漢方医の工場見学記〜ツムラ深圳工場〜

漢方医の工場見学記〜ツムラ深圳工場〜

成田から飛行機に5時間ほど乗り、香港に到着しました。向かうは中国本土の深圳です。深圳は香港の隣で、昔は人口3万人漁師町だったそうです。それが今や中国のシリコンバレーと言われます。超大都会に変貌しているのです。

翌日、この深圳旅行最大の目的である深圳ツムラの見学が始まります。昨日船で着いた蛇口港のやや北に深圳空港があり、そのそばに深圳ツムラ工場があります。

深圳津村薬業有限公司

深圳ツムラ工場には、白い工場が5棟建っていました。敷地面積は約10万平方メートルだそうです。約600人の中国の方が働いていて、そして日本人は6人です。1棟が管理棟、1棟が工場棟、3棟が倉庫棟です。ツムラの茨城工場とほぼ同じ大きさです。

管理棟の6階で動画やスライドで深圳ツムラの概要を説明してもらいました。そして1階にある漢方記念館の見学です。ツムラの茨城工場内にも漢方記念館がありますが、そこを小ぶりにしたイメージです。僕はこちらの方が楽しかったです。本物と偽物の生薬がいつくも並べてあったり、優良品と普通品の生薬が並べてあったり、生薬好きとしてはたまらない勉強ができました。

日本で製造されているツムラの生薬の半分以上がこの深圳ツムラから供給されているのです。この深圳ツムラの役割は、優良品とされている生薬を中国中から集めて、そして金属や人の髪の毛などを除去し、優良品の中に混在する不良品を選別し、梱包して日本に送ることです。そして農薬や有害な薬物の検査も行います。そんな工程をすべて拝見しました。工場内は撮影禁止なので、外観と事務室内の風景のみ撮影してきました。

不純物をすべて除去して優良品のみの生薬を日本に出荷することが、深圳ツムラ工場の役目です。生薬は一度茨城の石岡倉庫に集荷され再度農薬などの検査が行われ、その後ツムラ茨城工場と静岡工場に輸送されます。そこで生薬からエキス剤を作る工程が行われています。深圳ツムラ工場から、いくつかの生薬は上海ツムラ工場に運ばれ、ここでもエキス剤となる前段階までの加工を行っているそうです。そして石岡倉庫に出荷されます。そしてそこから茨城工場と静岡工場で最終段階の工程が施行されます。

工場は2階建てで、1階に5ライン、2階にも数ラインが整備されています。ライン毎に選別が行われるのです。最初はふるいに掛けます。振動を利用して不純物を除去します。次に、風力で不純物を除去します。その後は目視です。4から6人のエキスパートがベルトコンベア上を流れる生薬を目視で検査し、不純物と不良品を手で除去します。経験豊富な人ほど後ろに配置されます。これだけ機械技術が進歩していますが、最終工程は「人」で行っています。この「人」達が深圳ツムラの最高の財産だと教えて頂きました。

この選別工場は早朝から深夜まで2交代制で稼働しています。この工場をフル回転させるために、選別前の生薬を貯蔵する倉庫、そして選別後の生薬を貯蔵する倉庫、そして広い中国から、遠方の産地から工場に集荷する段取り、選別後の生薬を日本に輸送する手配などをすべて管理しているのです。凄いですね。

工場へ集める方法はトラックです。上海ツムラ工場への出荷には鉄道も利用するそうです。日本への出荷は99%以上が船で、特別に急を要するときは例外的に飛行機での輸送も行うそうです。

深圳ツムラ工場では甘草と麻黄、そして附子は扱っていません。甘草は基本的に野生品で、中国政府が一括管理しているそうです。麻黄は栽培品ですが覚醒剤の原料になるので別の意味で中国政府が管理しています。附子は取り扱い申請をしていなので扱っていないそうです。和漢(日本の漢方)の3/4に含まれている甘草を中国政府が握っているのは中国としてはとても賢い戦略と思っています。

ホテルの窓から見えた118階建て約600メートルの高さを誇る超高層ビルは平安生命の本社ビルでした。平安生命はPATのひとつです。Pは平安生命、Aはアリババ、Tはテンセントで、中国の巨大民間企業3社です。この平安生命が実は株式会社ツムラの筆頭株主です。

中国好きになった僕にはこの戦略はとても的を得ていると思っています。ビジネスマンの友達に、「お金はいつ、誰から、どうやってもらうか」が大切と教わりました。つまり日本での保険適用漢方エキス剤は社会奉仕と割り切って事業展開すればいいと僕は思っています。お金は日本の10倍以上の人口を誇る中国の漢方市場と、日本では薬局で売るOTCから得ることが、僕が思い描く戦略です。

そんなことを改めて感じた深圳ツムラ工場見学でした。

過去の工場見学記はこちら

漢方医の工場見学記〜株式会社ツムラ・茨城工場〜

漢方医の工場見学記〜ウチダ和漢薬・新潟工場〜