猪苓(ちょれい)・漢方医による生薬解説6
- 2019.01.05
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猪苓はブナ、ナラ、モミジなどの根に寄生するサルノコシカケ科のチョレイマイタケの菌核です。「マイタケ」の仲間です。語源はイノシシの糞に似ているという説や、イノシシが好きな香草であったなどと言われています。猪苓は、『神農本草経』では中品として収載されています。
キノコは結構研究されていて、クレスチンという医薬品は、抗がん剤として知られていました。クレスチンはカワラタケの菌糸より得られる蛋白と結合している多糖類です。深刻な副作用がなく、1977年の販売から単独で多数使用されましたが、1989年12月に効能・効果が改められ単独使用は認められなくなりました。そして効果が判然としないので、2018年3月末に薬価基準より削除されました。
またアガリクスはハラタケ属のキノコで、食品として販売されています。かつては、非常に高価でしたが、栽培方法が確立された1990年頃より、抗腫瘍作用を謳ってアガリクスの乾燥キノコや抽出エキス剤が販売され、500億円近くを売りあげたこともあります。現在は、明らかなエビデンスがないことから、そんなアガリクスブームは下火になっています。
最近の話題は中国では抗がん新薬として認可されているフアイア(Huaier)です。なんと大規模臨床試験で勝ちました。そして超一流英文雑誌『GUT』に掲載されました。肝臓癌の患者さんにフアイアが有効だったのです。フアイアは中国の国樹である槐(えんじゅ)の老木に生えるキノコです。現在は生息しているキノコはほぼ皆無にて、菌糸を培養してエキスを抽出しています。
そんなキノコのひとつで1800年前の傷寒論にも登場するのが猪苓です。
猪苓が処方名と関係する漢方エキス剤は五苓散、猪苓湯、猪苓湯合四物湯、四苓湯などがあります。
第17改正日本薬局方には以下のように記載されています。
チョレイ Polyporus Sclerotium POLYPORUS 猪岺
本品はチョレイマイタケPolyporus umbellatus Fries (Polyporaceae)の菌核である.

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