インフルエンザの検査は必須か? 不要か?【イグノーベル賞医師が解説】

インフルエンザの検査は必須か? 不要か?【イグノーベル賞医師が解説】

インフルエンザの感染の有無を調べるキットは普及しました。内科であれば、通常どこのクリニックや病院にも常備してあると思います。

鼻腔や咽頭を拭った綿棒を特殊な容器に突っ込み、そしてその一部を判定キットに垂らすとあっと言う間に診断ができます。判定時間は5分となっていますが、通常は2分ほどで陽性かどうかわかります。5分待っても陽性所見がでなければ、陰性、つまり感染していないとこの器械は判断します。

この判断とは、器械が陰性(インフルエンザに感染していない)と言っても、実は陽性(インフルエンザに感染している)のことがあるからです。インフルエンザに感染していても、発症後24時間以内では10から20%が陰性となります。しかし発症後24時間を過ぎるとほぼほぼ100%の陽性率になります。

さて、インフルエンザの治療薬はどれも発症後48時間以内の使用を強く推奨されています。経験豊富な臨床医は、経過からインフルエンザを強く疑えば、インフルエンザのキットで陰性と判定されていても、実はインフルエンザの治療薬を投与するのです。

インフルエンザのキットで陽性と出ても次の場合などは投与されません。

1 . 症状が軽く、典型的なインフルエンザに該当しないとき
2 . 漢方薬の麻黄湯で乗り切れると思われるとき
3.  または患者さんが漢方薬だけの治療を強く望むとき

また、インフルエンザの検査で陽性になると、多くの医師は5日間の登校停止や出勤停止を勧めます。それが今の風潮だからです。学校保健安全法施行規則が改正され、インフルエンザの出席停止の期間の基準が、「解熱後2日を経過するまで」から「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」に変更されました。発症した日から数えると、6日間の出席停止が必要ということになります。一般社会人に対する強制的な規則はありませんが、概ね学校保健安全法施行規則に従っています。

さて、インフルエンザキットが普及し、臨床症状からインフルエンザと疑わなくても、インフルエンザ検査が陽性のこともあります。1つの理由はワクチンの効果です。

厚生労働省がHPでもしっかりと謳っています。
現行のインフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありません。しかし、インフルエンザの発病を予防することや、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされています。

またこの厚生労働省のHPをよく見ると、「予防接種法に基づく」ときは、「インフルエンザ予防接種」という文言が存在しますが、それ以外の項目では、実は「インフルエンザワクチン」と記載されています。僕の勝手な推測ですが、厚生労働省はインフルエンザワクチンの予防接種としての意味に疑念を抱いているようにも思えます。

さて、インフルエンザワクチンの予防効果には疑問を持つ医師が少なからず存在するでしょうが、インフルエンザワクチンの症状軽減効果を疑う医師は少ないでしょう。すると、すべてのインフルエンザに感染しても全員が6日も休む必要があるかという疑問も生じます。

僕の知り合いの小児科医は、インフルエンザキットの検査をしていないそうです。インフルエンザを疑えば、インフルエンザの検査なしで抗インフルエンザ薬を使用する。そして学校保健安全法施行規則に基づいた登校停止を勧告する。しかし、インフルエンザを臨床的に疑わなければ、インフルエンザキットの検査は当然に不要で、かつ抗インフルエンザ薬の使用もせず、漢方薬の麻黄湯を投与するそうです。そして、その後、症状が悪化すれば、明らかにインフルエンザ症状を呈すれば当然に抗インフルエンザ薬を使用します。

こんな対処であれば、ワクチンが奏功し、典型的なインフルエンザ症状がなく、普通の風邪のように経過するインフルエンザの児童が、6日も学校を休むことを避けることができます。しかし、こんな対応には、インフルエンザの流行を助長するという反論もあるでしょう。