モダン・カンポウ「カンポウの進化と未来」【おまけ】

モダン・カンポウ「カンポウの進化と未来」【おまけ】

モダン・カンポウへのパラダイムシフト 立ち位置の変化で楽になる

現代西洋医学が発達する前は、すべての病気を漢方で治しに行こうという気概漢方医は治療に当たりました。急性疾患にも当然に漢方薬で治療に行ったのですね。急性疾患で処方を誤ると患者は死亡することがあります。ですから戒めるように経験を積み、古典を読め、漢方診療をしろ、と念を押したのです。最初の漢方処方で誤ることなく、患者を死に至らしめることがないようにするために。一方、慢性疾患では効く漢方薬をゆっくり探せますね。

漢方のRCT研究は必要だが、正しく漢方の魅力を説明する必要がある

カンポウ各人の体質に合わせて処方するオーダーメード医療です。一方で、体質をあまり考慮せずにある症状に対してオートマチックに処方することも可能なものもあります。そんな薬剤ではRCT(無作為比較試験)が行いやすいと思います。カンポウは西洋医学的な臨床試験を経ないで薬剤として認可されていますので、将来的にいくつかのカンポウでRCTを求められる可能性はあります。それに耐え得るカンポウを知っておく必要があります。

保険適応漢方エキス剤の使用が広がれば医療費の削減につながる

カンポウは一剤、または相性のよい二剤の組み合わせで、体全体を治せる魅力があります。ですからカンポウではたくさんの種類が一度に処方されることはありません。そして西洋薬剤と比較して平均薬価は1/5です。重篤な副作用は希です。そうであれば、カンポウを使用したり、併用すれば、その結果、西洋薬剤の使用頻度が減り、医療費の削減効果が生じると思われます。それを証明したいと思っています。近い将来に。

煎じ薬とエキス剤 どちらがいいの?

カンポウの進化のひとつはエキス剤です。忙しい今日この頃、全ての人が生薬を煎じて飲むのでは、時間も必要ですし、携行にも不便ですので、カンポウは普及しなかったでしょう。カンポウがエキス顆粒として利用できることは現代ならではです。ではエキスと煎じはどちらが良いのでしょうか。煎じは生薬を見る目がある人が利用してこそ意味があると思っています。生薬には優良な部位もあれば、そこそこの部位もあります。目利きができないと話になりません。

漢方も新しい領域に使用されている「随証治療」も新しい

カンポウは昔から変化していないと思っていました。ところがカンポウは着々と進歩しています。新しい知恵が付加されているのです。今ではカンポウの常識となっている変形性膝関節症に防已黄耆湯を使用することも大塚敬節先生でさえご存じありませんでした。そして試行錯誤の末に身内に使用し著効したのです。猪苓湯合四物湯を顕微鏡的血尿に使用するのも大塚先生が始めたようです。バセドー病に炙甘草湯も新しい知恵です。

古きものが尊からず

僕の人生の師、国武自然先生が贈ってくれた言葉です。「古きものが良きにあらず、新しきものが良きにあらず、良きものが良きなり」カンポウを勉強していて本当にそう思います。東洋医学と西洋医学の優劣を語るのではなく、それぞれの良いところをどんどんと利用して、患者さんがより幸せになれば良いのですね。松田邦夫先生にも「古きものが尊からず」とも教えていただいています。

マウスの移植実験から見えたもの

僕のもうひとつのライフワークは移植免疫学のサイエンスです。「本当に明日から使える漢方薬・・7時間速習コース」柴苓湯マウスの心臓移植片の拒絶抑制に著効を示すが、五苓散も小柴胡湯も無効で、その上、一味抜き柴苓湯も無効であることを示しました (J Heart and Lung Transplant 2010)。つまり柴苓湯では、①すべての構成生薬が必要なパターン であったのです。その後の実験で、他のパターンも判明しました。