「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2018」参加レポート

「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2018」参加レポート

2月5日、東京のKKRホテルで開かれた「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2018」に参加してきました。製薬会社を超えて、医療全体として和漢(日本の漢方)を啓蒙・普及しようというための研究会です。

基調講演が日本医師会長の横倉義武先生で「高齢社会における漢方」という演題でした。

講演は高知大学の花崎和弘先生による「漢方製剤の薬物動態研究」、そして大阪大学の萩原圭佑先生による「フレイル・サルコペニアにおける漢方補腎剤の分子薬理機序について」でした。そして研究報告は東京大学の康永秀生先生の「大規模データを用いた漢方製剤のアウトカム評価および費用分析」でした。

実は僕は、東京大学の康永秀生先生がここで発表した内容のビッグデータを用いた大規模研究班の班員なのです。そんなご縁もあって参加した研究会です。

2017年3月に国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会から出された提言書の概要は以下です。

提言1 がんの支持療法および高齢者のフレイルに対する医療における漢方製剤等の必要性

◆がん支持療法、高齢者のフレイルに対して、漢方製剤は必要不可欠である

提言2 漢方製剤等に係る研究の推進

◆がん支持療法・高齢者疾患に対する漢方製剤のエビデンスを加速化する

◆医療保険財政において非常に重要である医療経済学的研究の推進

◆新規領域・疾患への応用研究(化学療法や手術後の投与方法等の研究および臨床試験)

◆研究支援体制の構築と研究費支援が必要

◆エビデンスに基づき診療ガイドラインに漢方が掲載され、治療上において推奨されることが必要

提言3 漢方製剤等の品質確保と安定供給に向けた取り組み

◆多成分系医薬品である漢方製剤等に関する「リポジショニングや新剤型等のための品質保証および承認申請に資するガイドライン」の整備を目指す

◆原料生薬の安定確保に向けた国内栽培を推進する

提言4 医療保険制度における位置づけ

◆基礎的医薬品として位置づけ、薬価の安定化策を講じる

提言5 日本オリジナルの薬剤(Made in JAPAN)である漢方製剤の海外展開の推進

◆アジアをはじめ世界に発信し国際展開を推進する

提言6 産官学・国民との連携

◆漢方製剤等の課題解決にあたっては、産官学・国民が連携し、多くの国民(患者)に内容を公表・説明しながら進める

こんな提言に沿いながら、本日はどれも素晴らしい発表でした。そして西洋医学に引けを取らないエビデンスが大切で、生薬の確保が必要で、そして世界に発信することが大切という内容です。

なんと中国は2018年5月に肝臓癌に対する抗がん新薬の研究を、なんと超一流英文誌GUTの電子版に掲載しました。そして2018年11月GUTの印刷版にもこの論文は登場しました。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=huaier+gut

1000例の肝臓癌患者を無作為(ランダム)に2群に分けて、そして再発率や予後を研究したものです。これでフアイアという中国の抗がん新薬は、明らかなエビデンスを手に入れました。そして、他の領域、大腸癌、肺癌、乳癌、などで複数のランダム化臨床試験が現在進行中です。ランダム化臨床研究はあらかじめ施行することを公表する必要があるのです。ですから世界中で今どんな臨床研究が進行中かがわかるのです。残念ながら、本邦の生薬や漢方薬で抗がん作用を確かめるランダム化試験はまだ行われていません。そして、このフアイアは槐の老木に生えるキノコですが、すでに中国では取り尽くされ、なんと菌糸体から工場ですべて生産されているのです。原材料の確保が不要な生薬ベースの抗がん新薬なのです。工場ですべて製造できる生薬です。つまり土壌や水質等の良し悪しに左右されない均質な生薬の提供が可能になるというわけです。和漢でも同じように明らかなエビデンスを有して、工場で生産可能な新しい薬剤が登場することを願うばかりです。