長所:多くの病気が少ない処方で治るので医療経済に資する。飲む量も少ない。

漢方薬には沢山の成分が含まれているので、(言葉を換えれば純物ではないので)、どの成分が必須かがいまだに判然としていません。むしろ、複数の成分が有効であると考えた方が腑に落ちます。その理由を葛根湯を例にとって説明しましょう。葛根湯は、7種の生薬から成っています。葛根、麻黄、桂枝、芍薬、甘草、生姜、大棗です。もしもひとつの成分が有効であるなら、その成分を含む生薬だけを飲むという民間薬療法で十分なはずです。その有効成分が葛根の中にあれば、葛根湯ではなくくず湯を飲めばそれで良いはずです。その有効成分が生姜の中にあれば、葛根湯ではなく生姜湯を飲めば済むのです。くず湯や生姜湯ではなくて葛根湯が1800年以上にもわたって生き残っているのは、葛根湯の7つの生薬の配合が大切なのです。

また、桂枝湯は葛根湯から麻黄と葛根を抜いた、5種の生薬からなります。葛根湯はがっちりタイプの風邪薬、桂枝湯は弱々しいタイプの風邪薬ですので、生薬の加減でターゲットとする人が変わってきます。ですから、足し算や分量は大切な要素です。

そうすると、いくつもの漢方薬をどんどんと増やして飲んでいくと効かなくなる可能性があるのです。この可能性を理解しながら飲めば、問題ありません。そして効く漢方と効く漢方を足しても結構効くことも経験します。

大切なことは、処方するに当たって、過去の経験によらない足し算や漢方同志の併用は効かなくなる可能性があるということをわかっているかどうかです。

中止すべき西洋薬剤は?

Question: 漢方を処方したときに中止する必要がある西洋薬は?

Answer: なし

短所:漢方単独で西洋薬を凌駕するものは少ない

長所:西洋薬を中止する必要はないので西洋医学の補完医療には最適

漢方の立ち位置はあくまでも、西洋医学の補完医療です。現代西洋医学で治らない訴えや症状に漢方薬エキス剤を処方します。そして、漢方薬の処方を始めるからと言って、中止すべき西洋剤はありません。あくまでも続行です。むしろ、漢方薬を始めたと同時に西洋薬を中止したのでは、悪化したときに西洋薬を止めたためか、漢方薬が効いていない、または漢方薬の副作用かが判別不能となります。

漢方でアレルギー反応は起きますか?

Question: アレルギーが起こりやすい生薬は

Answer: 桂枝、人参、地黄、ゴマ油

短所:単一ピークではないので、どの成分のアレルギーなのか判断に苦しむ

長所:死亡するようなアレルギーが起こったことがない。

漢方薬は食物の延長です。つまり、食物アレルギーに相当するものはいつでも起こりえます。頻度の高いものは桂枝、人参、地黄と言われていますが、他のものでもアレルギーが生じる可能性があるのです。まず、桂枝、人参、地黄を疑いましょう。わたしはアレルギー症状が起こったときには香蘇散を処方しています。香蘇散には、特に魚のアレルギーに効くと言われ、また桂枝、人参、地黄は含まれていません。つまり、香蘇散でアレルギーが出るようであれば、処方出来る漢方薬はまずないと言うことです。

麻黄で注意すべきことは?

Question: 麻黄で注意すべきことは

Answer: 麻黄にはエフェドリンが入っています。ですから、エフェドリンの副作用が麻黄剤で起こりえるのです。

短所:知らずに処方すると循環器疾患を生じる

長所:エフェドリン単剤よりは安全

麻黄にはエフェドリンが含まれています。血圧を上げる薬です。冠動脈の攣縮も起こります。尿閉(尿が出なくなる)となることもあります。薬効としては、気管支拡張作用があり、交感神経の興奮作用があります。麻黄を含む漢方薬は覚えておく方がいいでしょう。特に「麻」の字を含まない漢方薬は要注意です。「麻」の字がある漢方エキス剤は、麻黄湯、麻杏甘石湯、麻杏薏甘湯、麻黄附子細辛湯、桂麻各半湯です。「麻」の字を含まないが、麻黄を含む漢方薬は葛根湯、葛根湯加川芎辛夷、小青竜湯、越婢加朮湯、薏苡仁湯、防風通聖散、五積散、神秘湯、五虎湯、桂芍知母湯です。是非覚えましょう。

麻黄含有処方による副作用報告(死亡例)は数例あり、葛根湯、小青竜湯、麻黄湯、麻黄附子細辛湯などですが、狭心症を起こして死亡した例はありません。麻黄含有処方による死因は多臓器不全、間質性肺炎などと報告されていますが、関連は明らかではありません。

麻黄にはl-ephedrine, l-N-methylephedrine, d-pseudoephedrine, ephedradineA~Cなどが入っているので、エフェドリン単独よりも副作用がすくないのではと思われている。

甘草で注意すべきことは?

Question: 甘草を含む生薬で注意すべきことは?

Answer: 偽アルドステロン症による浮腫、高血圧、低カリウム血症です。

短所:個人差があるので、誰が起こしやすいかわからない。飲ましてみないと解らない。

長所:徐々に起こるものにて、簡単な注意で防げる

甘草は漢方エキス剤の4分の3に含まれています。一番多く含むものは、1日量として芍薬甘草湯の6グラム、次いで甘麦大棗湯の5グラムです。3グラムは小青竜湯、人参湯、五淋散、芎帰膠艾湯、桂枝人参湯、黄連湯、排膿散及湯、桔梗湯などです。

多くの漢方薬に含まれていますので、甘草を含まない漢方薬を知ることが臨床では薬立ちます。偽アルドステロン症が疑われたときでも使用できるということです。

ちなみに甘草を含まない漢方薬の例

八味地黄丸、六味丸、牛車腎気丸、半夏厚朴湯、大柴胡湯、黄連解毒湯、五苓散、小半夏加茯苓湯、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、真武湯、呉茱萸湯、大黄牡丹皮湯、木防已湯、半夏白朮天麻湯、猪苓湯、猪苓湯合四物湯、四物湯、七物降下湯、温清飲、茯苓飲、茯苓飲合半夏厚朴湯、茵陳五苓散、茵蔯蒿湯、大建中湯、三物黄芩湯、桂枝茯苓丸加薏苡仁、麻子仁丸、麻黄附子細辛湯、大承気湯、梔子柏皮湯、四苓湯、当帰芍薬散加附子、大柴胡湯去大黄などです。

肝機能障害は起こりますか?

Question: 肝機能障害を起こしやすい生薬と処方は

Answer: 黄芩が肝障害に関係が深いと思われています。黄芩を含む漢方薬は 27種類です。一方で肝機能障害を起こしやすい処方はなんといても、防風通聖散です。OTCとしてナイシトールという商品名で販売されており、使用量が多いことにも起因しますが、頻度的には際だっています。

短所:2から3ヶ月毎に採血をした方が安全

長所:肝機能障害を起こす頻度が高いものは限られている。

定期的に採血検査を確認しましょう。まれにまったく採血検査をしていない人がいます。そんな時は、数ヶ月に一度は採血を勧めています。肝機能とカリウム値が大切なのですが、生活習慣病に関する採血なども患者の希望に添って追加しています。

漢方薬の重篤な副作用は?

Question: 小柴胡湯の間質性肺炎での死亡率は

Answer: 小柴胡湯(TJ-9)で死亡例が報告されています。頻度は2万分の1と言われています。

小柴胡湯で30人の因果関係が否定できない死亡報告があり、明らかに関連ありが1人、おそらく関連ありが8人、関連あるかもしれないが21人です。発症率は0.1%未満です。

短所:死亡例が報告されている。

長所:ごく希にて基本的に安心。交通事故死と同じ頻度

小柴胡湯の添付文書には、使用禁忌事項として3つが上げられています。

1. インターフェロン投与中

2.肝硬変・肝がん

3.肝機能障害で血小板が10万以下 です。

間質性肺炎の原因は柴胡を含む漢方薬だとも言われています。柴胡を含む漢方エキス剤は20数種類です。しかし、黄芩が実は原因だとも考えられています。柴胡剤と称するもの、特に漢方名に「柴」の字を含むものには、基本的に柴胡に黄芩が加えられています。一方で、柴胡も黄芩も含まれていない漢方薬でも間質性肺炎を起こしたと疑われているものがあります。間質性肺炎は漢方だけが原因ではないのですが、他の原因が明らかでないときは、漢方薬が原因として疑われる可能性が一番高いのです。エキス剤を使用する立場からは、間質性肺炎はどの漢方薬でも頻度は少ないが起こりうると思っておくことが大切です。空咳には要注意だと思っておくこと大切でしょう。

1990年代に肝炎という病名で小柴胡湯がたくさん投与されました。300億円を売り上げたと言われています。そして、間質性肺炎の死亡例が報告されて、一気の肝炎に対してオートマチックに処方するという方法は激減しました。上記の禁忌事項が追加されたのです。この禁忌事項に当てはまらなくても間質性肺炎は起こりますが、頻度はずっと減ります。柴胡剤はたしかに希な危険がありますが、私自身も私の家族も平気で飲んでいます。よって、患者さんにも普通に処方しています。

小児に対する処方量は?

