台湾の漢方薬メーカーがCOVD-19治療でアメリカ進出!【中山今日子先生寄稿】
- 2020.06.15
- コラム

緊急事態宣言の東京アラートが解除された今日、Taiwan Todayに本日投稿された記事に驚きました。
“中華民国中医師公会全国聯合会(中華民国漢方医同業組合全国連合会)が10日に開いた記者会見で、黄芩などの漢方薬材が新型コロナウイルス(COVID-19)の治療に有効であることを発表した“だけだはなく、なんと、漢方薬メーカーが米国へ販売進出すると言うのです。
〜漢方と西洋医学併用の形で患者21名を治療、味覚障害などの症状を改善すると共に入院期間を短縮します。〜
漢方と西洋医学を併用して、漢方医は直接患者に触れないで新型コロナウイルスの治療にあたります。そして、主に患者を軽症、重症、重体、回復期の4つに分けて治療します。今回は合計21名の患者を治療しました。内訳は重体が1名、重症が5名、軽症が15名です。漢方薬の服用を始めると約8日後には隔離が解除出来、薬への拒絶反応も現れなかったそうです。
〜漢方薬を飲んだ患者は発熱や咳、たん、筋肉痛、下痢、食欲不振などの症状が緩和されたほか、味覚障害の改善もみとめられており、軽症者に対しては入院日数を減らせる可能性がある。(彰化基督教医院中医部の黄頌儼主任)〜

「新型コロナウイルスに対する漢方医学の段階的治療ガイドライン」による漢方の使い方
1.感染者を軽症、重症、重体、回復期の4種に分類し治療を分ける
2.三種類の漢方薬を用いる
① ウイルスに対抗する漢方薬の板藍根、魚腥草、黄芩
② 免疫を調整する漢方薬の石膏、綿茵陳、黄芩
③ ①②に、支持療法用として体質強化、循環促進、胃腸機能強化のための漢方薬を合わせる。
板藍根:抗ウイルス作用があることから、C型肝炎治療薬や風邪薬として台湾ではよく使われるそうです。日本では健康食品として流通していて、冬になると板藍根入りののど飴などがよく売られています。
魚腥草:ドクダミの全草で、十薬ともいいます。消炎、利尿、解毒剤。台湾ではよく使われるそうです。
綿茵陳:現在、『中華人民共和国薬典』(1995年版)には、「茵陳」の名でハマヨモギとカワラヨモギの乾燥した地上部が収載され、両者はごく近縁な植物で、春季に採集した幼苗を「綿茵陳」、秋季花蕾の成長時に採集し、老茎を除いたものを「茵陳蒿」として区別しています。気味は前者が清香、微苦。後者が芳香、微苦とわずかに違いますが、同様に使用されているようです。(ウチダ和漢薬 生薬の玉手箱より抜粋)
黄芩:シソ科のコガネバナの根を乾燥したものです。コガネバナという名前は、根が黄色いことから名付けられたもので、花の色は青~紫色をしています。消炎、清熱などの効能があり、炎症や熱性疾患、下痢、腹痛、黄疸などに用いられています。
石膏:天然の含水硫酸カルシウムを主とする鉱物です。清熱、止渇、沈静の効能があり、熱性疾患にみられる高熱や口渇、炎症のあるむくみや痒みなどに用いられます。
新型コロナウイルスに対する漢方の配合剤は煎じ薬のほか、漢方製剤も92%の効果が認められている。今回、開発された漢方薬は「台湾清冠一号」と命名され、5月には漢方薬メーカーにライセンスが供与されています。
台湾では感染が収まりつつあるため、各国の感染対策を支援できるよう、感染拡大が深刻な外国への輸出が計画されています。処方に際しては多くの国で毒劇物とされ使用が制限されている麻黄などは取り除きます。開発された新型コロナウイルスに対する漢方配合剤の特許と「台湾清冠一号(TAINOCOVIR)」、「福爾摩沙一号(FORMOCOVIR)」の商標の申請も行われています。
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日本では、日本感染症学会のH Pに次の2つの寄稿文が掲載されています。
- (特別寄稿)COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方(改訂第2版)
小川恵子先生(金沢大学附属病院漢方医学科)
- (寄稿)中国におけるCOVID-19に対する清肺排毒湯の報告
有田龍太郎先生(東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科)
清肺排毒湯は、COVID-19に対する中医薬として創薬されました。
構成⽣薬:⿇⻩(まおう)9g、炙⽢草(しゃかんぞう)6g、杏仁(きょうにん)9g、⽣⽯膏(しょうせっこう)15〜30g、桂枝(けいし)9g、沢瀉(たくしゃ)9g、猪苓(ちょれい)9g、⽩朮(びゃくじゅつ)9g、茯苓(ぶくりょう)15g、柴胡(さいこ)16g、⻩芩(おうごん)6g、姜半夏(きょうはんげ)9g、⽣姜(しょうきょう)9g、紫菀(しおん)9g、冬花(とうか)9g、射⼲(やかん)9g、細⾟(さいしん)6g、⼭薬(さんやく)12g、枳実(きじつ)6g、陳⽪(ちんぴ)6g、藿⾹(かっこう)9g
中医学では服用量が多いです。石膏15gで合計196g、石膏30gで合計211gとなります。3日をワンクールで処方するそうです。
日本のエキス剤で代用すると、下記の様になります。
麻杏甘石湯+胃苓湯+小柴胡湯加桔梗石膏 左 3 剤を一緒に服用
70 歳以上は成人 1 日量の 2/3-1/2
参考:中国の診療ガイドライン「新型コロナウイルス肺炎診療ガイドライン (試行第 7 版) 」
日本東洋医学会では、この清肺排毒湯を安易に使わないように注意喚起をしています。
http://www.jsom.or.jp/medical/notice/pdf/covid-attention-medical.pdf
また、柴葛解肌湯が、1918~1920年にスペイン風邪(インフルエンザ・パンデミック)が流行した際、初期から高熱を出す患者に処方して多くの人命を助けたと言われています。小川先生も寄稿文の中で紹介している処方です。
66 柴葛解肌湯(一般用漢方製剤製造販売承認基準:厚生労働省)≪浅田家方≫
〔成分・分量〕 柴胡3-5、葛根2.5-4、麻黄2-3、桂皮2-3、黄芩2-3、芍薬2-3、半夏2-4、
生姜1(ヒネショウガを使用する場合1-2)、甘草1-2、石膏4-8
*柴葛解肌湯(さいかつげきとう)=葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏
〔用法・用量〕 湯
〔効能・効果〕 体力中等度以上で、激しい感冒様症状を示すものの次の諸症:
発熱、悪寒、頭痛、四肢の痛み、口渇、不眠、鼻腔乾燥、食欲不振、
はきけ、全身倦怠
柴葛解肌湯エキス細粒G「コタロー」(第2類医薬品:添付文書)
処方解説(小太郎漢方製薬株式会社HP)
残念ながら、日本感染症学会からでている最新の<COVID-19 に対する薬物治療の考え方第4版>において、漢方薬の記載はありません。
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Taiwan Todayの記事はこちらから全文をご覧いただけます。
≪漢方薬の黄芩などが新型コロナ治療に有効、製薬会社は年内の米国進出目指す≫
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