釣藤鈎(ちょうとうこう)・漢方医による生薬解説15
- 2019.01.05
- 生薬の種類

釣藤は通例アカネ科のカギカズラでその棘を釣藤鈎として使用しています。カギカズラは日本でも房総半島以南の山林に自生するつる性の植物で、他の植物に絡みついて成長します。そしてカギカズラのとげを釣藤鈎と称して薬用に使用しています。生薬の多くは植物の地下部を使用するものが多く、見ていてあまり面白くありませんが、釣藤鈎はその独特な鈎状の形は1回見ると忘れません。とげが対生しているものを双釣藤、とげがひとつのものを単釣藤とも言う。
釣藤鈎は中国では「鉤藤」や「釣藤鉤」と称されていますが、『神農本草経』に記載はありません。中国のカギカズラは日本とは基原植物が異なるとする論調も多いですが、確かに華鉤藤、披針葉鉤藤、大葉鉤藤、無柄果鉤藤などがあります。
釣藤鈎は釣藤散、抑肝散、七物降下湯などに含まれており、どれも高血圧を有するような高齢者に頻用されています。
釣藤鈎にはリンコフィリンという化学物質が含まれており、骨格筋の収縮や痙攣を抑制し、血管を拡張し、心拍数を減少させるなどの作用が知られています。リンコフィリンはインドジャボクから抽出されたレセルピンと化学構造が類似しています。ちなみにレセルピンは最初に上市された高血圧に対する薬物です。そして抗うつ効果もあります。そんなレセルピンとリンコフィリンの化学構造が似ていることは、抑肝散がうつ病患者さんに喜ばれ、また釣藤散や七物降下湯が高血圧患者さんに喜ばれることに通じます。
釣藤鈎が処方名と関係する漢方エキス剤は釣藤散があります。
第17改正日本薬局方には以下のように記載されています。
- チョウトウコウ Uncaria Hook UNCARIAE UNCIS CUM RAMULUS 釣藤鉤 釣藤鈎
本品はカギカズラUncaria rhynchophylla Miquel,Uncaria sinensis Haviland又は Uncaria macrophylla Wallich (Rubiaceae)の通例,とげで,ときには湯通し又は蒸したものである.
本品は定量するとき,換算した生薬の乾燥物に対し,総アルカロイド(リンコフィリン及びヒルスチン) 0.03%以上を含む.

-
前の記事
桔梗(ききょう)・漢方医による生薬解説14 2019.01.05
-
次の記事
麻子仁(ましにん)・漢方医による生薬解説16 2019.01.05
Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。