【症例集】よくある質問「他の漢方薬との併用は?」
- 2019.06.04
- 漢方処方119番

症例
これもよく聞かれることです。複数の症状がある時に、処方はどうすればいいか悩むかもしれません。僕は次のようにお伝えしています。
○「漢方薬や漢方みたいなサプリメントは飲んでいませんね。」
○「西洋薬はたくさん併用しても、それぞれが独自に有効に作用します。ところが漢方薬はたくさん飲むと効かなくなります。漢方はできれば一箇所で処方してもらいましょう。」
解説
「漢方薬は生薬の足し算の叡智」と説明しています。1804年、アヘンの気持ちいい成分がモルヒネだと分離精製できました。だいたいその時期から、科学者や医者は有効な成分、気持ちよくなる成分、害を及ぼす成分は何だ? という質問に答えられるようになります。現代薬学の夜明けですね。つまり現代薬学のイメージは引き算です。山から宝物を探し出すといった感じです。そして、その純物質(通常はHPLC などでワンピーク)を化学合成して、製薬メーカーは現代西洋薬剤として販売しています。
一方で、分離精製できない時代の知恵は何だったのでしょうか。それは足し算です。長い歴史の中で、こんな症状や訴えにはこんな草根木皮や他の物質などが有効だという知恵はありました。そんな生薬1種類を民間薬と呼んでいます。その生薬を足し合わせることによって、作用を増強し、副作用を減らし、場合によっては全く新しい作用を作り出しました。つまり漢方は足し算の知恵なのです。
ですから、たくさんの漢方薬を飲むと、たくさん生薬を同時に飲むことになりますので、漢方のバランスと足し算が壊れ、効かなくなることがあります。漢方は一箇所で処方してもらった方が良い理由です。
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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。