漢方薬には用量依存性がないことも。補中益気湯や真武湯
- 2019.11.18
- 漢方処方119番

症例
「先生、あの疲れに出してもらっている補中益気湯という漢方薬 一日3回と書いてありますが、2回しか飲めません」
「2回でもいいですよ。3回と2回はあまり違いがないという患者さんもいますから。でも1日1回は通常効きませんから、2回以上飲んでみてください」
(再診時)
「どうも3回よりも2回のほうが、疲れにはいいような気がするのですが。そんなことってありますか。」
「漢方薬は量を減らした方が効くなんてことも起こりうるんです。1日2回で行きましょう。」
解説
西洋薬剤は基本的に化学構造に従い合成された純物です。ですから用量依存性があることが当然です。むしろ臨床治験では用量依存性がないと認可されませんね。
ところが漢方薬は生薬の足し算の結晶です。ガスクロマトグラフィー(HPLC)などで調べるとたくさんの成分のピークが見られます。ですから、ある症状や訴えに対して用量依存性がない、つまり漢方薬を減量した方が有効という経験を希にします。この症例はそのひとつです。
また、漢方薬は添付文書には通常1日3回食前または空腹時に投与とありますが、結構2回の投与でも有効であることは経験します。患者さんが2回の内服で症状が好転するのであれば、それでいいですからね。
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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。