【症例集】急性症からまず治す。そして日頃の漢方薬はお休み
- 2019.06.28
- 漢方処方119番

症例
40歳代 男性 (自験例)
日頃から大柴胡湯と桂枝茯苓丸を内服している。これは花粉症が軽快し、熟眠感が増し、いぼ痔が消失しているからである。
(疲労が激しいとき)
愛用漢方薬は補中益気湯。疲れが溜まったと感じたときは、補中益気湯を内服する。このときは、日頃飲んでいる漢方薬は休薬です。
(風邪が長引いたとき)
小柴胡湯+麻杏甘石湯を愛用している。このときも、日頃飲んでいる漢方薬は休薬です。
(風邪を引いたかな)
すぐに葛根湯を飲みます。日頃飲んでいる漢方は出来れば休薬ですが、すでに飲んでいても、葛根湯を飲みます。
解説
先急後緩、先表後裏など、先に治す病気のヒントになる言葉があります。ゆっくりの病気よりも急な病気を先に治す。表の病気が先で裏はあとからと言ったことですね。
ともかく、漢方薬は生薬の足し算の結晶にて、どんどんと足していくと効きが悪くなることがあります。そこで日頃飲んでいる漢方薬は休薬するのですね。でもこれは建前で、すでに日頃の薬を飲んでしまって、その後、風邪の漢方を飲みたければ、もちろん飲みます。できれば服薬する漢方薬を増やさないということです。
西洋薬剤ではむしろやってはならないことですね。風邪でPL顆粒を内服するからと言って、日頃飲んでいる降圧剤、糖尿病の薬、向精神薬などを、休薬することは有り得ませんね。漢方薬では併用はなるべく慎むということが建前です。
漢方が生薬の足し算の結晶ということが腑に落ちていれば、当たり前の処方選択ですね。
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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。