【症例集】「効能書きにないですよ。いいんですか?」

【症例集】「効能書きにないですよ。いいんですか?」

症例

60歳代 男性

「先生、私は風邪薬を希望したのではないよ」とやや憤慨して院外薬局より戻ってきた。

「香蘇散の効能書きには確かに風邪しかないのですが、この漢方薬はひろくいろいろな症状に効くのです。とくに気が晴れないときには有効なので、あなたのための薬です。あなたには、風邪を目的として処方したのではありません。処方の間違いではありませんから、安心して飲んでください。」

(再診時)

「香蘇散は、確かに良い。あれを飲んでいると調子良い。もうしばらく飲みたい」

解説

添付文書の効能又は効果には保険病名が記載されています。漢方薬は乱暴な表現をすれば何にでも効く可能性があります。昔はピンポイントで病気を治すすべがなく、体全体を治す努力をして、その延長線上にある症状を治す効果を期待したと思っています。漢方薬を保険適応するにあたって、ある程度使用頻度が高い病名が保険病名として記載されたことは致し方ないことですが、大切なことは、保険病名は建前だと言うことです。

いろいろと効くことが漢方の魅力です。ですから、薬剤師の先生から保険病名通りの説明をされて、憤慨する、または疑問に思う患者さんも実はすくなくないのですね。そうであれば、最初にこちらから、「効能書きの病名とは異なるがあなたの薬ですよ」と言い添えておくことも大切な気配りですね。また保険病名をつけることは保険医療システムでのルールですので、整合性が合うように病名は記載しましょう。心の中で「漢方薬は何にでも効く可能性があるのだ」とつぶやきましょう。

女神散の保険病名には女性の疾患しか記載がありません。でも男性にも結構使用します。そんなときの僕の記載病名は「男性血の道症」などにしています。漢方に造詣の深い審査員はこちらの努力をわかってくれるはずです。