漢方薬の「製品番号」その意味は?【漢方専門薬剤師が執筆】

漢方薬の「製品番号」その意味は?【漢方専門薬剤師が執筆】

漢方薬を処方されたり、薬局で購入すると、製品名の隣や下に番号が書いてあるのにお気づきでしょうか? この「製品番号」がメーカーによって違うことがある場合があります。なぜこのようなことが起きるのか、調べてみましたのでご紹介します。

製品番号に意味や関連はある?

保険適用漢方処方は、全部で148処方あります。内服薬147処方+紫雲膏。このうち、ツムラで製造している漢方処方はエキス剤128処方+紫雲膏です。

ツムラの漢方エキス剤は1番から138番まであります。しかし、4,13,42,44,49,94、129、130、131、132は欠番です。葛根湯(TJ-1)と升麻葛根湯(TJ-101)、八味地黄丸(TJ-7)と六味丸(TJ-87)と牛車腎気丸(TJ-107)、小柴胡湯(TJ-9)と小柴胡湯加桔梗石膏(TJ-109)、半夏厚朴湯(TJ-16)と茯苓飲合半夏厚朴湯(TJ-116)、五苓散(TJ-17)と茵蔯五苓散(TJ-117)、小青竜湯(TJ-19)と苓甘姜味辛夏仁湯(TJ-119)、桂枝茯苓丸(TJ-25)と桂枝茯苓丸加薏苡仁(TJ-125)のように関連がありそうな番号が付けられているものもあります。

また、ツムラのパッケージの色は下一桁の番号で色が決まっています。そして、横帯が10番、太い横帯が50番を表しています。例えば、防風通聖散(TJ-62)は、太い横帯1本(50)+横帯1本(10)+緑(2)で、62番を表しています。

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保険適応処方薬の防風痛聖散(ツムラ)の包装

 

メーカーによって製品番号は様々

さて、漢方製剤の1番といえば、葛根湯を思い浮かべるのではないでしょうか。ツムラもクラシエも1番です。ところが、東洋漢方製薬(東洋)の1番は安中散で、葛根湯は13番です。三和生薬(三和)の葛根湯は17番です。同じ漢方製剤の中で番号が一致していないのはなぜでしょうか。

日経ドラッグインフォメーションの記事によれば、商品名と番号が一致しない漢方エキス製剤は非常に多いといいます。漢方製剤ごとに屋号と漢方薬番号を一覧にしてみると、想像以上に番号に多様性があります。東洋と三和が違う番号を付けているものが多く、それ以外にも茵蔯蒿湯はクラシエだけが402番で、ツムラなどは135番だったりします。

当初は製品番号はなかった

日本薬史学会『薬史学雑誌』の「日本の漢方製剤産業の歴史」(薬史学雑誌 2015;50:1-6.)、日本薬科大学薬学部漢方薬学分野教授の新井一郎氏による総説に、漢方エキス製剤の歴史が語られています。新井一郎氏は、1979年富山大学薬学部製薬化学科卒業。82年富山医科薬科大学大学院医療薬科学研究課程(前期)修了し、98年博士号(薬学)を取得しました。1982年よりツムラで研究に従事。2014年より日本薬科大学薬学部漢方薬学分野教授との経歴です。以下、新井氏の論文を要約すると…

漢方エキス製剤を初めて市販したのは小太郎漢方製薬(小太郎)で、今から半世紀以上前の1957年に遡ります。当時は医療用・一般用製剤の区別はなく、漢方薬番号もなかったようです。1967年には、医療用医薬品と一般用医薬品の承認申請が別々に行われることになりました。

小太郎の十味敗毒湯、葛根湯、五苓散、当帰芍薬散などの漢方エキス製剤が薬価基準に収載され、初めての医療用漢方製剤となりました。やがて、1974年には津村順天堂(現ツムラ)が医療用漢方製剤29処方の販売を開始します。その2年後の1976年に医療用漢方製剤が大量承認されました。小太郎の21処方、ツムラの33処方が一挙に薬価収載され、これ以降、複数のメーカーから漢方エキス製剤の申請が続きました。1976年は、 “漢方エキス製剤元年”とも呼ばれています。

