延胡索(えんごさく)・漢方医による生薬解説65

延胡索(えんごさく)・漢方医による生薬解説65

延胡索(えんごさく)

延胡索は同名異種の植物が多く少々混乱しているので、ウチダ和漢薬の『生薬の玉手箱』の一部をそのまま以下に引用します。

原植物について,第12改正日本薬局方までは,韓国産のC.ternataをも含む「その他同属植物」が規定されており,わが国に自生するジロボウエンゴサクC.decunbensやヤマエンゴサクC.linearilobaなども使用されていました。植物の和名としてエンゴサクが使用されていることは,わが国産のこれらの植物が生薬「延胡索」として利用されていた何よりの証拠であると思われます。13局で中国原産の上記植物のみが規定され,昨今はすべて中国からの輸入品が使用されています。

 一方,現在中国では,ジロボウエンゴサクは”夏天無”と称して別生薬として扱われています。C.turtschaninovii forma yanhusuoとジロボウエンゴサクは植物地上部がよく似ており,効能的にも『中華人民共和国葯典』によれば”延胡索”は「活血,利気,止痛」,”夏天無”は「行血活血,通経止痛」とよく似ています。ただ,塊茎の色がジロボウエンゴサクでは類白色で黄色味がまったくなく,その点では韓国産の延胡索も同じです。おそらくこうした点でC.turtschaninovii forma yanhusuoのみが局方に収載されるようになったものと思われますが,塊茎が黄色いという点ではわが国の東北地方や北海道に分布するエゾエンゴサクC.ambigua Cham.et Schlecht.も同じで,代用品としての今後の研究が待たれます。

 生薬の異物同名品については細心の注意が必要で,最近の中国では一物一名が基本になっています。ただ,細かな基源にこだわらず気味が同じであれば同一生薬として利用してきた古代中国人の薬物に関する考え方も,資源の有効利用という観点からは一考する価値があるように思われます。

第17改正日本薬局方には以下のように記載されています。

  • エンゴサク Corydalis Tuber CORYDALIS TUBER 延胡索
    本品は Corydalis turtschaninovii Besser forma yanhusuo Y. H. Chou et C. C. Hsu (Papaveraceae)の塊茎を,通例,湯通ししたものである.
    本品は定量するとき,換算した生薬の乾燥物に対し,デヒドロコリダリン(デヒドロコリダリン硝化物として)0.08%以上を含む.

延胡索は保険適用漢方エキス剤では安中散にのみ含まれています。