当帰(とうき)・漢方医による生薬解説10

当帰(とうき)・漢方医による生薬解説10

当帰は奈良や北海道で栽培されています。当帰はセリ科の多年草で、その根を使用します。四物湯を芍薬、川芎、地黄とともに構成するのが当帰です。当帰は『神農本草経』の中品に収載されています。

当帰は漢方用語で言う駆瘀血効果が強い薬です。瘀血を治す薬という意味合いです。瘀血を敢えて現代用語に直すと、「古血の溜まり」と説明しています。捻挫をすれば青くなる、生理の旧血は黒い、目の隈、痔疾患、下肢静脈瘤なども古血のたまりと言えないこともありません。そんな漠然とした概念で瘀血を捉え、それを精一杯治す生薬の組合せを創り上げました。

和漢では、桃仁、牡丹皮、紅花、大黄、当帰の中の2剤以上を含む漢方薬はオートマチックに駆瘀血剤と言って間違いありません。また、当帰は駆瘀血効果が強いので、当帰一剤が目に留まっても駆瘀血剤だとほぼ言えます。「ほぼ」と言い添えたのは、四物湯71は当帰、芍薬、川芎、地黄ですので、当帰があって地黄がないとすると四物湯の要素を除外できるので、もっとはっきりと駆瘀血剤だと言い放てます。生薬から漢方の作用を想像できるようになると楽しいですよ。

当帰含有漢方薬で有名なものは当帰芍薬散でしょう。実は当帰芍薬散は『金匱要略』に登場する処方なのですが、中国では余り使われていません。わが国でも、吉益東洞の類聚方には当帰芍薬散は未試方に分類されています。しかし、その吉益東堂の長男吉益南涯(1750~1813)が当帰芍薬散の効用を広めたと言われています。現在では、当帰芍薬散は、桂枝茯苓丸、加味逍遙散と並んで女性の3大処方に挙げられます。一方で中国では今も余り使われていません。現代中医学の教科書である「方剤学」には当帰芍薬散は載っていません。

当帰が処方名と関係する漢方エキス剤は当帰芍薬散、当帰建中湯、当帰飲子、芎膠艾湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰芍薬散加附子、芎調血飲などがあります。漢方エキス剤の約3分の1に当帰は含まれています。

第17改正日本薬局方には以下のように記載されています。

 

  • トウキ Japanese Angelica Root ANGELICAE ACUTILOBAE RADIX 当帰
    本品はトウキAngelica acutiloba Kitagawa 又はホッカイトウキAngelica acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino (Umbelliferae)の根を,通例,湯通ししたものである.

 

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トウキ 画像提供:ツムラ