製品番号は、漢方薬を書かずにすませる方法だった

漢方薬の名称には普段使わない漢字も多く使われており、全て正確に漢字で書くのは至難の業です。当時、処方医から「製剤名が書けない」「書くのが面倒」という声があり、メーカーは漢方製剤名のハンコを作って配布していたそうです。また、同時に番号を書くだけの方が早いという医師も多かったことから、漢方製剤番号が使われるようになりました。「日本で漢方エキス製剤が広く使われるようになった最大の要因として、漢方製剤番号を付けたことが挙げられる」と新井氏は指摘しています。

その番号は、もともと各社が、それぞれ異なる番号を付けていたが、シェアを伸ばしていたツムラに他社がそろえていきました。ツムラよりも先に販売を開始していた小太郎も、1994年頃からツムラにそろえるようになったそうです。そのツムラの番号は、というと、ツムラの研究者だった小根山隆祥氏が実験ノートに付けていた番号だといいます。小根山氏のインタビュー記事(月刊漢方療法 2003;11:568-76.)に以下の記載があるそうです。以下、日経DI記事より引用します。

 また現在の漢方製剤の製品番号は、当時、研究していた時の私の実験ノートにつけていた番号なのですよ。

 一番は葛根湯、二番は、葛根湯加川きゅう辛夷、三番は乙字湯。そして四番は私は桂枝加芍薬大黄湯としていたのですが、四は死番だということで欠番となり、五番が安中散……と続くわけですね。ちなみに桂枝加芍薬大黄湯は現在一三四番です。それが今ではカネボウさんでも小太郎さんでも各社全部が同じ番号を使っています。

(略)

 順番が系統的ではなくバラバラだから覚え難いと皆さんからよく文句を言われたものです(笑い)

茵蔯蒿湯は、もともとツムラが42番を付けていましたが、縁起が悪いとして135番に変更、クラシエは4と2の間にゼロを入れて402番に変更したという説があるそうです。

ツムラの128処方については、新見正則の「実践3秒ルール 128漢方処方分析 (3秒でわかる漢方ルール) 単行本 – 2016/3/1」をご覧ください。

ツムラで製造していない19処方とは

下記に処方名を記します。

<処方名(ふりがな)  メーカー名(製剤番号)>

  1. 黄芩湯(おうごんとう)  三和(35)
  2. 葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)  三和(7.141)*
  3. 甘草湯(かんぞうとう)  クラシエ(401)
  4. 桔梗石膏(ききょうせっこう)  コタロー(324)
  5. 芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)  太虎堂(230)
  6. 九味檳榔湯(くみびんろうとう)  コタロー(311)
  7. 桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)  東洋(26)
  8. 桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)  東洋(27)
  9. 桂枝加厚朴杏仁湯(けいしかこうぼくきょうにんとう)  東洋(28)
  10. 桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)  クラシエ(18)
  11. 桂芍知母湯(けいしゃくちもとう)  三和(180)
  12. 桂麻各半湯(けいまかくはんとう)  東洋(37)
  13. 梔子柏皮湯(ししはくひとう)  コタロー(314)
  14. 芍薬甘草附子湯(しゃくやくかんぞうぶしとう)  三和(5)
  15. 四苓湯(しれいとう)  大杉(140)
  16. 大柴胡湯去大黄(だいさいことうきょだいおう)  コタロー(319)
  17. 腸癰湯(ちょうようとう)  コタロー(320)
  18. 当帰芍薬散加附子(とうきしゃうやくさんかぶし)  三和(29)
  19. 附子理中湯(ぶしりちゅうとう)  三和(410)

*製造は三和、三和で販売のものはS-7、大杉で販売のものはSG-141

<メーカー正式名称>

大杉:大杉製薬株式会社

クラシエ:クラシエ薬品株式会社

コタロー:小太郎漢方製薬株式会社

三和:三和生薬株式会社

太虎堂:太虎精堂製薬株式会社

東洋:株式会社東洋薬行

参考資料)

新見正則:実践3秒ルール 128漢方処方分析 (3秒でわかる漢方ルール). 新興医学出版社. 2016.

日経ドラッグインフォメーション記事:漢方製剤番号のナゾ、解決しました!(2016/8/23)

日本薬史学会『薬史学雑誌』の「日本の漢方製剤産業の歴史」(薬史学雑誌 2015;50:1-6.)