知母(ちも)・漢方医による生薬解説80

知母(ちも)・漢方医による生薬解説80

ユリ科のハナスゲの根茎です。『神農本草経』では中品として収載されています。熱を冷ますために使用されました。

第17改正日本薬局方には以下のように記載があります。

  • チモ Anemarrhena Rhizome ANEMARRHENAE RHIZOMA 知母
    本品はハナスゲAnemarrhena asphodeloides Bunge (Liliaceae)の根茎である

以下、ウチダ和漢薬の「生薬の玉手箱」からそのまま引用します。

 昨今,知母の原植物はハナスゲとされていますが,以前は異物同名品が数多く存在した生薬であったようです.本草書に見られる最も古い植物学的記載は,『集注本草』に「形似菖蒲而柔潤葉至難死」とあるもので,また宋代の『図経本草』には,「四月開青花如韮」とあり,これだけの記載では互いに類する植物が多かったのでしょうか,『図経本草』には5種の付図が描かれています.そのひとつ解州(今の山西省南部)知母は花が韮のように散状花序を呈し,また?州(今の安徽省中部)知母の葉は互生で,実が黄精の原植物であるユリ科のナルコユリの仲間のように葉腋にぶら下がって付いていて,地下部も黄精の項の附図と同様です.ハナスゲの葉は根生し,線形で,花は穂状であることから明らかにそれらはまったく異なる植物です.また,現在でも広西,福建,四川省など主に南部地方には「…知母」と名のつく生薬の原植物として,ユリ科のAspidistra属植物,アヤメ科のIris属植物,羊歯植物ウラボシ科のColysis属植物,その他,多数あることが知られています.これらはすべて根茎の形が知母によく似た植物です.また,もともと知母の産地は華北や東北地方であり,南部にはハナスゲが産しなかったことも多くの異物同名品が生じた理由であろうかと思われます.

この記載でも解るように、昔の生薬と今の生薬の同一性を論じることは通常不可能なのです。知母が方名と関係する漢方エキス剤は桂芍知母湯です。

 

059_CHIMO
ハナスゲ 画像提供:ツムラ