人参(にんじん)・漢方医による生薬解説5
- 2019.01.05
- 生薬の種類

いわゆる朝鮮人参です。日本でも江戸時代から栽培され、滋養強壮に効果があります。幕府管理下に人参の種子を全国に配り、諸藩に人参栽培を奨励したことからお種人参とも呼ばれていました。人参と黄耆を含む薬を参耆剤と呼びますが、参耆剤が気力体力を補う、つまり元気をつけるくすりとしての役割を演じています。参耆剤は補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯、清暑益気湯、半夏白朮天麻湯、清心蓮子飲、大防風湯、帰脾湯、加味帰脾湯、当帰湯などです。僕は漢方のユンケル黄帝液のようなものですよ。毎日飲んでもいいし、頓服で疲れたときなどに飲んでも良いですよ」とお話しています。
また、参耆剤作戦ではなくて、人参の作用を強めるための方法に四君子湯にする方法があります。四君子湯は人参、甘草、茯苓、蒼朮(白朮)です。四君子湯に陳皮と半夏を加えると六君子湯になります。十全大補湯には四君子湯が含まれています。どれも気力をつける漢方薬なのです。
人参一剤でも気力がつきます。つまりちょっと元気がない人向けなのです。人参に黄耆が加わると参耆剤に、人参に甘草、茯苓、蒼朮(白朮)が加わると四君子湯となるのです。人参単独よりももっと気力がつくといったイメージです。
人参が処方名と関係する漢方エキス剤は人参湯、人参養栄湯、桂枝人参湯などがあります。漢方エキス剤の約3分の1に人参は含まれています。
第17改正日本薬局方には以下のように記載されています。
- ニンジン Ginseng GINSENG RADIX 人参
本品はオタネニンジンPanax ginseng C. A. Meyer (Panax schinseng Nees) (Araliaceae)の細根を除いた根又はこれを軽く湯通ししたものである.
本品は定量するとき,換算した生薬の乾燥物に対し,ギンセノシドRg1 (C42H72O14:801.01) 0.10%以上及びギンセノシドRb1 (C54H92O23:1109.29) 0.20%以上を含む

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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。