Question: 子供への処方量は、厳密に大人の1/4〜1/2にしなくてはなりませんか?

Answer: 過度な心配はしなくてもOK

中国の処方量は日本の数倍です。10倍のものもあります。それを考えれば、小児への処方量が説明書より少々多くなってしまっても気にしなくていいでしょう。量で何か起こるのは 麻黄、大黄 附子です。他はたくさん飲んでもOKです。少々の下痢は効いている証拠。漢方では便秘になってしまうことを気にします。それは効いていないときです。麻黄は麻黄湯と葛根湯には含まれているので、熱が下がればもう飲まなくていいです。代わりに、桂枝湯㊺があれば、または柴胡桂枝湯⑩も急性期後の風邪にはいいですよ。補中益気湯㊶や小柴胡湯⑨も選択肢になります。

漢方の妊婦に対する安全性は?

Question: エキス剤を飲んで流産の報告は

Answer: エキス剤で流産したことはなし

短所:純物ではないので、他の原因で流産したときに疑われかねない。

長所:基本的に食べ物の延長にて、食物と同じように考えればいい。

エキス剤で流産の報告例はありません。安全と思っています。ある生薬を高濃度に煎じて飲むと流産の危険があると記載されていますが、もしもそれが確実であれば流産薬として世に出回っているはずです。残念ながら安全に流産させる方法は漢方の知恵でもありませんでした。少なくともエキス剤を知らずに1週間飲んでも、1ヶ月飲んでも流産はしません。

しかし、漢方薬は食品の延長で化学合成品のように純物ではないので、漢方薬の含有成分のすべてが絶対に安全とは言い切れないのです。よって、どのエキス剤の添付文書にも妊婦に対する安全性は不明と書いてあります。漢方エキス剤で流産、早産した報告例は今までのところありませんが、もしも流産や早産が生じたときに漢方エキス剤が疑われるのは当然です。添付文書に記載があるのですから。ですから、飲んで基本的に問題ないのと、何か起こったときに漢方が疑われるのは全く別問題なのです。くれぐれも、妊娠中から漢方エキス剤を始める場合は100%の安全は保証できないと言っておきましょう。しかし、「西洋薬剤を用いるよりは安全だと思うし、自分の家族であれば、漢方薬を飲む」とでもお話しするのがいいと思っています。

医療用漢方薬の費用は?

Question: 最も安いエキス剤と最も高価なエキス剤は何?

Answer: 最も安いエキス剤は:大黄甘草湯、黄耆建中湯一包が約13円

最も高いエキス剤は:柴苓湯一包が約153円

エキス剤の単純薬価平均は1包約40円です。

短所:OTCで十分と言われかねない

長所:安価にて非常に使いやすい。医療経済的にも効果あり。

最も安いエキス剤は1袋約13円です。そして健康保険が効きます。最も高価な柴苓湯でも1袋約150円です。漢方は生薬を煎じて作りますので、結構な費用がかかっています。石油などから合成できる現代医薬品の多くが、製造ラインに載れば、原価が極めて安いこととは対照的です。漢方は生薬の値段に左右されますので、生薬が高騰すれば売れば売るほど赤字ということも起こりえます。

漢方薬の医薬品としての市場は?

Question: 漢方薬の医薬品としての市場は?? 

Answer: 千数百億円 医薬品は7兆円 医用費の数%のみ

短所 まだまだ普及していない

長所 普及する余地は相当ある。

2018年(平成20年)4月現在、18社 148処方761品目が薬価収載されています。薬価収載の生薬数は241種類です。なお、附子末などは別品目としてカウントされています。漢方薬は多くの西洋薬剤に比べて比較的安価ですから、漢方薬の投与で西洋薬剤の使用頻度が減れば、医療経済的にも効果的に働きます。また、漢方は体全体を治すことが建前にて、1剤または相性の良い2剤の投薬でいろいろな症状が軽快することが多いのです。現代西洋薬剤のようにお薬手帳1ページが一杯になるほど多種の漢方薬が一緒に投薬されることはありません。これから益々漢方の市場が広がり、漢方エキス剤が国民の福祉と医療経済に貢献することを願っています。

排便を促す作用がある生薬は?

Question: 排便を促す作用がある生薬の代表は

Answer: なんと言っても大黄と芒硝です。他にもいろいろな生薬に便通改善効果はあります。

短所:大黄や芒硝を生薬が強すぎると腹痛がきて下痢となる。

長所:漢方薬で便秘を治すと他の症状もなおり、漢方薬の効きも良くなる。

大黄を含む漢方薬エキス剤は以下です。

乙字湯、大柴胡湯、大黄牡丹皮湯、潤腸湯、治頭瘡一方、桃核承気湯、防風通聖散、調胃承気湯、大黄甘草湯、治打撲一方、通導散、三黄瀉心湯、麻子仁丸、大承気湯、桂枝加芍薬大黄湯、茵蔯蒿湯

芒硝を含む漢方薬エキス剤は以下です。芒硝を含むものは大黄も含んでいます。

大黄牡丹皮湯、桃核承気湯、防風通聖散、調胃承気湯、通導散、大承気湯

大黄や芒硝を含む漢方薬をそれが飲めないひとに与えると恨まれます。飲めないというのは死んでしまうと言うのではなく、下剤の効果を出すと同時に、腹痛が生じるという意味です。飲める人にとっては気持ちの良いような消化管の蠕動亢進が、飲めないひとには本当に辛い腹痛となるのです。心配なときは、芒硝を含まないでかつ大黄が少ないような下剤から始めましょう。麻子仁丸や潤腸湯がなんと言っても安全です。

また、大黄を含んで一番マイルドな緩下作用をもつ麻子仁丸や潤腸湯でも軽い腹痛が来るときなどは、大黄を含まないで緩下作用をもつ漢方薬を使用します。柴胡が入っているものはどれも軽い緩下作用がありますので、加味逍遙散や小柴胡湯などもお勧めです。また大建中湯も大黄は入っていませんが便が軟らかくなり緩下作用を持ちます。

便秘を漢方薬で治療すると、他の症状がよくなったということを少なからず経験します。是非、各人の体にあった緩下作用を持つ漢方薬を使用して下さい。まず麻子仁丸や潤腸湯から始めれば安心です。快便感が少ないときには、順に大黄の含有量が多い大黄甘草湯や、大黄と芒硝を含む桃核承気湯に変更していきましょう。

ドーピング検査で陽性となる漢方薬は?

Question: ドーピング検査で陽性となる可能性がある漢方薬は?

Answer: なんと言っても麻黄含有製剤です。

短所 麻黄がドーピングで陽性と成ることは間違いない

長所 麻黄の他は必ず陽性となるものはない。

しかし日本ダンススポーツ連盟では、麻黄を含む薬剤のほか、潤腸湯、炙甘草湯、麻子仁丸などの麻子仁を含む薬剤についてもドーピング違反なる可能性があるとしています。各スポーツ連盟に確認することが一番安全です。

麻黄剤は漢方の痛み止めです。ドーピング検査がないような市民レベルの大会に出たいが、または普通にスポーツをしたいが、西洋医学的な鎮痛剤で痛みがとれないときなどは、越婢加朮湯などが著効することがあり、度々喜ばれています。

診療ガイドラインに載っている漢方薬は?

Question: 診療ガイドラインに載ってる漢方薬は?

Answer: 2018年の時点では以下の7種類です。

小青竜湯(TJ-9)(アレルギー性鼻炎)

六君子湯(TJ-43)(機能性ディスペプシア)

桂枝茯苓丸(TJ-25)(更年期障害)

加味逍遥散(TJ-24)(更年期障害)

当帰芍薬散(TJ-23)(更年期障害)

麦門冬湯(TJ-29)(咳感受性の亢進している気管支喘息)

柴朴湯(TJ-96)(気管支喘息・アスピリン喘息)

最新のデータが確認できましたらアップデートします。

短所:ガイドラインに採用されている漢方薬はたったこれしかない

長所:ガイドラインには載っていないが、使用してみれば有効性は体感できる。

ガイドラインに載せるにはある程度有効率が高い必要があります。しかしカンタン・カンポウでは「最初から有効な漢方薬にあたることを期待しない」という逆転の発想をしています。漢方は順次、処方を変更していきながら、トータルで結構な有効打率となるのです。ですから、病名や症状投与で有効打率が高いものはもちろん将来ガイドラインに採用される可能性があるのですが、有効だと臨床医が体感できているものでも、ファーストチョイスの漢方薬エキス剤の有効性が低いとガイドラインに採用されることは少ないと思います。

保険適応外使用に関しては?

