半夏(はんげ)・漢方医による生薬解説29
- 2019.01.05
- 生薬の種類

半夏はサトイモ科の多年草であるカラスビシャクの球茎です。半夏は『神農本草経』の下品収載品で,鎮吐,鎮咳,去痰などに有効とされています。
生薬「半夏」は六陳の一つで,陳旧品が良いとされています。昔は採取後3年を経過しないものは使ってはいけないと言われていました。実際,半夏を試食すると,舌,喉,口腔内がしびれ,腫れて痛み,よだれを流し,口を開けるのが非常に困難になります。そんな時には生姜を飲むと、半夏の副作用が緩和されるのです。ですから半夏を含む漢方薬には生姜または乾姜が一緒に構成生薬として存在します。
第17改正日本薬局方には以下のように記載があります。
- ハンゲ Pinellia Tuber PINELLIAE TUBER 半夏
本品はカラスビシャクPinellia ternata Breitenbach (Araceae)のコルク層を除いた塊茎である
カラスビシャクの球茎からひげ根を抜いたものはいかにもおへそをくりぬいたような形をしているので「へそくり」という別名があります。いくら抜いても生えてくるので農家にとって厄介な畑の雑草でした。つわりの妙薬として有名であった「へそくり」を農家の嫁は堀り集めて、これを薬屋に持っていき、自分だけのお金を作ったのです。これが「へそくり」の語源と言われています。
半夏が処方名と関係する漢方エキス剤は半夏厚朴湯、半夏瀉心湯、半夏白朮天麻湯、苓甘姜味辛夏仁湯、小半夏加茯苓湯などがあります。漢方エキス剤の約5分の1に半夏は含まれています。

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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。