【症例集】葛根湯加川芎辛夷でCPAPが有効に
- 2019.09.26
- 漢方処方119番

症例
60歳代 男性 会社社長 肥満体型
痰が出にくい。睡眠時無呼吸に対してCPAPしている。
「先生、喉に痰がへばりついて出にくいんだけれど、何かいい漢方ありませんか?」
麦門冬湯を処方する。
(再診時)
「あれを飲むと痰がですぎて、夜のマスクが苦しい。あのCPAPってのはちっとも気持ちよくないんだが・・・・・」
「では鼻の通りをよくする漢方薬に変更しますね。」
葛根湯加川芎辛夷を処方
(再診時)
「今度の漢方を飲んでから、鼻の通りがとてもいい。CPAPっていうのが気持ちいいとわかりました。夜よく眠れます。ありがとうございました。」
以後、葛根湯加川芎辛夷が愛用薬剤となる、
解説
麦門冬湯は滋潤剤と言われ、体に潤いをつけます。ですから湿り気がなくて喉に痰が絡まっているようなときに、潤いがついて痰が出やすくなるのですね。
ところが効き過ぎると痰が多くなります。ティッシュの量が増える感じですね。そんな状態は睡眠時無呼吸症候群でCPAPをしている患者さんでは不快ですね。だって、痰が増えて出したいので、陽圧呼吸で押し戻されるようになりますから。失敗例ですね。
この患者さんに葛根湯加川芎辛夷という蓄膿症のくすりを処方したら感謝されました。鼻が通らないとCPAPも苦しいのでしょう。本人は葛根湯加川芎辛夷を飲んでやっとCPAPが快適なものだとわかったと教えてくれました。漢方も結構役に立ちますね。麦門冬湯は腸の潤いもつけます。つまり人によっては快便に、また少し下痢傾向になるときもあります。知っていれば驚かないことですね。
-
前の記事
【症例集】めまいでは目標を低く、でも満足できるものに。 2019.09.25
-
次の記事
【症例集】黄連解毒湯で鼻出血もっと出る 2019.09.27
Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。