Question:患者の訴えが保険適応ではないときはどうするのか。

Answer: 詳細に経過や症状を聞いて、保険適応となるような訴えを探しましょう。

短所:保険者の審査で削られかねない。

長所:それぐらいいろいろな病気や訴えに有効

女神散には基本的に女性の症状しか記載がありません。血の道症、月経不順、産前産後の神経症などです。女神散は別名を安栄湯といわれ合戦時に武士の高まる気分を落ち着かせるために使用したとも言われています。つまり、日常臨床でも男性に使用することがあります。こんなときは、男性血の道症などと保険病名をつけています。また、香蘇散は胃腸虚弱で神経質な人の風邪の初期と書いてあります。香蘇散はとても良い薬で気の巡りもよくなりますし、長期に常用することもあります。こんなときは、慢性風邪症などの病名はどうでしょうか。漢方を知っている保険審査の先生であれば、苦笑いしながら通してくれると思います。

漢方は昭和50年頃に保険適応にするにあたり、良く効く病名を並べたのです。漢方は生薬の足し算で、個々の病気や訴えではなく、体全体を治すようにセットアップされていますので、乱暴な言い方をすれば、すべての症状が治る可能性があります。ですから心の中で保険適応外使用も致し方ないと思いながら、患者さんに訴えを聞いて、保険病名になるべく沿うような病名記載をしてください。

漢方はジェネリックではないのか?

Question: 漢方に特許はないでしょうから、ジェネリックと思いますが。

Answer: 医療行政上はジェネリック扱いではありません。

短所:ジェネリックの比率を高めようと思っていときには困る

長所:他社製品への変更が薬剤師レベルではできない。

漢方は特許制度のない時代の知恵です。ですから西洋薬剤が特許切れとなり、多くの後発品メーカーがジェネリック医薬品を生産しています。漢方もある意味すべてがジェネリック医薬品のように思われます。しかし、漢方はジェネリック扱いではありません。理由の一つは、それぞれのメーカーで微妙に生薬の比率が異なることがあります。ジェネリック扱いではありませんので、葛根湯を処方しようと思ってA社-1と処方せんに記載して、薬局にA社の製品がない場合は、ジェネリックのように薬剤師の先生のレベルで変更ができません。処方医に変更確認の連絡が入りますので、丁寧に対応してあげて下さい。

漢方が健康保険適応から外される可能性は?

Question: 医療用漢方エキス剤が健康保険適応から外される可能性は?

Answer: 医療行政上の問題にて、否定できません。

短所:保険から外されては、多くの国民が漢方の素晴らしさを享受できない。

長所:医療保険から外されても漢方文化が途絶えるわけではない。

まったく解りません。医療行政次第です。2009年の事業仕分けで漢方薬の保険適応からの除外が論点になりました。幸い100万人近くの反対署名などが集まったこともあって、保険適応は継続されています。しかし、今後も保険適応とされるためにはそれぞれの努力が必要と思っています。漢方は臨床試験なしに承認を受けた経過があり、また医療用漢方エキス製剤も昭和55年以後は、製造承認にあたっては臨床試験の成績が必要となっています。そして臨床試験を経て医療用漢方エキス製剤となったものはありません。厚生労働省より再評価指定を受けGCPを遵守して行われた臨床研究は8品目が過去にありますが、今後も同じような臨床試験を要求される可能性もあります。

漢方理論は腑に落ちる部分のみをまず理解しよう

Question: 漢方薬は矛盾が一杯に思えますが何故ですか。

Answer: デジタル感覚の我々からすると、アナログ的な漢方の理論構築が矛盾の宝庫のように見えます。

多くがデジタル的に数字で判断できるわれわれの西洋医学的診療概念に比べれば、あまりにもアナログ感覚です。数字で表せないので、複数の意見や概念があるときに、それが正しいと証拠を並べることも、また他の意見が間違っていると論破することも難しいのです。ですから、いつくもの仮想病理概念や、理論や、考え方が並立します。それを矛盾だと言って攻撃すればいくらでも攻撃可能です。必要なことは今の医学で治らない症状や訴えを治すことです。ですから、治せる可能性がある知恵を拝借すればいいのです。すべてを理解しようとするから腹が立つので、自分が臨床での処方選択に役立つと思うことを選んで身につけ、腑に落ちないことはちょっと横に置いておく、または全く無視しましょう、それがアナログ感覚の漢方の世界を楽しく漂って有益な情報を身につける最良の方法と思っています。

実証・虚証

Question: 実証・虚証は最初はどう理解すればいいのですか?

Answer: 単純に消化機能と考えましょう。

麻黄が飲める人が実証。飲めない人が虚証と理解しましょう。

実証、虚証の定義は漢方の先生の数だけあるといっても過言ではありません。別の言い方をすれば、実証、虚証を多くの漢方医が納得するように定義出ません。西洋医学ではデジタル感覚で、証明できるものを積み上げて論理構成しますから、統一的意見を導きやすいですが、漢方ではある意見が正しいか、間違っているかを論破することが難しいのです。つまりどれもありです。まずわかりやすい定義から入りましょう。それは皆さんが考えれば良いことで、みなさんが腑に落ちる実証、虚証感でいいのです。僕は、実証は消化機能が丈夫なことと定義をしています。多くは筋肉質の度合いと比例していると思われます。特に胃に障ることの多い麻黄が飲めるかで実証、虚証を決めるのが簡単です。麻黄が飲めれば実証。飲めなければ虚証とすると仮想病理概念を実際の行動で理解可能です。

陽証・陰証

Question: 陽症や陰証はどう理解するのですか?

Answer: 基礎代謝と単純に理解しましょう。

陰陽虚実などと呼ばれますが、陰陽は基礎代謝と考えています。子供は基礎代謝が亢進しているので陽、歳を取ると共に陰に向かうと考えましょう。つまり陰陽は寒熱と同じと僕は説明しています。それがわかりやすいからです。処方選択としては、高齢者は陰であるから、温める漢方薬を使用しましょうということです。年寄りの漢方薬は温めるもの。つまり附子を含むものです。では附子を含む漢方薬は麻黄附子細辛湯、真武湯、八味地黄丸、牛車腎気丸です。

こう考えると腑に落ちませんか。

熱証・寒証

Question: 熱証や寒証はどう考えればいいのですか。

Answer: 温めて楽になる状態を寒証、冷やして楽になる状態と熱証と理解すれば、わかりやすいと思います。

温度計のない時代の概念です。デジタル思考で、体温が38度以上が熱証、36度以下が寒証などと定義をしても、昔の知恵を反映できません。たとえば、39度近い発熱時にも温めてほしいことがあることを、多くの人が経験しています。高熱があるにも関わらず、ぶるぶると震え毛布にくるまっていたいという経験はありませんか。これは、高熱ですが、寒証と理解すれば腑に落ちます。

お風呂を例にとっても、入浴して楽になるような腰痛は寒証、入浴して痒みが増すような湿疹は熱証と理解することもできますね。

春夏秋冬で、夏に悪化する病態と熱証、冬に悪化する病状を寒証として考えてもいいです。

みなさんの臨床で、処方のヒントとなるように、熱証、寒証も理解し、利用すればいいと思っています。

六病位

Question: 六病位とはなんですか?

Answer: 漢方の時間経過の概念と考えましょう。大胆にも、すべての病気の経過が同じように進むと考えました。そして慢性病にも応用しました。

急性疾患を対象とした処方方法が並んでいるのが、傷寒論です。一方で慢性疾患に対する処方方法が示されているのが金匱要略です。その傷寒論、約1800年前には出来上がっていたものですが、その中に、病気の経過を、太陽病、少陽病、陽明病、太陰病、少陰病、厥陰病と時間経過に沿って分けています。陽明病は、係留熱と腹満のため、少陽病と陽明病の順番が前後することがありますが、時間経過をしっかりと観察したのです。今のように、現代医学的病名を仲介できませんので、乱暴ですが、すべての病気が、だいたい同じような経過を辿ると理解しました。その知恵が、漢方的に病期の考え方です。

処方に結び付かなければ意味はありません。太陽病は急性期の病気で、麻黄剤などで発汗、まれには尿量の増加、排便などによって対処したのです。少陽病期は、急性期を過ぎた段階で、柴胡剤などで中和しました。そして陽明病から陰病に移っていきます。

表証・裏証

Question: 表証・裏証とはなんですか?

