足のむくみに危険なものがある! 見分け方と対処法は?【漢方医が解説】

足のむくみに危険なものがある! 見分け方と対処法は?【漢方医が解説】

足のむくみでお困りですか?「足がむくむ」と訴えて患者さんが来院するとき、95%は急を要さない病気です。または、病気でないこともあります。
危ない足のむくみ

1  顔も含めて全身がむくんでいる時
2  片方の足が突然にむくんだ時 です。

まず、「足」というとき患者さんは足の付け根から足先までを意味して使います。しかし、いわゆる足全体は医学用語では「下肢」です。「足」は医学用語では足首から先です。でも、そんな言葉の定義はどうでもいいのであって、ここでは「足」は一般的な意味でも、医学的な意味でも使用しています。わかりにくい時は( )で注釈を加えます。

まず、夕方になると足はむくみます。この場合の足は医学用語の足で、朝はむくまず、夕方むくむのです。足にピッタリする革靴を購入するときなどにその違いは自覚できると思います。また、膝から下がややむくむことも夕方に起こります。これは重力で血液のなかの細胞成分ではないもの、それを血漿といいますが、その血漿成分が漏れ出て、組織がむくむのです。これはリンパ液といわれるものとほぼ同じ成分です。とくに長時間の立ち仕事でむくみやすいのです。

立ち仕事ではなく、歩いている場合は、ふくらはぎの筋肉を使用しています。その場合、ふくらはぎのポンプ作用で静脈血の心臓への戻りが促進されるので、その結果静脈圧が軽減され、足(下肢)はあまりむくみません。重力による足のむくみは両側に起こります。そして一晩寝て、朝になるともとに戻ります。就寝中は下肢が心臓と同じ高さにあるからです。つまり心配のないむくみです。両下肢のむくみでも顔がむくんでいなければ早急な対応は不要です。

全身がむくむ原因は心臓と腎臓の異常です。心不全や腎不全では液体成分が体に溜まりやすいので、体全体がむくむのです。この場合、顔までもむくんでいるようでは要注意です。即刻医療機関の受診をお勧めします。しかし、日常生活が問題なく出来ていれば、その晩に突然命に関わるようなことにはなりません。翌日受診しても通常問題ありません。

一番怖い、命に関わるむくみは、突然に片足(下肢全体)がむくむ場合です。多くの場合、むくみ始めた日や時間を覚えています。これは静脈に血栓が生じるための病態で、病名は深部静脈血栓症といいます。深部静脈は心臓に血液を戻る太い血管なので、それが詰まると下肢がむくむのです。ですからほぼすべて片足が突然にむくみます。そして静脈内の血栓が剥がれて、肺に移動すると肺血栓塞栓症を生じて、命に関わる状態になります。別名はエコノミークラス症候群といいます。

エコノミークラス症候群とは、飛行機の長時間のフライトで、それもエコノミークラスに搭乗していると、着陸後に突然胸痛や意識消失、そして死亡に至ることがあるために命名された病気です。血液は基本的には固まりません。なんで固まらないかは3つの要素があります。
① 血液が流れていること、② 血液が正常な血管の中にあること、③ 血液が固まりにくい状態になっていること、の三点です。

人間は生きている以上、血液は流れているのではと思われるでしょうが、例えば心臓細動という心臓の一部が震えている状態ではそこに血栓ができます。そしてその血栓が剥がれて、動脈に沿って流れていくと、脳梗塞などの原因になるのです。動脈に比べて静脈は太いので流れが遅いのです。そして静脈には動脈が心臓のポンプ作用でいつも血液が押し流されているような、常時機能しているポンプがありません。静脈のポンプはふくらはぎなのです。

ふくらはぎを使えば、つまり歩けば、動けば、つま先立ちをすれば、下肢の静脈血は勢いよく心臓に戻ります。一方でふくらはぎの筋肉を使わないと静脈血の流れは遅いか、止まっているのです。また、重力によっても静脈血は心臓に戻ります。頭の血液は自然と心臓にもどるのです。また寝た状態であれば、つまり心臓と足が同じ高さであれば、ふくらはぎを使用しなくても血液は重力に逆らう必要がないので、易々と心臓に戻ります。

また血液は正常な血管の中にあれば固まりません。一方で怪我をすれば出血して血液は固まります。つまり血管のなかから漏れ出したから固まるのです。動脈硬化などがあると血管内膜が障害されますので、血液が固まりやすくなります。

そして血液が固まりにくくなっているというのは、まず血液を固まり難くしているタンパク質があります。そのタンパク質が少ない人や、また妊娠時などはそのタンパク質は低下しますので、血液が固まりやすくなるのです。そして水分が足らずに脱水状態になると血液はいわゆる「ドロドロ」状態になるので固まりやすくなります。

つまり、エコノミークラス症候群は、狭い座席で、それも窓側などに座ると、トイレに行くのも面倒で、隣の人に申し訳なく、つまり、水分を控えて、そして足を下ろして、かつふくらはぎを使わない状態が持続して、12時間近くを過ごします。すると足の静脈に血栓ができて、それが、着陸してロビーに歩き出した途端に、静脈壁から剥がれて心臓に向かいます。心臓を通過して、そして肺に詰まるのです。その血栓の量が多いと、換気障害を引き起こして死亡します。これが、エコノミークラス症候群のストーリーです。

同じことが、地震などの被災地で生じます。まず狭い車での生活は血行不良になりがちで、運動も不足しがちです。避難所でも、トイレが汚い、遠いなどの理由で、水をあまり取らなくなります。飲料水の不足でも脱水状態になります。足の静脈に血液の塊ができやすい状態ですね。しかし、それは簡単に防ぐことができます。つまり頻回に歩けばいいのです。ふくらはぎを使えばいいのです。またときどき足を心臓よりも上に挙げましょう。すると重力で血液は心臓に戻ります。逆立ちする必要はありません。ほんの少し、足を挙げればいいのです。

また、水は飲みましょう。水分補給に心がけてトイレに頻回に行く人はエコノミークラス症候群にはほぼなりません。可能であれば、弾性ストッキングも履きましょう。これは健康人が常時履いていてもまったく問題ありません。僕はいつも、夏でも、弾性ストッキングを履いています。エコノミークラス症候群は心がけで防げる病気です。ちょっとした努力を欠かさず行って下さい。

急を要する病気に漢方は無効です。ところが慢性に足がむくんでいるとき、そして西洋医学的な治療が行われているか、行う必要がないと言われているときには、柴苓湯(さいれいとう)を長期的に内服すると効果的です。皮膚の硬化が軽減され、また指先の傷から細菌が侵入して生じる蜂窩織炎(ほうかしきえん)の頻度は激減します。