【症例集】乳腺痛に当帰芍薬散が無効 そして桃核承気湯が有効だった
- 2019.09.15
- 漢方処方119番

症例
30代 女性
乳腺の痛みがあり受診
乳腺外科では超音波検査やマンモグラフィーを施行されて乳がんではと言われたと。しかし、乳腺痛に対する処置はまったくされずに終了と。
そこで漢方を希望して来院した。
生理時に乳腺痛は悪化するとのヒントから当帰芍薬散を投与した。
しかし、痛みは不変と。
そこで便秘傾向にて、桃核承気湯は飲めると判断し桃核承気湯を処方する。
すると乳腺痛は次第によくなり、あまり気にならなくなったと。
解説
生理・妊娠・出産で悪化する症状には当帰芍薬散と言われています。この鉄則に従って当帰芍薬散を処方しました、乳腺痛には効きませんでした。そんなときは他の駆瘀血剤の投与を検討します。便秘傾向でしたので、大黄を含む桃核承気湯が飲めると判断して処方し、気にならない程度に落ち着きました。
患者さんは乳腺痛を主訴に乳腺外科を受診したのですが、乳腺外科は乳がんではないという診断をして終了です。訴えを治してもらいたい患者サイドと、病気を治療する医療サイドの不一致という典型的な満足を得られないパターンに陥りあました。
そんな時に漢方が有効なことがあります。僕が日本で最初に保険医療としてセカンドオピニオン外来を行っていた10年前、こんな医療サイドと患者さんの気持ちの不一致の症例に多数遭遇しました。そして漢方を西洋医学の補完医療としてしようしすればすばらしいのではと思った次第です。そして僕の期待通りに、補完医療として使用するのであれば、とても有益で、西洋医も漢方をもっと簡単にリラックスして処方できればいいのにと思った次第です。
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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。