Answer: まず簡単に表は体表、裏は消化管と理解しましょう。

昔は病邪が表面から進入し、そして消化管に忍び込んでいくと考えました。表はある意味太陽病です。麻黄剤などで対処します。裏は消化管ですので、下痢をさせるか吐かせるかを考えました。漢方エキス剤に吐下作用があるものはありませんが、下す作用のあるものは結構あります。

表でもなく、裏でもないときは、中和するしかないのです。つまり少陽病期は半表半裏とも言われ、柴胡剤などで中和して、病気を治そうとしたのです。

すべて、処方方法と関連させながら、今の立場からできるかぎり理解しやすいようにして、一歩一歩進んでいくとわかりやすいかと思います。

気・血・水

Question: 気・血・水とはなんですか。

Answer: 将来的に、皆さんが自分なりの気血水の定義や概念や感覚を持つことは大切ですが、最初から気血水そのものにこだわる必要はありません。むしろ定義をしないのです。

では、気血水は不要か。不要ではないのです。現代医学的治療で治らない症状や訴えを出来る限り軽くしよう、治そうというときにこの気血水理論は役に立ちます。役に立つのに、なぜ気血水の定義を最初からしないかと言うと、気血水そのものの定義から入ると、なんとなく胡散臭さを感じる人が少なくないからです。ではどうやって気血水の定義をしないで、かつ気血水理論を現代日常診療に取り入れるのでしょうか。

それは、気血水の定義をまずするのではなく、気血水の病態を処方から理解するのです。多くの本で気血水の病態は6種類です。「気虚」「気逆」「気うつ」「血虚」「瘀血」「水毒」です。つまりこの6つをまず理解し、そして処方選択に有効活用し、将来的に皆さんの気血水感を持てばいいと思っています。

気虚

Question: 気虚はどう理解するのですか?

Answer: 「気力がない」ような状態で、補中益気湯が効く状態と理解します。

いろいろと異論があり、また他の考えも当然あります。まずは、カンタン・カンポウの立場から、つまり今の医学で困っている人を漢方エキス剤で治そうという立場からは、この考え方がわかりやすいと思います。仮想病理概念から仮想病理概念を誘導するのではなく、漢方処方と、みなさんが日常臨床で困っている状態を、結びつける知恵に置き換えるのです。

「気力がない」人は沢山います。「軍隊にでも入れば、ピリッとしてよくなるよな」なんて陰で言われるような人も多いでしょう。そんな、むしろ現代社会だからこそ、疲れ果てて、気力がでない状態に補中益気湯が有効なことがあるのです。そんな状態をまず気虚と定義をすれば、処方選択にもつながり、かつ今の医学で治らないひとが治ることがあります。

気逆

Question: 気逆はどう理解するのですか?

Answer: 日常用語で「ヒステリーのようだ」と言われるような状態で桂枝湯類や苓桂朮甘湯が効く状態と理解しましょう。

頭にカーと気が上る、こんなことを自分自身でも、また患者さんでも経験したことはあると思います。そんな正確な医学用語のヒステリーではなく、日常会話のヒステリーのような状態に、桂枝湯類が効くことがあるのです。こう考えると、今の医学で治らないような状態のひとつが、漢方処方と結びつき、そして症状が治る、または楽になることがあります。日常臨床に役立つということです。

気うつ

Question: 気うつはどう理解するのですか?

Answer: 「気の巡りが悪い」という言葉は、漢方用語ではなく日常的会話として理解可能ではないでしょうか。

こんな状態とのきに半夏厚朴湯や香蘇散が有効なことがあります。気が晴れない、気持ちが沈む、くよくよ考える、いろんな表現を患者さんはしますし、医師の方もいろいろな感性でそれを受け止めます。みなさんなりの気うつを形作り、そして半夏厚朴湯や香蘇散を処方して、そんな状態が良くなれば、あれが気うつだったのかと腑に落ちればいいのです。そうすると、処方と今の医学で困っている状態が結びつくことになります。仮想病理概念から仮想病理概念を誘導するのではなく、今困っている人を治すために、昔の知恵をヒントに、有効な漢方エキス剤の処方選択に結びつけばいいのです。

血虚

Question: では血虚はどう理解するのですか?

Answer: 「栄養失調もどき」で十全大補湯が効く状態

血が足りないから、現代医学で言う貧血か。たしかにそれも含まれていますが、もっと大きな概念ではと思っています。髪の毛が抜け、肌のつやが悪く、カサカサして、栄養失調のようで、気力、体力もないなんてときに、血虚と考えます。そして十全大補湯のような四物湯を含む漢方薬が有効な状態を血虚とします。そうすると、漢方処方と症状が結びつきます。四物湯を含む漢方薬は、十全大補湯のほか、芎帰膠艾湯、当帰飲子、などがあります。

瘀血(おけつ)

Question: 瘀血はどう理解すればいいのですか?

Answer: 症状から理解するのではなく、駆瘀血剤が効く状態と思い込みましょう。

上記のように理解してしまいます。瘀血の状態として、目の周囲のクマ、舌下静脈の怒張、臍周囲の圧痛、痔、静脈瘤、など「古い血の滞り」のような状態が列挙されます。それを覚えるよりも、まず駆瘀血剤で良くなる状態が瘀血だと割り切ることが理解を助けると思っています。駆瘀血剤は補剤と並んでカンポウらしさを表現している漢方薬で、かつ頻用されます。

水毒

Question: 水毒をどう理解するのですか?

Answer: 水毒とは五苓散などの利水剤が効く状態と単純化します。

上記のように理解します。漢方が効かないときに、昔は「怪病は水の変」などと言っていました。おかしな、良く治らない病態は、水毒の可能性があるということです。水毒を治す薬が五苓散を筆頭とする利水剤です。そうすれば、五苓散が治せる病気に、乱暴な言い方をすれば、すべての訴えがあっても不思議ではないのです。こんな風に考えると、こんな病気や訴えまで本当に治るのかと思う前に、こんな訴えまで治ることがあるんだなと理解すればたやすいと思います。

木火土金水

Question: 木火土金水とは何ですか?

Answer: 「もくかどこんすい」と読みます。五行理論のひとつで、中国の漢方では大切な理論です。

木火土金水も沢山の経験から導き出された処方選択のひとつの方法です。森羅万象のすべてを5つに分類した五行理論のひとつで、五臓などとも呼ばれます。五臓は木、火、土、金、水を、肝、心、脾、肺、腎に当てはめています。個々で出現する肝、心、脾、肺、腎は現代解剖学のものとは異なります。仮想的病理概念から仮想的病理概念を結びつけ一生懸命、症状や訴えと処方を結びつけたものです。

付録【Q&A】

薬剤に関する情報などは基本的にツムラのものを使用しています。漢方医薬品市場の8割以上を占めていますので、ツムラのデータが多くを反映すると考えるからです。一方で、すべての漢方エキス剤を販売している製薬会社の資料を調べることには限界があり、また整合性に欠けて解りにくくなるとこもあるためツムラの情報を基礎に並べました。

安全に処方するコツはありますか

漢方薬エキス剤を一服飲んで死亡することはありません。漢方薬エキス剤を妊娠したとは知らずに1ヶ月以上飲んでも流産した報告はありません。今の医学で困っている患者さんに漢方薬を処方するときには、「何かおかしなことがあったら漢方薬を止めて下さいね」と言い添えておけばいいのです。甘草の過量摂取による偽アルドステロン症も徐々に起こるのです。足がむくめば止めればいいのです。麻黄剤や附子剤の消化器症状や循環器症状もムカムカ、ドキドキすれば止めればいいのです。間質性肺炎も空咳に注意すれば安心です。漢方薬を安全に処方するコツは「何か起これば止めて下さいね」と言うことです。不快なことが起こっても敢えて続行するから何かが起こります。

お話のコツはありますか

僕の漢方薬の立ち位置は今の医学で治らない症状や訴えを改善しようというものです。今の医学で治らない症状や訴えが、漢方薬ですっきり治るということも少なからず経験します。それはすばらしいことですが、長年治らなかったものが、漢方で、それも短時間に、すっきり治るということは多くはありません。つまり、患者さんと医師がお互いに目指す目標をまず「治る」ということから「改善する」ということに目標を下げておいた方がお互いに楽です。つまり患者さんに「漢方エキス剤を試してみたいが、どれぐらいの人が治るのか」と聞かれたら、「治る」と言い切るのではなく、「4人に3人ぐらいは良くなるよ」と答えることにしています。それが基本的なお話のコツです。

再診はいつ頃

風邪、ぎっくり腰、尿管結石、下痢などの急性期疾患や症状も漢方エキス剤で良くなることが多々あります。そんな時は連日診察に来てもらってもいいですし、数日後でもよいでしょう。しかし、モダン・カンポウの立ち位置は、今の医学で治らない症状や訴えで困っている人を漢方エキス剤で治すことです。ですから、2週間から4週間で患者さんが都合の良いように再診に来てもらえばいいと思っています。しっかりした人であれば4週間以上処方しても問題ありません。

漢方薬続行の判断は

4週間後の診察で少しでも良くなっていれば、その漢方エキス剤は続行です。だって、いままでの西洋医学的治療では全く治らなかったのですから。また、主症状がほとんど良くなっていなくても、他の体の調子が改善していれば続行です。漢方は体全体を治していきますので、体全体が良くなっているということは良い兆しなのです。悪化するときはもちろん中止です。また、3食毎に一生懸命飲んでいるが、「まったく飲んでいる気がしない」と訴えるときは、やはり中止です。他のエキス剤を試すことが多いです。

