新型コロナウイルスの中医学治療【北京中医薬大学 崔衣林先生寄稿】

新型コロナウイルスの中医学治療【北京中医薬大学 崔衣林先生寄稿】

4月15日、日本中医薬研究会主催で、天津中医薬大学張伯礼学長をお招きし、オンライン交流会が行われ、日本の医師や薬剤師、鍼灸師など計730名が参加されました。張伯礼学長は72歳とご高齢ながらも、中国で新型コロナウイルスが猛威を振るいはじめた1月末に、中国国家衛生部(日本の厚生労働省にあたる)の中央指導員として武漢の第一線に2か月間滞在され、新型コロナウイルスの治療を行われました。今回はその経験をご講演くださり、そして日本の医師たちによる質疑応答が行われました。その中で張学長が特に強調されたのは中西結合医学は西洋医学のみに比べ、効果が優れ、張校長が担当された病院の患者567例では死亡率0、重症化0、再発率0だったことでした。

武漢にて見られた新型コロナウイルス患者の舌苔は白く、厚いのが目立ちます。その他の症状や四診から、湿毒疫であると判断しました。治療においては、「三薬三方」、3つの中成薬と3つの処方を主として用いました。3つの中成薬は金花清感顆粒、連花清瘟顆粒、血必浄注射液で、3つの処方は清肺解毒湯(宣肺透邪、清熱化湿、健脾化飲)、化湿敗毒方(解毒化湿、清熱平喘)、宣肺敗毒方(宣肺化湿、清熱透邪、瀉肺解毒)で、湿毒に対する中薬が多く用いられているのがわかります。

では、中薬がどれだけ効果があるのでしょうか?以下、国家診療マニュアルにも採用されている金花清感顆粒(麻杏甘石湯と銀翹散の合方)を用いたRCT試験データをまとめました。このデータは今回、実際武漢にて集められた臨床データです。

1)解熱が早い

西洋薬の対象群と比較し、金花清感顆粒は解熱時間を短縮(1.5日VS 3日)させ、統計的に有意差が見られる(p<0.05)。

2)重症化率の低下

西洋薬の対象群と比較し、金花清感顆粒は重症化率を低下(11.8% VS 29.4%)させ、統計的に有意差が見られる(p<0.05)。

3)白血球とリンパ細胞の回復率が上昇

西洋薬の対象群と比較し、金花清感顆粒は白血球の回復率を上昇(90.2% VS 80.4%)させ、統計的に有意差が見られる(p<0.05)。リンパ細胞の回復率も上昇(74.5% VS 64.7%)させ、統計的に有意差が見られる(p<0.05)。

4)PCR検査が陰性となる時間を早める

西洋薬の対象群と比較し、金花清感顆粒のPCR検査が陰性となる日数(7.27±3.71日)は、対象群のPCR検査が陰性となる日数(9.80±4.37日)を比較すると明らかに短縮している。統計的に有意差が見られる(p<0.05)。

5)肺炎の滲出物の吸収を促進

胸部CT肺炎の滲出物吸収とその回復時間を指標とし、西洋薬の対象群と比較すると、治療群(8.00±3.71日)は対象群(10.31±4.99日)を比較すると滲出物吸収とその回復時間は明らかに短縮している。統計的に有意差が見られる(p<0.05)。

以下、各組織が公開している診療マニュアルからまとめましたので、ご紹介させていただきます。

国家衛生部より:

  分類 症状 治療
医学観察期 臨床所見① 疲労感、胃腸症状 藿香正気散
臨床所見② 疲労感、発熱 金花清感顆粒

連花清瘟顆粒

疏風解毒顆粒

防風通聖散

臨床治療期 初期:

寒湿鬱肺

悪寒発熱あるいは無熱、乾咳、口渇、倦怠感、胸悶、脘痞、嘔気、下痢。舌淡または淡紅、苔白膩、脈濡。 蒼朮15g,陳皮10g,厚朴10g,藿香10g,草果6g,生麻黃6g,羌活10g,生姜10g,檳榔10g
中期:

