モダン・カンポウ 副作用の鉄則

モダン・カンポウ 副作用の鉄則

「何かあれば中止ですよ」

カンポウは一番安全な部類のくすりと説明しています。しかしながら、くすりであるとの自覚が医師と患者双方に必要です。お互いが全く安全と思っているときに重篤な副作用が生じます。カンポウも薬剤なのです。また、単一成分ではないので、どんな副作用でもごく希に起こりうると理解しておくことが何より大切です。患者さんには「カンポウも薬ですから、何か起これば中止するか、来院するか、電話するか、必ず相談して下さいね」と言い添えれば問題は生じません。

漢方薬でも死亡例はある

カンポウも医薬品です。まったく安全と思って過信していて、実は死亡例も報告されていることを知ると驚くでしょう。しかし、一包を1週間飲み続けて死亡することはありません。まったく安全と思って、何かが起こっても飲み続けるから不幸な結果になるのです。「何か起これば中止ですよ」という一言を心に刻み、患者さんにいつも投げかけていれば大丈夫です。何か起こったときにカンポウを中止し、次に新しいカンポウを処方する場合は香蘇散が使いやすいです。

原因不明の症状で入院したらともかく漢方は中止

患者さんが緊急に入院するときがあります。入院とならなくても、原因不明の不調を外来で訴えることもあります。そんなときにカンポウを内服していれば、ともかく中止です。カンポウは重篤な合併症は希な薬剤ですが、所詮薬剤です。そしてワンピークではありません。いろいろなものが含まれています。なんでも起こりうると思っておくことが医師としては大切です。他の原因が不明の時はともかくカンポウを疑いましょう。

麻黄剤では血圧が上がることも。狭心症にも注意

生薬の麻黄にはエフェドリンが含まれています。麻酔中などに血圧を上げるための便利な昇圧剤です。当然、エフェドリンで血圧が上がることは医師としては常識として知っています。ところが、麻黄含有カンポウの長期投与で血圧が上がると言うことを、ふと忘れてしまうことがあります。血圧を毎回測定できれば最良でしょうが、血圧に関しての質問をいつも心がけることでも対処できます。

麻黄では尿閉も起こりうる

麻黄にはエフェドリンが含まれています。医師の常識としてエフェドリンでは尿閉が起こりますね。前立腺肥大症を持病として持っているときは特に要注意ですね。尿閉が生じても、導尿して、その後気を付ければ命の危険はありませんが、患者さんは処方した医師をちょっと恨みますね。カンポウの内服で導尿されるなんて想像してませんからね。麻黄含有カンポウを頻回に使用するときは要注意です。

麻黄を含むカンポウを覚えよう

麻黄エフェドリンを含みますので、高血圧や狭心症、前立腺肥大の方には要注意ですね。ではどのカンポウに麻黄は含まれているのでしょうか。カンポウの名前に「麻」とあれば麻黄が含まれていることが、連想できますね。麻黄湯、麻杏甘石湯、麻杏薏甘湯、麻黄附子細辛湯などです。これ以外に、名前に「麻」が存在しない、でも麻黄を含むカンポウがあるのです。それを覚えれば安心ですね。

採血検査は2~3ヶ月に1回は行おう。肝機能とカリウムのチェックを

西洋医学の補完医療としてカンポウを使用するという立場ですから、採血検査は通常医療機関や医師によって行われている前提です。ところが、まったく検査されていないこともあるのです。「数ヶ月に1回は血液検査をしていますね」と念を押して聞きましょう。カンポウの副作用には、カリウムと肝機能障害のチェックで十分ですが、他の生活習慣病などの採血検査も同時に済ませられるといいですね。

昔は漢方の長期投与は念頭にない。でも、未病には漢方薬で

自分でもカンポウを長期にわたって内服しています。家族もカンポウを永く内服しています。患者さんにも長期内服を勧めることが少なからずあります。それで症状や訴えが改善するからです。ところが昔は漢方薬の長期投与は全く念頭にありませんでした。症状が改善すれば中止です。カンポウはどれだけ長く飲んでも安全なんでしょうか。その答えは不明です。僕はカンポウは食物の延長、養生のひとつと思っているので飲み続けていますが。

低カリウム血症の患者さんへの甘草は注意して処方を

利尿剤を常時飲んでいる患者さんでは血清カリウム値が正常範囲下限ギリギリということが多々あります。そんな患者さんに甘草含有漢方薬の内服を続けると足がむくみ、血圧が上がり、血清カリウム値が更に下がります。つまり偽アルドステロン症になる危険が高いと言われています。採血を毎月行うなど低カリウム血症に気を配りながら処方をしましょう。

甘草は多くの漢方薬に含まれている。甘草を含まない漢方薬を覚えよう

血清カリウム値が正常範囲下限ギリギリの患者さんには甘草を含むカンポウを長期間処方したくないですね。ひとつの解決策は毎週診察に来てもらうことです。毎週注意深く観察していれば偽アルドステロン症は回避できます。もう一つの解決策は、甘草を含まないカンポウで頑張ることです。約3/4の漢方薬に甘草は含まれていますので、甘草を含まないカンポウで大切なものを覚えましょう。

漢方薬は食べ物の延長。食物アレルギー反応は起こりうる

カンポウは食べ物の延長です。蟹が苦手、蕎麦が苦手という人がいるように、食物アレルギーが生じることがあります。おきやすい生薬は人参、地黄、桂皮です。発疹が出たり、痒くなったりすれば止めればいいことです。そんなときは香蘇散を処方しています。香蘇散は昔から魚アレルギーにも有効で、また香蘇散でも同じ症状が起これば、人参、地黄、桂皮ではないとわかります。エキス剤の賦形剤としての乳糖に微量に含まれるタンパク質の可能性大です。

地黄、石膏、当帰、麻黄などは胃に障ることがある

がっちりタイプ(実証)のひとは消化機能が強い弱々しいタイプ(虚証)の人は消化機能が弱い、これが簡単に虚実を理解する方法で、このシリーズでの考え方です。虚証の人は麻黄、地黄、石膏、当帰などを含むカンポウでムカムカすることがあるのです。がっちりタイプのひとはどんな生薬を含むカンポウも飲めるが、弱々しいタイプのひとでは飲めるカンポウは限られるということです。

保険適応エキス剤に流産、早産の報告はないが、妊婦には要注意

保険適応カンポウエキス剤で流産・早産した報告はありません。妊娠を知らずにカンポウエキス剤を一週間、一ヶ月投与しても問題ありません。しかし、添付文書には安全とは記載されていません。それはある意味当然で、カンポウはワンピークではないので、すべての含有成分に対しての検査・検討ができないからです。僕は患者さんには「西洋剤よりも安心だと思う。家族であればカンポウを使用する」と説明しています。

心下振水音は消化機能が弱い証拠。麻黄剤は禁止というヒント

麻黄剤は弱々しい人が内服すると、ムカムカ、ドキドキすることがあります。不快な影響は避けたいですね。がっちりタイプの人は、消化機能も良く、通常麻黄が飲めます。腹診から麻黄が大丈夫かを知る手立てのひとつが「心下振水音」です。患者さんを仰臥位にして心窩部を指で叩くとチャプチャプ音がする時があります。消化機能が良くないためと考えられ、麻黄を用いることが出来ない腹部診察所見のひとつです。