早見えは要注意
- 2019.11.05
- 漢方処方119番

症例
30歳代 女性
「先生、花粉症の漢方薬もらえませんか」
「では、花粉症の第一選択は小青竜湯ですので、それを2週間処方しますね。心臓がドキドキしたり、胃がムカムカしたら止めてください。」
「先生、妊娠しているのですが・・・」
危なかったな。妊婦にやっぱり麻黄剤はまずいよね・・・・
「西洋薬剤よりは漢方が良いのですね。では、妊娠中と言うことなので、流産防止にも効いて、かつ花粉症にも効くであろう当帰芍薬散を処方しますね」
(再診時)
「完全ではないか、少し良いと思う。これぐらい楽になればいいです。」
解説
江戸末期から明治の漢方の泰斗である浅田宗伯の栗園医訓五十七則に、「虚心にして病者を診すべし。何病を療治するにも、兎角早見えの為る時、拍子に載せられて、誤るものなり。」とあります。
フローチャートはいわば定石集ですが、この病気や訴えにはこれだと思っても、他の訴えがないのか、他の持病はないのか、特別な状態ではないのかなど、漢方薬の候補が頭に浮かんでも、淡々と診療すべきですね。
妊娠中に処方する漢方薬は当帰芍薬散ですが、当帰芍薬散は水毒と瘀血のくすりです。幸い水毒を治す効果が花粉症に有効だったと考えています。漢方エキス剤で流産・早産した報告はありませんが、妊娠中の処方はともかく要注意です
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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。