疫毒閉肺

身熱不退あるいは寒熱往来、咳嗽、痰少あるいは黄痰、腹張便秘。胸悶気促、喘息、体動時気喘、舌紅、苔黄膩あるいは黄燥、脈滑数。 杏仁10g,生石膏30g,瓜蒌30g,生大黄6g,麻黄6g,葶藶子10g,桃仁10g,草果6g,槟榔10g,蒼术10g
重症期:

内閉外脱

呼吸困難、易頻呼吸あるいは補助換気適応、神昏を伴う、煩躁、発汗にして手足冷い。舌紫暗、苔厚膩あるいは燥、脈浮大無根。 人参15g,附子10g,山茱萸15g
回復期:

肺脾気虚

息切れ、倦怠感、食欲不振嘔気、痞満、大便無力、軟便、舌淡胖、苔白膩。 半夏9g,陈皮10g,党参15g,黄芪30g,茯苓15g,藿香10g,砂仁6g

 

中国鍼灸学会より:

効果 穴位 方法 頻度
免疫力向上 足三里、気海、中脘 艾灸 午後1回
症状改善と安神 合谷、太衝、足三里、神闕 艾灸 午前午後各1回
補肺脾気 大椎、肺兪、膈兪、足三里、孔最 艾灸 毎日1回

 

中国中医科学院鍼灸研究所より:

1艾灸療法
弁証 症状 選穴 操作法
補気温陽 症状なし、感染者と接触 関元、命門、足三里 按摩、艾灸
宣肺理気 咳嗽、気喘、胸詰まり 合谷、尺澤 拍打法
補肺化痰 軽症、回復期、痰がある 肺俞、膏肓俞 艾灸、掌で叩く
調理脾胃 軽症、腹脹、便秘、下痢、食欲不振 中脘、神闕、天樞、足三裏 腹部は按揉法

足三里は按法

温陽散寒 軽症、冷え性、倦怠感 大椎、命門、関元 艾灸

※お灸は一度に3-5穴、毎穴10-20分、毎日もしくは2日に一度行う。

2耳ツボ療法
治療法 操作法
蛟龍搗海 両手の中指を耳甲腔に合わせ、ゆっくり呼吸しながら回していく。右と左周り各8回ずつ行う。
天池蕩舟 食指を耳甲艇に合わせ、下から上へ按摩する。前半は息を吸い、後半は息を吐く。8回行う。
喜鵲點頭 拇指と食指で前後から神門を按揉する。耳屏內側の皮質下と外側の枕部を按揉する。食欲不振には胃を加える。各1分ずつ、一日3回ずつ行う。両耳同時に行う。

 

北京中医薬大学より:

1.薬膳

①山薬とヨクイニンのお粥:山薬、ヨクイニン適量。

②大根茶:白大根100g、氷砂糖15gを煮てお茶替わりに飲む。

2.鍛錬

①過労や夜更かしは避ける 。

②適度な運動:五禽戲、八段錦

3.予防の漢方薬(谷曉紅教授提供)

①成人:

生黄芪9g 金銀花9g 連翹9g 藿香6g

蒼術6g 厚朴6g 陳皮6g 茯苓9g

桔梗6g 蘆根15g

水煎服,1日1剤,朝夕2回服用

②青年、児童:

藿香3g 萊菔子6g 陳皮3g 茯苓6g

桔梗3g 金銀花6g 連翹6g 蘆根9g

玄参6g

水煎服,1日1剤,朝夕2回服用

4.香り袋:

艾葉12g、丁香6g、白芷9g、薄荷6g

石菖蒲9g、郁金9g,薬料を粉末にし、携帯するか部屋に掛ける。

5.家庭環境(姜良鐸教授提供)

①お灸を点火し、空気を消毒する。

②白醋もしくは醋で艾葉を煮て、その蒸気で部屋を消毒する。

 

以上、新型コロナウイルスの予防と治療法、臨床試験でした。天津中医薬大学張学長率いる中国中医学は、中西結合医学を推進し、エビデンスに基づいた中医学を世界へ普及させ、より多くの方のためになることを目標としております。私は、そんな張学長の話を聞くたびに中医学の希望が広がり、治療効果を確信することができます。今、日本は非常に大変な時期となっておりますが、日本の皆様にも中医学を用いて、予防、治療し、新型コロナウイルスを乗り越えていただければと思います。