子供の投与量は

わたしの患者さんへのお話の仕方は、「大人は漢方エキス剤を1包、小学生は1/2包、幼稚園生は1/3包、乳児は1/4包ぐらい」です。この「ぐらい」というのは、計量器で正確に1/2などにする必要もありませんし、また実際にそんなことはできませんから、目分量でだいたいで結構ですという意味です。漢方は足し算とバランスの結晶にて、総量は実はあまり影響しません。麻黄や大黄、芒硝などが増量されるとその生薬による不快な症状がでることがありますが、漢方薬自体の全体の効果はだいたいの分量でいいと思っています。子供への飲ませ方ですが、漢方エキス剤を少量の水で練ったものを口になすりつけてから、水を飲ませるという方法もありますが、ゼリーなどと混ぜる方法が簡単で喜ばれると思っています。最近は薬局に子供の内服用の便利なゼリーがあります。

大人での投与量は

漢方エキス剤の添付文書にあるように1日3回を基本にしています。しかし、1日2回でも結構効きます。基本的には急性期の症状には増量した方が効果的なことがあり、慢性期の症状で、かつ体が弱々しい方などには、むしろ減量した方が効果があることも経験します。漢方には西洋医学で必須である用量依存性がないことも経験します。

漢方エキス剤の飲み方は

多くの患者さんは漢方エキス顆粒のまま飲むことが多いと思います。患者さんには出来ればお湯に溶かして(温服といいます)、または電子レンジでチンしてから少し冷まして飲むように勧めています。電子レンジの方がきれいに溶解します。つわり時の小半夏加茯苓湯や鼻出血時の黄連解毒湯や三黄瀉心湯は冷服してもらっています。一方で慢性の下痢の時に真武湯などは温服よりもアツアツとして飲んでもらっています。これを熱服と呼びます。

反対の効果に効くことも

漢方は体全体を治すようにセットアップされています。乱暴な言い方をすればどんな症状も治ります。慢性の下痢に有効な真武湯や人参湯で、便秘が軽快するとこもあります。低血圧症状を改善することが多い半夏白朮天麻湯で高血圧がある程度改善することも経験します。病名や症状投与で漢方薬エキス剤を処方して有効性を実感したら、是非反対の作用にも有効なことがあると記憶に留めて臨床を行ってみて下さい。

軽快後の漢方薬の投与期間は

患者さんが飲みたければ続行です。患者さんが止めてみたいと言えば中止です。漢方は止めても症状がその後現れないこともしばしば経験します。また、症状が現れれば再開すればいいだけですので。結局本人次第ですね。お任せされれば、慢性の病気と時は症状が軽快してから1から3ヶ月は飲んでもらって中止です。

漢方薬をずっと飲み続けてもいいのか

漢方薬は食物の延長にて、なにかちょっとした不調があれば、長く飲んでいいとわたしは思っています。実際に自分でも漢方薬を連日飲んでいますし、患者さんが希望すれば、症状や訴えに従って処方を継続しています。これが安全かどうかは明らかなデータがありません。漢方薬は昔は長期投与をするとは思っていません。漢方薬自体も貴重でしたから、短期の投与で終了するとこが昔は前提です。しかし、現代医療が進歩しても、なんとなく調子が悪いということはある程度の年齢を超えると多くの方が、ある意味全員がそう感じています。ですから、その訴えに従って処方しています。現代西洋医学の薬でも、つまり高血圧、糖尿病、脂質代謝異常の薬なども世代間を越えての安全性は実は全く解っていないのです。そんな思いは持っていますが、漢方屋エキス剤を飲んでいると体調が良いと言うことを頻回に経験していますので長期的に処方しているのです。サプリメントを複数のんでいるようであれば、少なくとも漢方薬を試した方がいいと思っています。

顆粒が飲めないときは

お湯に溶かせば飲めますね。お湯に溶かしても飲めない、顆粒も飲めない。困りましたね。好きな方法で飲みなさい。オブラートでも、ゼリーに混ぜても。「顆粒なら飲めない・・・。」その程度の症状であれば、放っておけばいいでしょ。本当に困っているのであれば、飲みなさいと思うこともあります

麻黄のムカムカはいつおこる

麻黄は1包でもドキドキ、ムカムカする人がいます。また、しばらく飲んでから上記の症状が出る人もいます。しばらくしてから、食欲不振となる人もいます。またその食欲不振がしばらく続くこともあります。

お酒と一緒に飲んでいいか

酒、ビール、ワイン、ウイスキーのアルコール飲料で医薬品を服用すると、一般にその成分の吸収の度合いが水で服用した場合と異なってくるので避けるべきとされます。実際に患者さんにはそのように説明しています。しかし八味地黄丸などは古典にはお酒で薄めた液で服用(酒服)するように書かれているものもあります。

西洋薬と漢方薬を併用する場合、相互作用に注意を要するものは

まず、医療用漢方エキス製剤の医薬品添付文書において、西洋薬との併用で注意すべき製剤が設定・明記されているのは、麻黄製剤と甘草製剤です。また、これとは別に副作用症例に基づくものとして、小柴胡湯(TJ-9)のインターフェロン製剤投与中の患者への「禁忌」があります。

甘草含有漢方製剤の注意

甘草は強力ミノファーゲンなどのグリチルリチン製剤との併用は注意がいります。ループ利尿剤やチアジド系利尿剤も併用注意が添付文書には記載されています。

麻黄含有漢方製剤の注意

麻黄はエフェドリン類含有製剤、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤、甲状腺製剤、カテコールアミン製剤、キサンチンン系製剤との併用注意が添付文書には記載されています。

小柴胡湯の禁忌

小柴胡湯はインターフェロン製剤との併用は禁忌と記載されています。

石膏含有製剤の注意

石膏含有製剤はテトラサイクリン系の薬剤を同時に服用した場合は、テトラサイクリン系薬剤の吸収が抑制される可能性があると言われています。

甘草含有製剤による偽アルドステロン症が起こりやすい状態は

甘草による低カリウム血症、高血圧、浮腫などの偽アルドステロン症の発現頻度は、甘草の摂取過多、長期連用、高齢者、女性で高くなると言われています。しかし、個人差があり、甘草をいくら飲んでもまったく偽アルドステロン症が起こらない人もいます。

間質性肺炎の注意点

漢方製剤における間質性肺炎の発症機序についてははっきりしていませんが、アレルギーにより発現するとも考えられています。そうであれば、全ての薬剤で発生する可能性があります。しかし特に注意が必要な人は以下と思われています。
(1)高齢
(2)既存の肺疾患(特に肺線維症)
(3)喫煙
(4)酸素投与
(5)肺への放射線治療
(6)抗腫瘍薬の多剤併用法
(7)肝障害

漢方薬で治療中、患者が予想外の発熱、息切れ・呼吸困難、乾性咳などを訴えた場合は間質性肺炎を疑い、専門医に相談しましょう。

黄芩のみが間質性肺炎の原因か

黄芩が間質肺炎の原因とも言われています。黄芩の可能性が高いことは共通認識です。しかし、漢方製剤による間質性肺炎が黄芩のみによるものとの特定はなされていません。実際に黄芩を含まない小青竜湯、防已黄耆湯、麦門冬湯、補中益気湯、牛車腎気丸でも間質性肺炎の報告があります。

麻黄剤は緑内障に禁忌なの?

エフェドリン塩酸塩の添付文書には緑内障の患者は慎重投与となっています。しかし、マオウ含有製剤における添付文書の注意事項に緑内障の記載がありません。それは、緑内障が麻黄製剤にて悪化したとの報告が今までないからです。麻黄剤には当然エフェドリン以外の成分も含有されていますので、エフェドリン単剤よりも麻黄剤の方が安心ということとも考えられます。

漢方薬で検査値が異常になることは?

生薬のひとつである遠志で1.5-アンヒドログリシトール(1.5-AG)上昇が報告されています。1.5-AGは糖尿病を診断するひとつの採血マーカーです。遠志を含む漢方エキス製剤は加味帰脾湯、帰脾湯、人参養栄湯です。遠志を含む漢方薬を飲んでいると糖尿病がない人でも1.5-AGが低めにでることがあるということです。

漢方薬エキス剤のカロリーは?

賦形剤で使用している乳糖のカロリーは実は約3.8kcal/gです。乳糖単独では4kcal/gのはずですが、タンパク質などが牛乳から精製するときに混入しているということです。粉末飴は水飴(3.3kcal/g)から水分を除いたものとするとそのカロリーはおよそ4kcal/gとなります。つまり粉末飴を含むエキス剤を含めて、エキス製剤のカロリーは約4kcal/gとの理解で十分です。

ナトリウム、カリウム量は?

