煎じ薬はどうやって作っているのか【漢方医が解説】

煎じ薬はどうやって作っているのか【漢方医が解説】

今の漢方はエキス剤が基本です。エキス剤とは高級インスタントコーヒーのイメージです。お湯に溶かすと、ほぼほぼ高級なコーヒーになります。

参考:煎じ薬とエキス剤の違いとは?保険適用は可能か【漢方医が解説】

さて、一方で昔ながらの煎じ薬は患者さんにどのようなものが渡されるのでしょう。そしてどのようにそれを調剤するのでしょう。

まず、1日分が1袋に入って渡されます。つまり毎日、それを煎じるのです。約600mlの水に入れて、そして煮込んで約300mlにします。おおよそ30分かかります。普通の鍋で問題ありません。しかし、ずっと見ていないと、めちゃくちゃ濃くなったりします。面倒なひとは、自動煎じ器があるので、それをご用意下さい。

僕の漢方の師匠である松田邦夫先生のクリニックでの調剤風景です。まず、百味箪笥(ヒャクミダンス)という入れ物にすでに刻んである生薬が入っています。生薬問屋から購入された生薬は刻んである状態です。ビニールパックに入った生薬は冷蔵庫に保管されていて、百味箪笥に適宜補充されるのです。

百味箪笥は5x5の引き出し、つまり25個に引き出しが付いているものが、上下に2つ、左右に4つ並んでいます。10x10の引き出しが並んで2つ置いてある形になります。百味箪笥が二個ある風景が、松田クリニックの百味箪笥の配置です。

この百味箪笥への生薬の入れ方は、クリニックによって違います。好みがあるのです。そのクリニックでよく処方される薬が調合しやすいように配置してあります。松田邦夫先生のクリニックの百味箪笥生薬配置図は以下ですよ。

さて、診察が終了してカルテが薬局に戻ると、その指示に従って、処方が開始されます。1日分を分包したいので、1日分を舟という入れ物(ワイン色の入れ物)に用意します。指示された日数分の舟が百味箪笥の前に並びます。そこに、生薬を放り込んでいきます。こんな芸当ができるのは、使用する匙のサイズが指定されているからです。傷寒論でも、現在の処方でも、基本は、生薬は重さで記載されています。そしていろいろなサイズの匙が用意されているのです。その匙で百味箪笥の引き出しからひとすくいで取れる重さが、各生薬で解っているのです。ですから、「葛根湯の麻黄は一日量3グラムだよな。だから3グラムをはかりで測定して・・・、そしてまた測定して・・・」といった手間な作業はしないのです。決められた匙で百味箪笥の引き出しをすくって、舟に入れていけばいいのです。そして、すべての生薬を入れ終わったら袋に1日分とて入れて終了です。すごく賢いですよね。僕は最初にこの方法を拝見したときに、本当に感動しました。

そんな風景を動画にしてあります。是非、お楽しみ下さい。これは十全大補湯を作っている工程です。