蒺䔧子(しつりし)・漢方医による生薬解説89
- 2019.01.12
- 生薬の種類

蒺䔧子はハマビシの未成熟果実です。原植物のハマビシはハマビシ科の植物で,アジアをはじめ世界に広く分布しています。日本で本州の西側,四国,九州に分布しますが,海岸砂地に限られ,環境省のカテゴリーでは絶滅危惧ⅠB類に指定されています。一方,中国やモンゴルなどでは砂地を始めとする乾燥地にごく普通に見られる雑草です。薬用部となる果実は直径が1cmほどで10 本の鋭い刺が生えていて,裸足で踏むとケガをするため,海水浴場では除草の対象とされることも資源減少の理由となっています。 古来,蒺藜と呼ばれる生薬には白蒺藜,潼蒺藜,沙苑蒺藜,沙苑白蒺藜などがあり、ここでも歴史的にどれが正品でどれが代用品かは不明です。
蒺䔧子を含む漢方薬は当帰飲子です。
第17改正日本薬局方には以下のように記載されています
- シツリシ Tribulus Fruit TRIBULI FRUCTUS 蒺䔧子
本品はハマビシTribulus terrestris Linné (Zygophyllaceae)の果実である.

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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。