【症例集】ともかく風邪には香蘇散

【症例集】ともかく風邪には香蘇散

症例

70歳代 女性

間欠性跛行で僕の外来で西洋薬剤を投与中

「先生、最近風邪がはやっているから、もしものために漢方の風邪薬がほしい」と言われる。

待合で僕の外来で漢方を処方されて良くなった人から話でも聞いたのだろう。いままで漢方を飲んだことはない。

つまり虚証か実証かを過去の処方経験から推測することはできない。

一見、元気良さそうだから、元気な年寄り向けの麻黄附子細辛湯にしようかと頭をかすめるも、一番安全な香蘇散に決める。

「風邪っぽいなと思ったら、すぐに飲んでくださいね。空振りでもいいですから、疑えば飲むんですよ」

そして2ヶ月後、「先生、あれは最高だ。とってもよく効く。風邪っぽいときに飲むと悪くならない。もっとくれ」と。とても感謝された。

解説

処方に悩んだ時には、虚証用からカードを切るのが漢方の掟。特に麻黄や大黄を含む漢方薬ではそうした方が安全。風邪の漢方は、麻黄湯、葛根湯、麻黄附子細辛湯、香蘇散(または桂枝湯)とまず理解する。実証から虚証用に並んでいる。お年寄りは麻黄附子細辛湯か香蘇散。悩めば虚証用の香蘇散ということになる。香蘇散は江戸時代の漢方アンチョコ(衆方規矩)の最初に出てくる処方。それぐらいよく使われたと思っています。なんとなく風邪薬をくれと言われて、まず安心してあげられるのは香蘇散。

だって麻黄が入っていないから。そして結構効くからです。全員に香蘇散を投与すればいいのだが、麻黄剤が飲めるひとは麻黄剤を飲んだ方がいいのです。その方がよりはやく治るからですね。香蘇散では数日かかる発熱性疾患も、麻黄剤で介入すれば半日から1日で治る可能性があります。つまり香蘇散を選ぶと言うことは安全で安心ですが、次の日には元気になるというチャンスを失いかねないということです。