麦芽(ばくが)・漢方医による生薬解説99
- 2019.01.12
- 生薬の種類

麦芽とはモルトで、イネ科のオオムギを発芽させたものです。オオムギの実(穎果)を収穫後,水に浸して発芽させたものを麦芽といいます。麦芽がでんぷんを分解する性質を生かし,もち米に麦芽を加え水飴が作られていました。この水飴を乾燥させたものが大建中湯などに配剤されるコウイ(膠飴)です。麦芽を含む漢方薬は半夏白朮天麻湯です。
第17改正日本薬局方には以下のように記載されています
- バクガ Malt FRUCTUS HORDEI GERMINATUS 麦芽
本品はオオムギ Hordeum vulgare Linné (Gramineae)の成熟したえい果を発芽させて乾燥したものである.
ちなみに麦芽(モルト)利用したのがビールです。ビールは酵素を生かしたベースモルトと色風味付けのためのスペシャリティーモルトの2種類の麦芽を混ぜ,これらを粉砕して50℃程度に保温すると,アミラーゼの作用によりデンプンが分解され麦芽糖などを多く含む麦汁ができます。この麦汁にビール酵母を加え発酵することで,エタノール,すなわちアルコールが作られ,ビールになるのです。一方,日本酒はコウジカビによって米のでんぷんを分解して醸造されます。

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Author:新見正則 投稿一覧
1985年慶應義塾大学医学部 卒業 1998年英国オックスフォード大学医学部博士課程 移植免疫学にてDoctor of Philosophy (D-Phil) 取得 2002年帝京大学外科准教授 2013年ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞。帝京大学医学部附属病院において国内で初めて保健診療のセカンドオピニオン外来(外科一般)を開設し、その普及に尽力してきたパイオニア。テレビや新聞などメディアでの紹介も多数。西洋医であるとともに漢方医でもあり、同科血管外科グループにおいて血管、漢方、未病、冷え症の各外来を担当。日常生活や食生活の改善指導、西洋薬・漢方薬の処方により、多くの患者の症状を改善してきた実績を持つ。