Na含有量

無水芒硝はNaSOであり、Naを含むため注意が必要です。以下に芒硝含有エキス製剤剤中のNaの一日換算量を示します。大黄牡丹皮湯:301.5mg/日、桃核承気湯:215.3mg/日、防風通聖散:102.8mg/日、調胃承気湯:105.0mg/日、通導散:259.5mg/日、大承気湯:284.3mg/日

K含有量

透析患者のカリウム制限は1.5g/日以下と言われています。含量を特に注意する漢方エキス剤を上げます。小青竜湯:87.3mg/日、防風通聖散:89.3mg/日、芎帰膠艾湯:115.2mg/日、大防風湯:136.5mg/日、通導散:95.3mg/日

漢方薬とワルファリンの相互作用は?

漢方薬や生薬とワルファリンの相互作用に関する報告は症例報告で散見されます。しかし系統だった臨床研究報告はありません。ワルファリン併用時には相互作用が希におこることがあると思って投薬したほうが安心です。ワルファリンが効き過ぎたり、効かなかったりするときは、漢方エキス製剤よりも、知らずに食べた納豆や内容のよくわからないサプリメント、クロレラなどのほうが頻度的には遙かに多いと感じています。

なぜ乳糖でもアレルギーが起きるのですか?

乳糖は牛乳から精製して作られますので、精製したものでもタンパク質が極微量残存することが考えられます。この極微量に含まれるタンパク質が牛乳アレルギーを有する患者にはアレルゲンとなる可能性が否定できないためです。純粋な乳糖であればアレルギーは起こらないと思われます。

煎じ薬とエキス剤はどちらが有効なのか

エキス剤は高級ブレンドインスタントコーヒーと説明しています。どのパッケージも高級品質なのです。煎じ薬の品質は様々です。ウチダ和漢薬などの生薬を主に扱っているメーカーに行けば、同じ生薬でも超高級品から、普通のものまで見せてくれます。値段もそれなりです。また、普通品といっても、そのなかには、本当に普通程度の生薬もあれば、実はレベルの低いものもあります。高級マグロや高級牛でも、すべてが美味しいとは限りませんね。煎じ薬は品質だけでもとても奥が深いのです。生薬を見極める技量がないとダメですね。ですから、素晴らしい煎じ薬は素晴らしいのです。カンタン・カンポウでは、品質がすべて保証されている漢方エキス剤を高級インスタントコーヒーと理解して使用するのです。

学生教育は

2001年に文部省(現文部科学省)が医学部のコア・カリキュラムに初めて「和漢薬を解説できる」という項目を加えました。全国には80の大学医学部があり、以降漢方の教育が徐々に普及しています。2010年のダイヤモンド社のアンケート調査によると、67大学(84%)から回答を得て、必修で8時間以上の講義をしている大学が35校、必修で8時間未満が25校、選択授業のみが2校、漢方としての授業がない大学は5校でした。将来、医師国家試験に漢方の処方に関する問題も出題される可能性もあります。過去にも医史学や副作用に関して漢方関係の問題は既に出題されています。

中国での漢方エキス剤の普及は

中国は生薬の分量を各医師が加減することが多く、またその分量も秘密にされています。つまり、何を飲んでいるか患者には解らないことが多いそうです。よって、エキス剤は流行りません。現在の中国では偽物が氾濫しています。コピー天国です。高額な漢方医で処方された漢方薬(きざんだ生薬が混ざっています)を、分析して、その分量を提示する商売があるそうです。そして、安価な薬局で同じ処方をもらおうとの作戦だそうです。また、中国でも韓国でも、西洋医と漢方医は全く別の免許です。日本だけが、西洋医学の医師が漢方薬の処方もできます。むしろ、医師免許がなければ漢方薬は処方出来ません。

漢方と言われるようになったのは

西洋医学が登場する以前は、漢方しか医療はなかったのですから、漢方と敢えて呼ぶ必要はありませんでした。江戸時代に西洋の医学が長崎に伝わり、それと区別するために従来の日本の医療を漢方と呼び、西洋からのものを蘭方と呼んだのです。漢という字は中国を意味しますが、漢字の漢と同じようなイメージですね。日本の漢方と中国漢方は結構違います。日本の医療制度だけが、西洋医が漢方薬を処方出来ます。中国も韓国も伝統医学と西洋医学の医療免許は別です。カンタン・カンポウが展開できるのも日本ならではとなります。また江戸時代に日本漢方はとくに中国漢方から離れていきました。腹診の重要性に重きを置き、そして傷寒論のすばらしさに戻る風潮が生じました。

同じ処方名でも日本と中国で生薬量が異なるのはなぜか?

いろいろな理由がありますが、基本的に日本の量は中国の量よりも相当少ないのです。

理由① 生薬の違い

まず、中国では生薬を日本よりも大きく裁断しています。また、修治といって生薬の副作用を減らす伝統的な加工処理が行われており、それに付随して主作用も少なくなるので日本に比べて量が増えるとも言われています。品質に関しても、日本での生薬は上質のものだけが出回っていますが、中国では日本より品質の劣ったものも多く、そのため量が増えるとも思われています。

理由② 水質の違い

中国の水の大部分はミネラルを多く含んだ硬水で、日本は軟水です。硬水は軟水と比べて抽出率が低いため、用量が多くると考えられています。

理由③ 風土や体質の違い

中国では気候や風土が日本のように穏やかではない場所が多いのです。また、中国では香辛料を多用するためいろいろな香辛料に耐性が出来ている可能性があると言われています。

理由④ 日中伝統医学の相違

日本では処方をセットとして考えて運用している結果、処方毎に少量の薬量を使用しています。中国では生薬個々の効能により処方を足していくので、分量や生薬数が増える傾向にあるそうです。

医療用漢方エキス剤は通販では買えないの?

通信販売で合法的に購入可能かはグレーゾーンです。医療用漢方エキス剤は実は「処方せん医薬品以外の医薬品」です。こんな薬もと思うものまで、実は「処方せん医薬品以外の医薬品」です。例えば抗血小板剤の多くが「処方せん医薬品以外の医薬品」です。そして、医薬品は処方せん外医薬品も含めて対面販売が義務付けられています。よって、通信販売では対面販売は当然できないので、ルール違反となりかねません。この本の執筆時点ではグレーゾーンで、「処方せん医薬品以外の医薬品」がネットでも購入できる状態です。

参考までに、法律の規定はないものの、厚生労働省通知にて、

「原則として、処方せん医薬品以外の医療用医薬品についても、処方せん医薬品と同様に、医療用医薬品として医師、薬剤師などによって使用されることを目的として供給されるものであり、薬局においては、処方せんに基づく薬剤の交付が原則であるが、一般医薬品の販売による対応を考慮したにもかかわらず、やむを得ず販売を行わざるを得ない場合などにおいては、必要な受診勧奨を行ったうえで次に掲げる事項を尊守すること」とあります。

  • 数量の限定・・・販売を行わざるを得ない必要最小限の数量に限定すること。
  • 調剤室での保管・分割・・・調剤室又は備蓄倉庫にて保管されること。また、販売は薬剤師自らにより、調剤室において必要最小限の数量を分割すること
  • 販売記録の作成・・・販売時において、販売品目、販売日、販売数量ならびに患者の氏名及び連絡先を記録すること
  • 薬歴管理の実施・・・患者の薬歴管理を実施すること
  • 薬局における薬剤師の対面販売・・・販売は、薬局において薬剤師が対面により販売すること
  • その他として、広告の禁止、服薬指導の実施、添付文書の添付

漢方製剤はなぜ臨床試験なしで承認を受けたのか

漢方方剤を構成する「生薬」は、1960年から既に薬価収載され、次いで、1963年の薬価基準収載医薬品の追補改訂に際して、厚生省から「調剤容易な配合剤は薬価基準に収載しないが、医療機関でこの種の配合剤を使用した場合には、既収載の単味製剤の合算により請求できるものとする」といった告示が出されました。つまり、「生薬」の組み合わせで漢方方剤を作り、これを保険請求することは法的にも十分根拠のある事でした。そして、この湯剤との同等性の品質を確保した製剤をつくることは、湯剤と同等の有効性及び安全性を有しているものとみなされました。しかし、医療用漢方エキス製剤も薬審第804号通知により昭和55年以後は、製造承認にあたっては「臨床試験」の成績が必要となり、現在に至っています。

漢方エキス剤が煎じ薬と同等性があるとは

「厚生省薬務局薬審二第120号通知」に記載があります。これは医療用漢方製剤の品質確保の観点から昭和60年5月31日付にて通知されたものです。その申請基準の要点をまとめると以下のようになります。

  1. 原料の生薬の品質を精査し、標準的と考えられる生薬を用い、外観および理化学試験を行うこと。
    2)標準湯剤の処方は古典に従い設定すること。
    3)漢方エキス製剤と湯剤との同等性を確保するため指標となる成分(指標成分)を、異なる生薬より2成分以上選定し、指標成分の定量を行うこと。
    4)可能なものについては、薬理作用を直接検定できる生物学的検討も行う事が望ましい。
    5)一日量分の生薬から採れるエキスおよびそのエキス製剤中の指標成分含量は、標準湯剤のそれに比して原則として70%以上であれば認めるものであるが、標準湯剤に近づけること。

