モダン・カンポウ 処方が効かない時の鉄則

モダン・カンポウ 処方が効かない時の鉄則

虚実を間違えていないか 思い込みは禁物。試してみればいい

虚証と実証は漢方でもっとも頻出する漢方用語です。つまり重要だと言うことですね。実証虚証の概念や定義は、アナログの漢方の世界ではいろいろです。このブログのシリーズでは、虚実は消化機能で、それは筋肉量に比例すると、あまりにも簡単に定義しています。さて、漢方薬が効かないときはこの虚実を間違えていないかと昔から言われています。虚証と思い込んで、虚証の薬だけを飲ませていたということはありませんか?ということです。

香蘇散や半夏厚朴湯を試そう 気の巡りが良さそうに見えても

香蘇散や半夏厚朴湯は気の巡りをよくするカンポウです。気うつに有効といってもいいですが、難しく考えずになんとなく気持ちの問題が関わっているなと感じるときに処方してみると結構著効します。また、まったく気持ちの問題とは無関係と思われるようなときでも、処方に困れば香蘇散や半夏厚朴湯が効くことがあります。そんな知恵があるのですね。

真武湯を試そう。陰証の葛根湯といわれるぐらい幅広く効く

真武湯は附子、茯苓、蒼朮、芍薬、生姜の5種類の生薬からなるカンポウです。附子は温める生薬で、お年寄りや冷え症の方にとってのありがたい生薬です。真武湯は陰証の葛根湯と呼ばれるほど使用頻度が高く、かつ広範囲に有効です。ですから、お年寄りや冷え症の人で処方に困れば、ともかく真武湯を処方して経過をみるという選択肢がなりたつのです。

「怪病は水の変」わからない訴えは水毒を疑おう

処方が思いつかない、処方が当たらないときに、昔の人は「怪病は水の変」と言いました。怪しい病気は気血水理論のなかの水の異常を考えなさいという教えです。水の異常は水毒だけです。水毒を是正するカンポウの代表は五苓散ですので、まず困ったら五苓散を処方してみてはという知恵ですね。経過が長いときは小柴胡湯と五苓散を一緒にした柴苓湯でもいいですね。

どう見ても実証だかが、虚証かもしれない。脈を真剣に診てみよう

どう考えても実証のようながっちりタイプの人で、いろいろな訴えがあって、通常のカンポウが無効なときに、虚証用のカンポウ、例えば、補中益気湯や十全大補湯、六君子湯などが有効なことがあります。こんな時は脈を注意して見ましょう。実証の脈は太く良く触れます。一方虚証の脈は弱々しくて、しっかりは触れません。漢方的な難しい脈の診断ではなく、脈がしっかりしていれば実証、弱々しければ虚証という程度の診察も結構役に立ちます。

駆瘀血剤でひとゆすり。体質が変わるのか、その後の漢方がより有効に

いろいろとカンポウを試しても効かないときがあります。そんなときのひとつの方法は駆瘀血剤をしばらく投薬することです。そんなことをして最初の処方に戻るとそのときは無効であった処方が有効となることがあります。古血の溜まり(瘀血)の典型的所見である臍の脇の圧痛がなくても良いのです。ともかく、体を動かすために瘀血を治す薬である駆瘀血剤を投与します。実証用の駆瘀血剤は桃核承気湯、大黄牡丹皮湯、桂枝茯苓丸、通導散などです。

気分を変えてみる。「移精変気」当たり前だが、病は気から

気持ちの持ちようで病気や訴えが改善できるというもので、当たり前と言えば当たり前。多くの方も経験があるのではと思います。西洋薬や漢方薬だけに頼るのではなく、西洋薬や漢方薬はひとつの手段と考えて、気の持ちようも大切だということです。患者さんを励ますことも、同情することも、ときには叱ることも大切な治療のひとつと言うことです。外来診療で是非、みなさんなりの立場で使ってみて下さい。

早見えのするときは要注意

定石やフローチャートにあまりにもぴったりと合うときは要注意です。江戸末期から明治にかけてのカンポウの巨匠である浅田宋伯の栗園医訓五十七則に「虚心にて病者を診すべし、何病を療治するにも、兎角早見えの為る時、拍子に載せられて誤るものなり」とあります。あまりにも簡単に結論が出るときには、気を付けろということでしょう。確かに、もう少し詳しく病状を尋ねると、違う定石に載ることがあるのです。慌てずに定石に従ってと思っています。