漢方薬で痩せるのか?【漢方医の実体験から】

漢方薬で痩せるのか?【漢方医の実体験から】

「先生、痩せる漢方薬下さい!」とよく懇願されます。そんなときの僕の答えは決まって、「そんな漢方有るわけ無いでしょう。もしも、そんな痩せる漢方があれば、この世にデブはいないと思わない?」と返します。「でも、先生は漢方飲んで痩せたんでしょ!」と言われます。

92kg→72kgになった私の体験

そうなんです。僕は昔92kgあったのです。外科医で24時間365日緊急手術に対応していた頃は、夜中の手術が終了して、朝の4時までやっているお店に手術をした仲間とみんなで食事に行っていたのです。もちろん、ひとりは順番で手術後の経過観察のためにベッド脇に待機です。そんな生活を1998年に英国から帰国してから約10年以上続けていました。そして体重は92kgになってしまったのです。そこで一念発起、痩せようと決めました。

92kgあった頃の私

漢方は大柴胡湯(だいさいことう)と桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を飲んでいました。ただ、それだけで痩せたわけではないのです。毎回食べる物のカロリーをチェックして、そして出来る限り炭水化物は減らしました。そして4年間で20kg体重は落ち、72kgになったのです。患者さんには炭水化物は3つと説明しています。主食、甘い物、そして果物です。主食は、ご飯、パン、パスタ、うどん、そば、おもち、シリアルなどです。甘いのもは基本的に全部炭水化物と思っています。果物も炭水化物と思っています。それを半分だけ止めるつもりで少々頑張るとだんだんと痩せていきます。4年間の節制で72kgになったのですが、なんとみすぼらしい体でした。筋肉を付ける努力をまったく怠っていたからです。

運動を始める前の私

そこで、一念発起、金槌で医師になって以来まったく運動とは無縁であった50歳のとき、トライアスロンを始めます。そして2年でオリンピックディスタンス(スイム1.5km、自転車40km、そしてラン10km)を完走しました。凝り性な僕は、その後日本で一番長い距離のトライアスロンに挑戦したくなり、1年後、つまり運動を始めてから3年目に佐渡トライアスロンAタイプ(水泳3.8km、自転車190km、そしてフルマラソン42km)を14時間18分で完走しました。体は結構若返りました。スタイルもよくなりました。

漢方だけでやせることはなく、漢方を併用すると痩せやすくなる

さて、漢方だけで痩せることはありません。しかし、漢方を併用するとやっぱり痩せるのです。痩せる漢方薬は二つで僕が使用した大柴胡湯、OTC(薬局で処方せんなしで購入できる薬剤)としてはビスラットゴールドEXという名前でも売られています。もうひとつ痩せる漢方薬は防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)で、こちらはナイシトールやコッコアポという名前でもOTCで売られています。

防風通聖散はOTCで相当量が販売されています。漢方薬による肝機能障害の多くはこのOTCで販売されている防風通聖散によるものです。むやみに飲み続けると副作用が生じることもあります。調子が悪くなった時は中止して、医師の診察を受けましょう。

さて、僕が大柴胡湯と桂枝茯苓丸を内服した理由です。これは漢方に疑いを持っていた当時、10年以上前のことですが、大塚敬節先生の自叙伝を読んでいて、興味深い記載に遭遇しました。大塚敬節先生は高知の産婦人科をたたんで漢方を学ぶために一念発起上京したのです。そして田端で開業していた湯本求真を師と仰いで研修を積みます。その湯本求真が、こじれた経過の長い患者が来ると、がっちりしていればともかく大柴胡湯と桂枝茯苓丸を処方し、華奢であればともかく、小柴胡湯(しょうさいことう)と当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を処方したというのです。そして、その薬の反応を見て、必要があれば変更していったそうです。そんなことは西洋医学的思考ではまったく論外の考え方です。しかし、僕は疑う前に自分に試したのです。僕は92kgありましたから、がっちりタイプでしょう。そこで大柴胡湯と桂枝茯苓丸を飲み始めました。すると、まず熟眠感が増し、肩こりが楽になり、そして後頭部の薄毛が治り(当時はリアップを頻用していました)、花粉症が楽になり、イボ痔がほぼなくなり、そして体重が減少したのです。つまり湯本求真が言っていてことは僕自身にとってはYesだったのです。大柴胡湯と桂枝茯苓丸は僕が漢方好きになった、漢方は効いていると自覚した薬剤なのです。

今でもこじれた患者には、気長に大柴胡湯と桂枝茯苓丸を勧めます。痩せたいひとにも大柴胡湯と桂枝茯苓丸を勧めます。場合によっては防風通聖散も勧めますが、僕の外来では大柴胡湯と桂枝茯苓丸が肥満のファーストチョイスです。是非、大柴胡湯と桂枝茯苓丸を試して、そして食事制限や運動などにも挑戦してください。