メーカーによって効能効果が異なるのはなぜ

漢方製剤の承認・許可申請の効能・効果については、『医薬品製造販売指針』に「『一般用漢方処方の手引き』等を参考とすること。」と記載されています。しかし『一般用漢方処方の手引き』の初版発行は昭和50年で、これ以前の承認・許可申請においては、各社個々の申請であったので効能・効果がそれぞれ異なったのです。漢方薬は乱暴な言い方をすれば、森全体を治せる可能性があります。つまり、いろいろな症状に有効なのです。頻度の高いものを羅列する訳ですから、微妙な違いが生じることは、統一規則がない時には当然のことです。

メーカーで生薬の配合比率が異なることがあるのはなぜ

承認基準である『一般用漢方処方の手引き』に基づき承認申請していますが、『一般用漢方処方の手引き』にある参考文献により生薬量が異なります。また、一部の生薬では幅をもって記載されているので、生薬量が異なることがあります。例えば、一般用漢方処方の手引きの大黄量は乙字湯では0~3.0グラム、大柴胡湯は1.0~2.0グラム、柴胡加竜骨牡蛎湯は0~1.0グラムと幅があります。ですから、漢方薬に特許は当然に存在しないのですが、製薬メーカーにより配合比率が異なることがあるため、ジェネリックとしては扱われません。薬剤師の先生のレベルで他社の同じ名前の漢方薬に変更はできないのです。そのときには医師に変更了承の電話が入ります。

一般用漢方処方の手引きとは

昭和50年に、漢方製剤についての厚生省の承認審査内規が明らかにされ、その際に一般用医薬品として承認される漢方210処方について、その成分、用量、効果効能、など具体的な基準が公表されました。この趣旨の徹底を図りつつ、安全なる治療の推進を図るために、厚生省の監修を得て出版されたものが「一般用漢方製剤の手引き」です。昭和50年以降に認可された医療用漢方薬の生薬量や適応症状は「一般用漢方製剤の手引き」に準拠しています。現在健康保険適応となっているエキス剤(本書ステップ2に掲載)の他、以下のような漢方薬が含まれます。しかし、昭和55年以後は医療用漢方エキス製剤の製造承認にあたっては「臨床試験」の成績が必要となっています。よって、臨床試験が必要とされるのであれば、以下の製剤に縛られる必要はないと思われます。

胃風湯(いふうとう)、温胆湯(うんたんとう)、延年半夏湯(えいねんはんげとう)、応鐘散(おうしょうさん)、黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう)、化食養脾湯(かしょくようひとう)、藿香正気散(かっこうしょうきさん)、葛根黄連黄芩湯(かっこんおうれんおうごんとう)、葛根紅花湯(かっこんこうかとう)、加味温胆湯(かみうんたんとう)、加味解毒湯(かみげどくとう)、加味逍遙散合四物湯(かみしょうようさんごうしもつとう)、加味平胃散(かみへいいさん)、乾姜人参半夏丸(かんきょうにんじんはんげがん)、甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)、帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう)、響声破笛丸(きょうせいはてきがん)、杏蘇散(きょうそさん)、苦参湯(くじんとう)、駆風解毒散(湯)(くふうげどくさん(とう))、鶏肝丸(けいかんがん)、桂枝加芍薬生姜人参湯(けいしかしゃくやくしょうきょうにんじんとう)、荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)、鶏鳴散加茯苓(けいめいさんかぶくりょう)、堅中湯(けんちゅうとう)、甲字湯(こうじとう)、香砂平胃散(こうしゃへいいさん)、香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)、香砂養胃湯(こうしゃよういとう)、厚朴生姜半夏人参甘草湯(こうぼくしょうきょうはんげにんじんかんぞうとう)、牛膝散(ごしつさん)、五物解毒散(ごもつげどくさん)、柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう)、左突膏(さとつこう)、滋血潤腸湯(じけつじゅんちょうとう)、柿蔕湯(していとう)、鷓鴣菜湯(しゃこさいとう)、蛇床子湯(じゃしょうしとう)、蒸眼一方(じょうがんいっぽう)、生姜瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)、小承気湯(しょうじょうきとう)、小青竜湯加石膏(しょうせいりゅうとうかせっこう)、小青竜湯合麻杏甘石湯(しょうせいりゅうとうごうまきょうかんせきとう)、椒梅湯(しょうばいとう)、逍遙散(しょうようさん)、秦艽?姜活湯(じんぎょうきょうかつとう)、秦艽?防風湯(じんぎょうぼうふうとう)、参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)、清肌安蛔湯(せいきあんかいとう)、清湿化痰湯(せいしつけたんとう)、清上蠲痛湯(せいじょうけんつうとう)、折衝飲(せっしょういん)、千金鶏鳴散(せんきんけいめいさん)、銭氏白朮散(ぜんしびゃくじゅつさん)、蘇子降気湯(そしこうきとう)、大半夏湯(だいはんげとう)、中黄膏(ちゅうおうこう)、丁香柿蔕湯(ちょうこうしていとう)、当帰散(とうきさん)、当帰四逆湯(とうきしぎゃくとう)、当帰貝母苦参丸料(とうきばいもくじんがんりょう)、独活葛根湯(どっかつかっこんとう)、独活湯(どっかつとう)、女神湯?(にょしんとう)、排膿散?(はいのうさん)、排膿湯?(はいのうとう)、八味逍遙散(はちみしょうようさん)、白虎湯(びゃっことう)、白虎加桂枝湯(びゃっこかけいしとう)、不換金正気散(ふかんきんしょうきさん)、茯苓散(ぶくりょうさん)、茯苓沢瀉湯(ぶくりょうたくしゃとう)、伏竜肝湯(ぶくりゅうかんとう)、分消湯(ぶんしょうとう)、防已茯苓湯(ぼういぶくりょうとう)、補気建中湯(ほきけんちゅうとう)、補肺湯(ほはいとう)、楊柏散(ようはくさん)、苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう)、

錠剤やカプセルなどの他の剤型をつくるためには

医療用漢方製剤のエキス剤の製造承認を受けているメーカーが医療用漢方製剤の錠剤やカプセルの承認を取得するためには、一般用漢方製剤とは異なり、現行の顆粒剤との生物学的同等性試験が必要です。このことは、新薬における剤形追加や後発品を承認申請する場合においても適用される規則であり、漢方薬だけの取り決めではありません。生物学的同等性試験とは、現行の製剤と追加する製剤が治療学的に同等であると保証することを目的としているものであり、新薬の剤形追加やその後発品においては、ヒトが服用した際の有効成分の血中濃度パターンが同じであることをもって証明しています。しかし、漢方製剤においては有効成分が特定できないことから、生物学的同等性試験により同等性を証明することが残念ながらできず、剤形追加品の承認が得られない状況なのです。このことは、医療用漢方製剤の後発品が承認されない理由でもあります。医療用漢方製剤でなければ、つまり一般用漢方製剤(OTC)であれば、作成することは問題なく、また技術的にも可能です。

煎じ薬に健康保険は効くのか

実は漢方の煎じ薬も健康保険が有効です。処方せんに生薬とその分量をそれぞれ記載して、以上を1日分として、何日分処方とオーダーすればいいのです。これは、処方する方も苦痛です。ですから、健康保険は使用できるが、諸般の事情で普及しないと理解して下さい。

ちなみに、以下が葛根湯の煎じ薬の保険請求例です。

薬価基準から1日分の薬価の合計金額(円)を算出します。

 1日分 この薬価は統一薬価です/銘柄別薬価ではありません)

カッコン………4.0g    6.52円 (薬価16.30円/10g)

タイソウ………3.0g    4.47円 (薬価14.90円/10g)

マオウ…………3.0g  3.60円 (薬価12.00円/10g)

カンゾウ………2.0g    3.00円 (薬価15.00円/10g)

ケイヒ…………2.0g  3.10円 (薬価15.50円/10g)

シャクヤク……2.0g  5.48円 (薬価27.40円/10g)

ショウキョウ…2.0g  2.74円 (薬価13.70円/10g)

合計    28.91円 

よって1日あたりの薬代は30円です。これに調剤量が加算され、7日までは1900円、7日以降は1日当たり100円加算され、29日以降は4000円の定額となります。携帯電話の通信料みたいですね。7日の処方では1日当たり約270円となり、これに薬代の30円が加算されて1日当たり約300円となります。漢方エキス剤の葛根湯の1の薬価(3包分は)約70円です。

承認外使用方法

実は、漢方薬エキス剤は粉のまま飲むことが、承認されている方法です。つまり、この本でも推奨しているような、お湯に溶かして、電子レンジでチンしてから飲むなどは承認外使用方法です。同じように、経管栄養チューブからの投与も承認外使用です。それはお役所的なことですので、患者さんに役に立つように臨機応変に対応しましょう。経管栄養チューブから投与するときは、漢方エキス剤を粉のまま投与するとチューブが詰まる原因となりますので、しっかりお湯に溶かしてから投与することが望ましいと思っています。

