【症例集】不妊症には当帰芍薬散。でも今は、人工授精でしょう
- 2019.09.16
- 漢方処方119番

症例
20代 女性
不妊を理由に漢方を希望
「西洋医学の不妊治療はものすごく進歩しました。精子一個でも人工授精が可能だそうです。本当にお子さんがほしいのであれば、西洋医学的な治療を絶対に行ったください。そんな現代医療のない時代の精一杯の知恵が漢方です。漢方は併用しても害はありませんので、そんなつもりで漢方を飲んでください。」
患者さんは、西洋医学的治療を受けて、無事出産しました。
解説
世継ぎがないことは昔は大問題だったのでしょうから、漢方も多少は役に立ったのでしょうか。温経湯や当帰芍薬散などが懐妊薬としては有名です。
虚弱なひとは妊娠もしませんし、当帰も胃に障ります。そんなときに六君子湯などで胃腸を鍛えて、そして当帰芍薬散が飲めるようになって、懐妊したといった症例報告はよく目にします。今や現代です。生殖医療は医療倫理の問題となるまで進歩しています。子供が本当にほしいのであれば、そして時間が限られているのであれば、絶対に西洋医学的不妊治療が優先です。一方でまだまだ時間があり、なんとなく子供がほしい程度であれば、漢方だけでしばらく頑張るのも悪くはないですね。
六君子湯は四君子湯+陳皮・半夏です。四君子湯は蒼朮、人参、伏苓、甘草の4つの君薬+生姜・大棗です。蒼朮、人参、伏苓、甘草の4つの君薬を含むツムラ漢方エキス剤は加味帰脾湯、啓脾湯、柴苓湯、四君子湯、十全大補湯、六君子湯の6つです。
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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。