貧血に漢方薬は有効なの?西洋医×漢方医が解説

貧血に漢方薬は有効なの?西洋医×漢方医が解説

世の中で語られる「貧血」はふらっとすることです。脳貧血などと日常用語で使ったりします。医学用語の貧血とは、血液が薄くなった状態です。確かに血液が薄くなると、立ちくらみなど、ふらっとすることも生じます。

では、貧血に漢方薬は有効なのかというと、貧血に漢方は無効です。この記事では、貧血の原因と対策について解説します。また、そのような症状に対し漢方薬がどのようなサポートができるかについてもお伝えします。

最後に血液に関するお話を書いてありますので、興味のある方は読んでみてください。

貧血の原因とは

貧血の原因で最も多いのは鉄が不足することです。病名は鉄欠乏性貧血になります。鉄が欠乏する理由は①鉄の不足、②鉄の需要増加、③鉄喪失、そして④鉄の吸収障害です。

  1. 鉄の不足:偏食や過度のダイエット、インスタント食品ばかり食べる、などが原因になります。バランス良く食べていれば鉄欠乏性貧血になることはありません。
  2. 鉄の需要増加:たとえば、妊娠すると胎児の成長に鉄が当然に必要になります。
  3. 鉄の喪失:これがもっとも多い原因です。月経過多や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、痔、癌などからの出血です。
  4. 鉄の吸収障害:胃切除などで鉄の吸収障害が生じます。

次に、鉄欠乏性貧血以外の原因が稀にあります。血液を作ることが出来ない病気としては再生不良性貧血が有名です。悪性貧血はビタミンB12や葉酸が不足して正常な赤血球が作り出せなくなります。また赤血球が溶けて減少する溶血性貧血もあります。一番多いのが運動のやり過ぎで、赤血球が壊れることがあります。

貧血の原因を把握し、対策を打つ

貧血はその原因を探すことが大切です。採血で鉄が減少していることが解れば鉄剤の内服で良くなります。その時に注意すべきことは鉄欠乏性貧血の原因です。出血している場合がもっとも多いので、その探索をしっかりやりましょう。子宮筋腫は閉経すると縮小することが多いので、昔に比べて直ぐに子宮摘出術を行う頻度は激減しました。

生理が多いという理由で鉄欠乏性貧血になっているときはあまり鉄剤の内服を好まない方がいます。そんな時は、そして軽い貧血であれば、食事からしっかりと鉄を取りましょう。鉄はタンパク質と結合するヘム鉄と、結合しないでミネラルとして存在する非ヘム鉄があります。吸収率に差があり、ヘム鉄は10から20%、非ヘム鉄は2から5%が吸収されます。

ヘム鉄はレバー、かつお、まぐろ、あさり、牛肉、豚肉などに含まれています。特にレバーに多く含まれています。また、非ヘム鉄は大豆、ほうれん草、小松菜、ひじきなどに含まれています。ヘム鉄よりは吸収率は悪いですが、レバーが苦手な方は、ヘム鉄含有食品でもいいので、たくさん食べて下さい。

鉄分豊富な食材

貧血に対する漢方薬の可能性

さて、冒頭でも書いた通り貧血に漢方は無効です。鉄剤を含む漢方薬は医療用と一般用を含めてありません。貧血でもっとも頻度が高い原因は鉄欠乏性貧血です。その治療は鉄欠乏の改善でそれに直接有効な漢方薬は現代のものにはありません。

一方で、漢方には血虚という漢方用語があります。血が虚すのですから、貧血に思えますが、遙か昔、赤血球を測定することも、ヘモグロビンを測定することもできません。そんな時は貧血という概念はあったのでしょうが、むしろ栄養失調を含めた広い概念が血虚です。漢方的には血虚に有効な漢方薬は四物湯(しもつとう)です。四物湯は、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)の4つの構成生薬からなる漢方薬ですが、どれも当然ながら鉄欠乏性貧血を改善するに足る鉄をまったく含んではいません。

