麻黄(まおう)・漢方医による生薬解説2

麻黄(まおう)・漢方医による生薬解説2

麻黄は中国北部などの砂漠地帯に自生する植物で、地上茎を生薬として使用します。ほとんどすべてが中国からの輸入品で、毎年500〜700トンが輸入されています。最近は甘草とともに中国の輸出規制問題が持ち上がっています。現在市場に出回っている麻黄の多くは、中国の遼寧、山西、陝西、内蒙古などに自生するマオウ(Ephedra)属植物の地上茎(草質茎)を乾燥したものです。麻黄の乱獲で砂漠化が生じているのです。

麻黄には交感神経の刺激作用のあるエフェドリンが含まれています。エフェドリンは麻酔中の低血圧時などに昇圧目的で使用される古くからある重要な薬剤です。エフェドリンが体に入ると交感神経が刺激されます。交感神経は喧嘩をする状態に導く神経と覚えれば解りやすいです。つまりエフェドリンは「喧嘩モード」にする薬です。血圧は上がる、脈拍は増える、消化管の運動は遅くなる、食欲は低下する、頭が冴える、眠くならない、気管支拡張作用がある、鼻水が止まる、などの効果があるのです。

「エフェドラ」は麻黄の英語名Ephedraですが、その名称でやせ薬として昔は流通していたのです。つまりダイエット薬として販売されていました。しかし、体重減少を来すほど内服すると相当の副作用が生じるので、現在、日本でもアメリカでもやせ薬としての発売が禁止されています。

麻黄は少量でもドーピングに対象になります。スポーツで生計を立てている人は麻黄含有漢方薬を飲まない方がいいでしょう。僕はトライアスロンをやっていますが、スポーツ関係の方には、「ゴールして、審判員の前でパンツを下げて、オシッコを採取する必要がある人は、麻黄剤はダメですよ!」と話しています。

また麻黄は覚醒剤の原料でもあるのです。 エフェドリンはアンフェタミンと類似構造で覚醒剤の一種であるメタンフェタミンの前駆物質なのです。含有量が10%を超えて配合されたエフェドリン、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリンはいずれも覚醒剤取締法の対象になります。

そんな麻黄ですが、生薬麻黄から交感神経刺激作用を有するエフェドリンを見つけたのは長井長義先生(1845〜1929)です。日本薬学会の初代会頭で、東京大学薬学部の教授で、大日本製薬合資会社(後の大日本製薬株式会社、現大日本住友製薬)の技師長を務めてもいます。

また最近は、抗アレルギー剤のアレグラとプソイドエフェドリンの合剤がディレグラと称して販売されています。

麻黄は六陳のひとつです。六陳とは古い方が良品とされる生薬で、呉茱萸、半夏、枳実、麻黄、狼毒、陳皮です。狼毒は『神農本草経』の下品に収載されているサトイモ科の植物ですが、保険適用漢方エキス剤では使用されていません。

麻黄が処方名と関係する漢方エキス剤は麻黄湯、麻黄附子細辛湯、杏甘石湯、杏薏甘湯、桂各半湯、小青竜湯などがあります。青龍は麻黄の別名です。麻黄はエキス製剤の1010分の1に含まれています。

第17改正日本薬局方には以下のように記載されています

 

  • マオウ Ephedra Herb EPHEDRAE HERBA 麻黄
    本品はEphedra sinica Stapf,Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer 又はEphedra equisetina Bunge (Ephedraceae)の地上茎である.
    本品は定量するとき,換算した生薬の乾燥物に対し,総アルカロイド[エフェドリン(C10H15NO:165.23)及びプソイドエフェドリン(C10H15NO:165.23)] 0.7%以上を含む.

 

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麻黄 画像提供:ツムラ