保険適応外使用方法

健康保険を使用する場合はその規則に則って使用しなければなりません。漢方薬は体全体を治すようにセットアップされているので、いろいろな病名に有効で、いろいろな訴えが治ります。保険適応病名は主病名である必要はないので、患者さんの訴えを注意深く聞いて、保険適応となる病名の記載を必ず行って下さい。また、保険病名が記載されていても、あまりにも多数の漢方薬が同時に処方されると、査定されることも考えられます。査定に関しては都道府県単位の問題ですので、複数処方に関してはそれぞれの都道府県の意向に沿って行って下さい。多くの場合2剤であれば問題ないと思われます。

処方せんの書き方

内服処方せんの記載の在り方に関する検討会(平成22年1月 厚生労働省)の報告書に以下の記載があります。

1)「薬名」については、薬価基準に記載されている製剤名を記載することを基本とする

2)「分量」については、最小基本単位である1回量を記載することを基本とする。

漢方薬エキス剤を漢字ではなくカタカナで記載しても基本的には問題ないと思われます。処方ミスを避けるためにも、私は漢方薬名と共に製薬会社とエキス剤の番号を記載しています。またグラム数は混乱を生じるので使用していません。手書きの時は、例えば「ツムラー41 補中益気湯 1包 1日3回 毎食前 14日分」と記載しています。

製品番号の付け方に意味はあるか?

ツムラの漢方エキス剤は1番から138番まであります。しかし、4,13,42,44,49,94、129、130、131、132は欠番です。葛根湯(TJ-1)と升麻葛根湯(TJ-101)、八味地黄丸(TJ-7)と六味丸(TJ-87)と牛車腎気丸(TJ-107)、小柴胡湯(TJ-9)と小柴胡湯加桔梗石膏(TJ-109)、半夏厚朴湯(TJ-16)と茯苓飲合半夏厚朴湯(TJ-116)、五苓散(TJ-17)と茵蔯五苓散(TJ-117)、小青竜湯(TJ-19)と苓甘姜味辛夏仁湯(TJ-119)、桂枝茯苓丸(TJ-25)と桂枝茯苓丸加薏苡仁(TJ-125)のように関連がありそうな番号が付けられているものもあります。また、ツムラのパッケージの色は下一桁の番号で色が決まっています。

OTC用漢方製剤と医療用エキス末の違いは

ツムラでは、6処方(葛根湯、八味地黄丸、柴胡桂枝湯、黄連解毒湯、五苓散、桂枝茯苓丸)以外はすべて、医療用エキス末を転用しており、エキス量はすべて、医療用の1/2としています。つまり、多くの場合OTCで購入して、服用量を合わせれば医療用医薬品と全く同じということです。

医薬品製造販売指針で代用可能なものは

医薬品製造販売指針にて代用可能な生薬は、以下の6種です。防風はハマボウフウ、芒硝は硫酸ナトリウム、阿膠はゼラチン、薄荷はハッカ、石膏はセッコウ、桂枝はケイヒで代用可能とされています。

ツムラの芒硝は、実は無水硫酸ナトリウム

漢方薬エキス剤で芒硝を用いているものは、承認申請上、代替品として日本薬局方の無水硫酸ナトリウムを用いています。つまり、天然の含水硫酸ナトリウムではなく、無水硫酸ナトリウムという化学合成品で代用しています。

桂枝湯など処方名は桂枝なのになぜ桂皮を使用しているのか?

日本漢方のバイブルである「傷寒論」「金匱要略」で「桂枝」とあるのは、今日の日本における桂皮に該当すると思われます。また、日本における臨床の積み重ねも桂皮で行われました。漢方製剤の承認条件は「日本で発達した処方」と定められているため、桂皮を使用しているそうです。

ツムラの膠飴は、実は粉末飴

大建中湯は、山椒、乾姜、人参の他、膠飴が使用され、1日量の組成はそれぞれ、2g、5g、3gおよび20gとされています。20グラムも膠飴が入っています。しかし、膠飴を使ってエキスを製剤化すると、吸湿性が著しく、服用量も多くなることから、ツムラ大建中湯エキスにおいては、膠飴の代用として、でんぷんを酵素分解により糖化し精製した粉末飴を使用しています。小建中湯エキスや黄耆建中湯エキスなども膠飴ではなく、粉末飴です。

膠飴は、米等のでんぷんを麦芽汁で糖化して作った飴のことで、その組成はマルトース45~50%、オリゴ糖40~45%から成っています。一方ツムラの粉末飴は、トウモロコシでんぷんから微生物由来の酵素を用い、麦芽は使用していません。その組成は、マルトース約85%、グルコース約5%、オリゴ糖約10%から成り、膠飴よりマルトースが濃縮されています。

乾姜・生姜の使い分けはどうなっているのですか。

実は、「生姜」、「乾姜」については、現在の日本と中国とでは意味するものが異なっています。日本の生姜は生のショウガ(中国の乾姜)のコルク皮を去り乾燥させたもので、日本の乾姜は生のショウガを蒸す又は湯通しして乾燥させたものです。承認基準となっている『一般用漢方処方の手引き』では生姜・乾姜のいずれを用いてもよいこととなっているため、各々のメーカーの考え方により「生姜」、「乾姜」のいずれかが選択されています。

「白朮」と「蒼朮」の使い分けは

承認申請は主に「一般用漢方処方の手引き」に基づいて行われており、このなかでは、「朮」と記載されている場合はどちらを使用してもよいことになっています。作用に差があるようにも思えますが、モダン・カンポウの立ち位置は漢方エキス剤しか使用しませんので、そういうこともあるのだと割り切って理解して下さい。

修治はどのようにしているのか。炙甘草、修治附子

古典などには修治方法が細かく記載されている場合があります。修治とは生薬に加工を施して作用を増したり、副作用を減らすことです。しかし、日本では修治について特にこだわらない傾向があり、副作用や毒性の強い生薬のみ修治しているのが現状です。これは、江戸から明治時代においてほとんどの生薬を輸入に頼り、修治の技術がなく、また修治品は価格が高いなどの理由で、日本において修治しない生薬を使用し、少ない生薬量で臨床が盛んに行われ、特に修治を必要としない日本独特の漢方ができあがったものと推定されます。炙って用いる甘草を炙甘草といい炙甘草湯(TJ-64)にのみ使用されています。附子は減毒を目的に高圧蒸気処理した修治附子が使用されています。

漢方エキス製剤の1日のグラム数が処方によって異なるのは何故?

漢方エキス製剤は乾燥エキスと賦形剤などの添加物でできています。各処方により得られる乾燥エキス量は異なりますが、基本的にツムラでは115処方は7.5g/日とするように添加物の量を調節して製剤設計しています。つまり一包2.5グラムより多くなるものが例外的にそれ以上の分量と成っているのです。一包3グラムは9処方で小青竜湯(TJ-19), 麦門冬湯, 白虎加人参湯, 炙甘草湯, 芎帰膠艾湯, 清肺湯, 滋陰至宝湯, 人参養栄湯, 柴苓湯です。 一包3.5グラムは1処方で大防風湯です。小建中湯と大建中湯は一包2.5グラムですが1回2包服用となっています。黄耆建中湯は一包3グラムですが1回2包服用となっています。

光、温度に対する安定性は?

一般に有機化合物は光、特に紫外線により活性化され、空気中の酸素により分解されたり、分子間で反応したりします。漢方エキス製剤も種々の有機化合物を含有しており、光にあてることにより変質することは充分に考えられます。また、温度に対しても有機化合物は高温になるほど不安定になり、特に湿気がある場合は、さらに不安定となります。従って、漢方製剤は乾燥状態で遮光し、涼しい所に保管して下さい。ツムラの漢方エキス剤の有効期限は大建中湯が3年、他は5年です。

グリチルリチンやエフェドリンの含量は?

実は、ツムラからは指標成分の含量は公表されていません。その理由は、指標成分の含量の多少によって品質の良否を判断する事例が多く見られるためだそうです。例えば、人参サポニンや柴胡サポニンは表皮部分に多く存在するため、生薬として使用する部分である主根より、捨てる部分のヒゲ根に多いことが判明しています。あくまでも指標成分は生産の場での、品質をモニターする指標と位置付けられています。しかし、それぞれのロットで主成分の含有量などは公表してもいいのではないかと思いますが。

漢方エキス製剤服用後の生薬成分の血中濃度は?

多くの新薬は開発段階で必ずヒトにおける有効成分の血中濃度を測定しています。そのため、漢方製剤についても、含有成分の血中濃度の結果を求められる場合があります。しかし、漢方製剤は多成分系の薬剤であり、数種の成分の血中濃度のデータが、その漢方製剤全体の動態を表すことにはなりません。また1成分あたりの含量が少なく、血中で測定できるだけの量にならないなどの理由より、ヒトにおける生薬成分の血中濃度のデータが少ないというのが現状です。