大塚先生の胸脇苦満

大塚先生の胸脇苦満

症例

大塚敬節先生自著より

わたし(大塚敬節先生)も30数年前に湯本先生に診ていただいた時から、右に胸脇苦満があるといわれた。そしてこの胸脇苦満は今に至るまで厳然として存在している。若しもこの胸脇苦満を目標にとって、薬方を選定するならば、私はいつも柴胡剤を用いなければならなかった筈である。

ところで多くの場合、この陳久性の胸脇苦満を目標とせず、麻黄湯、葛根湯、八味丸、大建中湯、人参湯、半夏瀉心湯、呉茱萸湯などを私は用いた。そしてそれで奏功したのである。

してみると、腹診に際しては古くからある腹証と、新しく現れた腹証とを弁別しなければならない。この弁別に際しては、患者の主訴や脈診が重大な拠り所となる。いかなる場合でも、腹証だけで、薬方を決定してはならない。胸脇苦満があるからといって、それだけで柴胡剤の証だと決めてしまうことは危険極まりないことである。

解説

上記は大塚敬節先生ご自身がおっしゃっていることです。大塚先生の立ち位置は「腹診は処方選択のヒント」ですね。腹診に囚われて処方を決めては危ないとも受け取れます。あくまでもヒントと思って行いましょう。