防風(ぼうふう)・漢方医による生薬解説53

防風(ぼうふう)・漢方医による生薬解説53

防風はセリ科ボウフウの根及び根茎です。『神農本草経』には上品として分類されています。

第17改正日本薬局方には以下のように記載があります。

  • ボウフウ Saposhnikovia Root and Rhizome
    SAPOSHNIKOVIAE RADIX防風
    本品はSaposhnikovia divaricata Schischkin (Umbelliferae)の根及び根茎である.

防風が処方名と関係する漢方エキス剤は清上防風湯、防風通聖散などです。ちなみに多くのメーカーで、清上防風湯ではボウフウではなく、ハマボウフウが使用されています。

防風の異物同名について記載をウチダ和漢薬の『生薬の玉手箱』から以下に引用します。

当時生薬の多くを中国からの輸入品でまかなっていたわが国では、当然のように真物の代用品としての異物同名品が生じました。享保年間に松岡玄達が著した『用薬須知』(1726年)には「升麻防風二味医薬ノ常用ニシテ偽品最モ多シ」と記載され、防風についてはわが国には3種があるとし、正品の防風についても記されていますから、防風の原植物は享保年間の早い時期に伝来していたようです。防風に異物同名品の多いことは江戸時代末期に内藤尚賢が著した『古方薬品考』(1841年)の序文に「唐宋以来、薬物の種類は一千五百種に増え、甚だ多端であり、自ずから優劣、真贋がある。所謂杜衡(トコウ)を細辛と混乱し、防葵(ボウキ)と防風とを混同するような誤りは少なくない」と、当時の生薬の基源混乱の例にあげているほどで、このことは中国から輸入される防風の基源も混乱していたことを示しているようです。日本薬局方においても第二局では防風の原植物はセリ科の Seseli libanotis Koch.オオバノイブキボウフウまたは S.libanotis var. daucifolia Fr.et Sav.イブキボウフウであるとしています。これを「伊吹防風」と称し長いあいだ利用してきましたが、このものは第七局で削除されました。

 防風の良質品は、根が肥大し長く、外皮は薄くきめ細かくしまり、内部は肉が厚く充実し、質が軟らかく慈潤し、外面は淡黄色断面は黄白色で、中心に菊花条のあるものとされます。一方、外皮が粗く、頭部に毛があり、堅い芽のあるものの質は劣るとされます。品質について謝宗万氏は「ボウフウには開花結実するものとしないものの2種があり、前者は根の心が硬くなり’母防風’あるいは’硬防風’と称され、後者は根に水分が多く豊満で、心に菊花状の模様があり’公防風’あるいは’軟防風’と称される。薬用には”公防風”がよく、母防風は一般に取引されない。実際には防風は両性花で公・母の別は無い。花芽がこわれたり形成されなかったりして花が咲かなかったものはすなわち根がやわらかくて充実し品質が良いのである」と述べています。

 いずれにせよ、防風の正品はボウフウの地下部に違いないようですが、現在の日本薬局方には代用品としてハマボウフウの地下部が収載されています。ハマボウフウに由来する防風はわが国ではかなり古くから使用されていたようですが、松岡玄達は偽品であると明記しています。また、ハマボウフウは中国では「北沙参」の原植物であり、防風とは別の生薬として使用されるものです。日中貿易が正常化した現在では、ボウフウ由来の正品が十分量輸入されていますので、あえてハマボウフウを代用する必要はないものと考えられます。

 

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ボウフウ 画像提供:ツムラ