【症例集】「花粉症に越婢加朮湯より小青竜湯がいい」
- 2019.09.22
- 漢方処方119番

症例
20歳代 男性
お母さんが患者さん
「先生からもらっている花粉症の薬、息子が飲みたいというのでちょっとあげてみました。」
「小青竜湯と越婢加朮湯の両方を試したのですか?」
「そうなんですれど、私は小青竜湯が無効で越婢加朮湯を愛用しています。ところが、息子は越婢加朮湯よりも小青竜湯が快適だと言うのですが、そんなことあるのですか?」
「貴重な経験をありがとうございます。漢方は生薬の足し算なので、そんなことも起こりえるんですよ。」
解説
小青竜湯は麻黄が1日量3グラム、越婢加朮湯は麻黄が1日量6グラムです。麻黄にはエフェドリンが含まれていますので、麻黄という主役に症状の改善が依存しているのであれば越婢加朮湯が小青竜湯よりも有効なはずです。越婢加朮湯では麻黄の量が倍ですので胃腸障害がより出やすいのですね。
ですからまずより安全な小青竜湯から処方し、無効なときに越婢加朮湯という順番にしています。ところが確かに越婢加朮湯より小青竜湯が有効な患者さんもいます。それは脇役によるのですね。とくに甘草と乾姜二つで、甘草乾姜湯とよばれ、冷えと水毒の薬として有名です。甘草と乾姜は小青竜湯の他に、苓甘姜味辛夏仁湯、人参湯、柴胡桂枝乾姜湯、苓姜朮甘湯などに含まれますので、それら単独でも花粉症に効く可能性がありますし、また麻黄剤が効果が今一歩のときに、それらを併用するという知恵も沸いてきます。生薬から眺めるのも楽しいですね。
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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。