石膏(せっこう)・漢方医による生薬解説21
- 2019.01.05
- 生薬の種類

石膏は天然物の含水硫酸カルシウムです。ケイ素、アルミニウム、鉄などの化合物が少量含まれています。古生代から中生代の地層に多数含まれる硫酸塩鉱物です。骨折時に使うギプスの材料としても有名です。
『神農本草経』では石膏は中品として収載されています。
第17改正日本薬局方には以下のよう記載されています
- セッコウ Gypsum GYPSUM FIBROSUM 石膏
本品は天然の含水硫酸カルシウムで,組成はほぼCaSO4 2H2O である
とあります。漢方薬を作る際に、石膏は無水硫酸カルシウムで代用しても構わないことになっています。
石膏を含むと、和漢では冷やす生薬とオートマチックに考えても整合性があります。
硫酸カルシウムの溶解度は、水和物で100mlあたり0.21グラムです。通常和漢では600mlの水を煮詰めて300mlにします。つまり漢方薬として飽和できる量は約0.6グラムが限度になります。
石膏が処方名と関係する漢方エキス剤は麻杏甘石湯、小柴胡湯加桔梗石膏、白虎加人参湯などです。白虎は石膏の別名です。石膏は麻杏甘石湯には5グラム、小柴胡湯加桔梗石膏10グラム、15グラムとあります。これは1日量なので、煎じ薬では600mlに入れて、300mlにするのです。300mlには0.6グラムしが解けませんので、ほとんどが沈殿して残ります。自分で煎じるとよくわかりますが、天然物ですので、他に含まれる微量な成分が有効性に必要とも説明可能です。ところが、エキス剤の多くは天然の硫酸カルシウムではなく、工業用の無水硫酸カルシウムを使用しています。すると溶解度を超えた硫酸カルシウムの必要性が僕には説明できないのです。
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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。