胆石で手術は必要か?【西洋医×漢方医のコラム】

胆石で手術は必要か?【西洋医×漢方医のコラム】

「胆石なんですけど、手術必要ですか?」 こんな質問を結構おうけします。

胆石とは胆嚢(たんのう)に石ができることです。胆嚢は胆汁を溜める臓器で胆嚢がなくても命に別状はありませんし、日常生活にもまったく問題ありません。ちなみに、ラットやウマは胆嚢を持ちません。もしも生存に必須の臓器であれば、哺乳類は皆持っているはずです。

僕が研修医の頃は胆嚢を摘出する手術がまず外科医としての入門手術でした。胆石は「三つのF」として有名でした。Female, Forty, Fatです。40代の女性で肥満が特徴という意味です。僕が研修医の頃は超音波検査が普及し胆石はどんどんと見つかりました。そしてどんどん手術をしていました。その理由は胆嚢炎になる可能性があること、そしてポリープと紛らわしいときは将来癌化の可能性を除くために手術が選択されたのです。

しかし、最近は胆石があるからという理由だけで即手術になることは稀です。胆石を持ったままでも無症状で経過する人が相当数いること、そして癌の可能性は超音波検査の画像精度が向上し、またCTやMRIなどの検査も解像度が上がったので、無症状で癌の疑いもないときは慌てて手術をする必要がないという考え方が一般化したからです。

しかし、胆嚢炎は別です。胆嚢炎とは胆嚢の炎症です。通常は細菌感染です。細菌感染があると、その細菌が血液中に移行し敗血症という状態になります。これは命に関わる病態なのです。抗生物質が進歩し、敗血症は治療可能ですが、敗血症の原因が胆嚢炎ならば、その感染の供給源を取り除かないと敗血症が治らないか、または頻回に繰り返すことになります。

胆嚢は胆汁を一時的に溜める臓器です。胆汁は赤血球が120日の寿命を終えて壊れたときに出るヘモグロビンを代謝して、ビリルビンに変換して体外に排泄するためのものです。ですから胆汁は無菌なのです。そんな無菌のはずの胆嚢に細菌が感染することがあります。通常は胆汁の出口である十二指腸から胆汁の流れに逆行して腸内細菌が胆嚢に到るからです。万が一細菌が胆嚢に辿り着いても、通常は胆汁として排泄されれば問題ありません。ところが胆石があると、胆汁を体外に排出することが出来ずに、胆嚢内に感染胆汁が充満し、命に関わる敗血症に進行するのです。

つまり、胆嚢炎を併発していれば手術はMUST(必須)です。また胆石発作を頻回に起こすときに手術が勧められます。胆石発作は胆石が胆嚢の出口を塞いだ時に起こります。ですから無菌でも発作を繰り返すときは手術適応になります。

さて、胆嚢炎に有効な漢方薬はありません。胆石を溶かす漢方薬もありません。黄疸に有効な漢方薬としては茵陳蒿湯(いんちんこうとう)や茵陳五苓散(いんちんごれいさん)が有名ですが、これは肝機能障害による黄疸の場合で、胆石が総胆管に嵌頓して生じる黄疸にはこれら2剤も無効です。

茵蔯蒿湯

茵蔯五苓散