【症例集】瞑眩は皮膚疾患だけにしよう 「毒がでるように一時悪化することありますよ」
- 2019.07.12
- 漢方処方119番

症例
70歳代 女性
近医で治らない慢性の湿疹ということで、息子さんに連れられて来院
数件の皮膚科に罹ったが治らないと。
湿疹は下肢に散在性にある。
フローチャートに従って、十味敗毒湯を処方
「今日から漢方薬を処方します。何か変なことが起これば、漢方薬を中止するか、ご連絡ください」
(数日後、息子さんより電話で相談あり)
「湿疹が一気に悪化したようだ。」
「お母様のご機嫌はどですか。」
「特別に悪くはない。」
「湿疹が悪化しただけであれば、もう少し内服を続けてほしい。一時、毒が出るように悪化して、その後快方に向かうことがあります。来週の外来に一緒に来られますか。」
(再診時)
「あの後、湿疹の悪化は落ち着いて、その後だんだんと良くなっている。」
半年間、同じ処方を継続して、湿疹はほとんどなくなる。
解説
正しい処方だが、軽快する過程で体に不快な作用が生じることを瞑眩(めんげん)と言います。昔の本では、「少々不快なことが生じても、瞑眩と考えて、漢方薬を続行した」といった記載は多々見られます。
吉益東洞などは「薬、瞑眩せずんば、その病癒えず」とも言っています。一方で、モダン漢方の立ち位置は、「何か起これば止めてください」です。そんな僕の処方方法でも、唯一皮膚疾患の時のみ、その皮膚疾患の悪化だけであれば、お話をして漢方薬を継続することがあります。
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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。