【症例集】変形性膝関節症には防已黄耆湯。できれば越婢加朮湯を併用したい
- 2019.09.04
- 漢方処方119番

症例
70歳代 女性 水太り体型
変形性膝関節症で受診
「まず、防已黄耆湯という漢方薬を処方しますね。」
(再診時)
「あんまり、いやほとんど効きません」
「では、今日からもうひとつ漢方薬を追加しますね。今日処方する漢方薬はひとによってはムカムカ・ドキドキします。そのときは止めてくださいね。」
防已黄耆湯+越婢加朮湯を処方
(再診時)
「少し良いようです。ムカムカ・ドキドキもしません。」
「では続行しますね。体調が悪いと不快な作用がでることもあります。変なことが起これば、越婢加朮湯という漢方をまず止めてみてください。」
その後、長期投与して問題なく経過
解説
防已黄耆湯は虚証の薬、越婢加朮湯は実証の薬です。漢方では虚実は混在しているといった説明をして併用することがあります。水太りの方で変形性膝関節症があれば防已黄耆湯は有名な選択肢です。
ところが防已黄耆湯単独で軽快するひとは多くはありません。それほどの期待をしないで防已黄耆湯は処方しています。つまり将来的には越婢加朮湯を加えたいのですね。水太りの人は筋肉量が相対的に少ないので虚証です。麻黄が飲めない可能性があるのですね。
しかし実際に飲んでもらわないとわかりません。1日1包を処方して半包ずつ朝晩と慎重に処方を始めてもいいですし、毎食前3回と処方して「何かあれば中止、減量」と言い含めて処方する方法もありです。結構なお年寄りでも越婢加朮湯は飲めるんだと最近は思っています。しかし麻黄剤ですので、血圧が上昇することがあります。
高齢の方への長期投与は慎重に行いましょう。
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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。