附子(ぶし)・漢方医による生薬解説30
- 2019.01.05
- 生薬の種類

第17改正日本薬局方には以下のように記載があります。
- ブシProcessed Aconite Root ACONITI RADIX PROCESSA 加工ブシ
本品はハナトリカブトAconitum carmichaeli Debeaux 又はオクトリカブトAconitum japonicum Thunberg (Ranunculaceae)の塊根を1,2 又は3 の加工法により製したものである.
1 高圧蒸気処理により加工する.
2 食塩,岩塩又は塩化カルシウムの水溶液に浸せきした後,加熱又は高圧蒸気処理により加工する.
3 食塩の水溶液に浸せきした後,水酸化カルシウムを塗布することにより加工する.
1,2及び3の加工法により製したものを,それぞれブシ1,ブシ2及びブシ3とする.
ブシ1,ブシ2及びブシ3は定量するとき,換算した生薬の乾燥物に対し,それぞれ総アルカロイド[ベンゾイルアコニン(C32H45NO10:603.70)として]0.7 〜 1.5%,0.1 〜 0.6%及び0.5 〜 0.9%を含む.本品はその加工法を表示する.
つまり、日局では加工法により「ブシ1」,「ブシ2」,「ブシ3」を区別し,総アルカロイド含量はそれぞれ0.7〜1.5%,0.1〜0.6%及び0.5〜0.9%を含むと規定されているのです。
附子はトリカブトの根です。トリカブトは、その猛毒ゆえに『神農本草経』では当然のように下品に収載されています。そして、よく昔のはなしに登場します。四谷怪談のお岩さんの毒、狂言「ぶす」に出てくる毒などがその例です。附子をそのまま生薬として用いる事は無く、修治と呼ばれる弱毒処理が行われます。ですから、医師より処方される附子を多量に服用しても死亡することはありません。
ただ、多量投与は心臓がドキドキしたり、しびれたりする副作用が生じることがあります。附子は子供では中毒が起こりやすく、お年寄りは起こりにくいと一般的に考えられています。強心、鎮痛作用などがありますが、体を温める作用も強く、また少量の附子を加えると漢方薬全体の効力が増強することがあります。
附子が処方名と関係する漢方エキス剤は麻黄附子細辛湯、桂枝加朮附湯、真武湯、芍薬甘草附子湯、葛根加朮附湯、附子理中湯、桂枝加苓朮附湯、当帰芍薬散加附子などがあります。真武は附子の別名です。

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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。