甲状腺疾患についてわかりやすく解説【西洋医×漢方医のコラム】

甲状腺疾患についてわかりやすく解説【西洋医×漢方医のコラム】

甲状腺の病気について、短くて解りやすいお話しをします。

甲状腺のはたらき

甲状腺は首の前面にある蝶形の臓器です。甲状腺からは甲状腺ホルモンが出ます。甲状腺に甲状腺ホルモンを出すように命令するホルモンは脳にある下垂体から分泌されるTSH(甲状腺刺激ホルモン)です。甲状腺ホルモンは内服で効果があります。そしてもちろん保険適用医薬品です。ですから、甲状腺は全部摘出しても適切に甲状腺ホルモンを内服すれば命に別状はありません。

甲状腺ホルモンはT3とT4があり、またTSHも測定可能です。つまり甲状腺ホルモンが過剰であれば甲状腺機能亢進症、甲状腺ホルモンが低下していれば、甲状腺機能低下症と簡単に診断ができます。そして治療も低下症であれば、チラージンという合成T4製剤を内服すればいいのです。また機能亢進症であれば、甲状腺の切除、アイソトープや薬剤による治療などが選択できます。つまり適切に対処すればまったく健康に生活を送ることができる病気です。

甲状腺外科の巨塔であるコッハーは1909年にノーベル賞を受賞しています。全身麻酔は1850年代には普及し始め、そして最初の胃癌の手術はビルロートが1881年に世界で最初の胃癌の手術を行いました。切除された胃はウイーン大学の医学博物館に展示されています。そしてコッハーは甲状腺の手術を1900年代初頭に5000例以上行い、死亡率を20%から1%以下にしました。

甲状腺疾患の症状

甲状腺の機能亢進症はバセドウ病とも呼ばれ、①甲状腺腫、②眼球突出、③頻脈が三大症状です。他にも新陳代謝が亢進するので、多汗、暑がり、食欲亢進、でも体重減少となります。手足が震えたり、倦怠感も生じます。しかし、医療従事者でも自分のバセドウ病を見逃すこともあるほど、よく知られていながら、見逃されていることもある病気なのです。つまりすべての症状が出れば、医療従事者なら誰でも診断可能ですが、全てが揃わないとき、倦怠感しか感じないときなどはなかなか診断に辿り着きません。

橋本病は、甲状腺の炎症性疾患です。甲状腺の機能低下症は、橋本病の10〜30%で生じます。残りの70%近くは甲状腺機能がほぼ正常な橋本病です。

甲状腺機能低下の症状は、むくみ、皮膚のカサカサ、汗の減少、髪の毛の減少、寒がり、食欲がないのに体重増加、便秘、脈が遅くなる、無気力、筋力の低下、肩こり、月経異常、流産なども起こります。

甲状腺機能低下症も実は見逃されています。これもすべての症状がそろえば医療従事者であれば誰もが診断できそうですが、すべてが揃わないことが多いのです。むしろ全てが揃うことはよほどの甲状腺機能低下状態です。ですから疑えばいいのです。

甲状腺疾患への対処

甲状腺機能亢進症でも、甲状腺機能低下症でも疑えば、やることは一つです。採血です。甲状腺ホルモンのT3とT4、そして甲状腺刺激ホルモンのTSHを測定します。保険適用の関係で3つの採血は不可のことがあり、そんな時はTSHだけを測定すれば十分です。TSHは甲状腺刺激ホルモンですから、甲状腺機能が低下していれば、もっと頑張れ!という司令を送るので上昇します。甲状腺機能が亢進していれば、甲状腺を刺激する必要がないので、TSHは低下します。

わたしたちができること

甲状腺疾患は相当数が見逃されています。ですから、人間ドックや不調で医療機関を受診したときは、TSHの採血がされているかを確認しましょう。そして異常があれば、専門家に相談しましょう。それだけのことで、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症から解放されます。

甲状腺の病気に直接有効な漢方薬はありません。頻脈には炙甘草湯(しゃかんぞうとう)が効きます。また倦怠感には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)で対応します。食欲不振には六君子湯(りっくんしとう)が効きます。補完医療としては、漢方は相当有効です。

また、海外の怪しい、しかしよく効くやせ薬には動物の甲状腺末を混ぜている物があります。甲状腺機能亢進症状態を作って、その病気の結果として痩せているのです。決して手を出さないで下さいね。