漢方の魅力は、サポート医療です。ですから、貧血で西洋医学的な鉄剤を投与されていたり、また鉄欠乏性貧血ではない珍しいタイプの貧血で加療しているときに、諸症状に漢方は役に立つことがあるのです。貧血の症状は息切れや疲れやすさが前面にでます。そんな疲れやすさを改善する漢方は多数あります。元気が出る朝鮮人参と黄耆(おうぎ)を含む参耆剤と、血虚に有効な四物湯を含む十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)になります。貧血症状があるかたは、西洋医学的な加療をしっかり受けて、そして十全大補湯をまず併用して飲んで下さい。

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コラム:赤血球とヘモグロビンのおはなし

赤血球

血液の中の赤血球にはヘモグロビンというタンパク質が含まれています。ヘモグロビンの役割は酸素の運搬です。そしてヘモグロビンは鉄とタンパク質から構成されているのです。体内に鉄は数グラム存在し、その内2/3がヘモグロビンに含まれていて、1グラムが肝臓にあります。

息を吸うと、空気は気管、気管支を経由して肺胞に到ります。肺胞は風船の様になっていて、その周囲には多数の毛細血管が貼り付いています。この肺胞の膜は酸素や二酸化炭素は通過しますが、血液は通過しないようになっています。そこで空気中の酸素は血液中の赤血球内にあるヘモグロビンと結合するのです。二酸化炭素は血液中に含まれており、血液中で高濃度となった二酸化炭素は低濃度の肺胞に移動します。水に溶ける二酸化炭素は少量ですが、二酸化炭素を運搬する特別なシステムを用意しなくても、体で生産された二酸化炭素を体外に排出するには十分なのです。

ところが、体が必要とする酸素を水に溶ける量で補うことはまったく不可能です。そこで、酸素を組織に効率良く、大量に運ぶシステムがヘモグロビンなのです。ですから、ヘモグロビン量が減ると酸素が十分に運べなくなり、息切れや、疲れやすく、運動能力が減衰します。

つまり、ヘモグロビンを増やせば、疲れにくく、運動能力が向上します。簡単な、そして見破りにくいドーピングは自分の血液を保存しておいて、そして競技前に注入する方法です。当然にヘモグロビン濃度は上昇し、たくさんの酸素が運べるようになって、運動能力が向上するのです。ツール・ド・フランスという自転車最高峰のレースに勝ちたい一心でドーピングを行う選手(ランスアームストロング)の姿を描いた映画、「疑惑のチャンピオン」、にはそんな光景が登場します。

ドーピングにならないようにヘモグロビンの濃度を上げる方法が、高地での合宿です。マラソンランナーが行う様子がよくニュースになっていますね。高地では酸素濃度が低いので、そこで身体を鍛えると、更なる酸素を組織に送る必要に迫られ、体は自然と反応としてヘモグロビン濃度を上げるのです。

ヘモグロビンの正常値は12から13g/dl です。dlはデシリットルで100mlのことです。血液は体重の1/13ぐらいと言われますので、65kgの人では5リットルになります。ですから、5リットル中には、12x50=600グラムになります。体重の1/100がヘモグロビンなんです

赤血球の正常値は500万/m㎥です。1立方ミリメートル(m㎥)あたりですよ。1リットルは10cmの立方体、つまり100mm の立方体です。1m㎥の中に赤血球が500万個、すると1リットル中には、500万x100x100x100個です。これはなんと1リットル中に500万x100万=5兆個になるのです。

血液量は体重の1/13なので、ザックリと血液は約5リットル、つまり体の中に赤血球の総量は25兆個になります。よく人間の細胞数は60兆個とか言われますが、なんとその半分近くが赤血球なんです。面白いでしょう。というか僕はこの計算をして、細胞数が多い事が偉いように思っていたのですが、半分近くが赤血球と知って、ちょっとガッカリしました。ちなみに、腸内にいる細菌は、実は総量で1kg近くになり、総数は約1000兆個なのです。

赤血球の寿命は120日です。これが壊れると、肝臓で代謝されます。それがビリルビンという物質になり、これが上手く体外に排出されないと全身が黄染する黄疸という症状になります。ビリルビンは胆汁に変換され、胆嚢で貯えられて、十二指腸から排泄されます。この胆汁の色が便の黄色ですよ。つまり、胆汁が排泄できない病気になると、便は真っ白になります。