【症例集】「高血圧の薬なんてないよ。漢方には」
- 2019.08.14
- 漢方処方119番

症例
62歳 男性
「高血圧に効く漢方薬ください」
「そんな漢方薬はありませんよ。西洋薬剤が最優先です。」
「循環器内科から薬はもらってます。この顔と鼻の赤みとイライラをよくしたいのですが・・・・・」
「なるほど。失礼しました。西洋薬剤をすでに飲んでいるのであれば、そしてそんな症状には結構漢方薬は有効です。試してみましょう。」
黄連解毒湯を処方
(再診時)
「イライラがすこし収まりました。もうしこし飲み続けてみます。」
そして数ヶ月のんで、鼻の赤みも落ち着き、むしろ今後も飲み続けたいと。
解説
高血圧を漢方薬だけで治療しようというのは馬鹿げていると思っています。西洋医に迫害されていた頃の、昭和初期の漢方医には、断固として西洋医学的治療を断り続けて、そして高血圧の合併症で死亡したひともいます。しかし、われわれはまず西洋医です。漢方が好きで、興味がある西洋医ですので、当然高血圧には西洋薬剤で対処することが基本です。
漢方の出番はその後ですね。イライラが残ったり、顔の赤みなどは黄連解毒湯などで結構軽快します。まれにストレスによる軽い高血圧が柴胡加竜骨牡蛎湯などで西洋薬なしで正常血圧にもどることもあります。これは例外的で、西洋薬優先で行きましょう。まれに、黄連解毒湯などで複数必要だった降圧剤がひとつ減量できたり、用量が少なくなることは経験します。
その程度の降圧作用は漢方薬にもあると思っています。
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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。